ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

友井羊「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 巡る季節のミネストローネ」(宝島社文庫)

シリーズ第8弾。もう8巻なんですね~。そして、8冊目にして、ついに主人公

の理恵さんが、スープ屋しずくの店主・麻野さんに告白しました。長かった

ですねぇ・・・。しかし、冒頭・プロローグの時点で告白した理恵さんでしたが、

『少し時間がほしい』と言われてしまい、お預け状態でその後、通常の物語が

始まります。麻野さんも罪なことするなぁと思いましたが、やはり亡き妻の静句

さんのことも、露ちゃんのこともあるしなぁ、仕方ないかもね、と納得していた

訳なのでしたが・・・。でも、ここまで作品読んで来て、麻野さんは確実に理恵

さんに惹かれていると思ってたので、ちょっと腑に落ちない気持ちはありました

・・・が。

やー、こういうことでしたかー。ぜんっぜん気づいてなかったです。この仕掛けに。

まぁ、確かに、オリーブの苗木の成長に関しては、ちょっと変だなぁとは思って

たんですけどね。

一話ごとに季節が変わり、それによって出て来るミネストローネの種類も変わって

行くという演出に、すっかり騙されてました。しかし、ミネストローネだけでも、

こんなにいろんな種類が作れるとは驚きです。普通に、トマト味のミネストローネ

しか食べたことないし、作ったこともなかったので。山菜を使った和風のもの、

夏にぴったりな冷製のもの、秋野菜を使った黄色いもの、冬野菜を使った緑色の

もの・・・と、四季に合わせて、どの季節でもミネストローネが楽しめるように

考えられているところが、麻野さんの素晴らしいところだな、と思いました。

まぁ、トマト使わなくても、野菜を入れて煮込めばミネストローネって言えるって

ことなのかな?黄色の時は黄色いトマトを使ったと言ってましたけれどね。

どれも美味しそうでした。

しかし、理恵さんのように、朝ごはんであれだけ頻繁に外食するのは、私には到底

無理だなぁ。値段設定どうなってるかわからないけど、多分千円前後はしますよね。

パン食べ放題とかもついてる訳だし。その分、ランチで節約してるとかなのかな。

まぁ、会社員でそれなりに収入あるから出来るんでしょうけどね。

ラストの一話は、かなり不穏なお話。静句さんの過去の出来事が描かれます。

静句さんが、懇意にしていた女子中学生に乱暴を働いたのはなぜなのか。その

真相には驚かされました。こんなモノを当時の女子中学生が持っていたとは・・・

恐ろしすぎる。昔の昆虫標本キットって、本当にこんなものが使われていたので

しょうか・・・そうだとすると、怖すぎる。昆虫標本って子供の頃に流行った覚え

があるけどね。まぁ、その頃はもう違うものになってたんでしょうけどもね。

理恵さんの、静句さんに対する強い想いに胸を打たれました。本来なら永遠に

適わないライバルの筈なんでしょうけどね。それだけ、静句さんという女性が

素晴らしい人だったということでもあるし、そのことを素直に認められる理恵さんも

とても素敵な女性だな、と思えました。

さて、本書のラストを受けて、そろそろ物語もクライマックスに近いのかな。

本書が最終巻とも書かれていないから、さすがにこれで終わりではないと思う

けど・・・。この先の二人のことも読んでみたいから、ぜひ続きをお願いしたい

ところです。