ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

今野敏「任侠シネマ」(中央公論新社)

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大好きな任侠シリーズ、第5弾。今回は、タイトル通り、潰れそうな映画館を

立て直すお話。安定の面白さ&読みやすさであっという間に読み終えてしまった。

街の小さな映画館はどこでも、このお話みたいな状況になっているのではないかなぁ。

特に、このコロナ禍で潰れる映画館も多そう。私が十代二十代の頃は、あちこちに

ミニシアターもたくさんあって、ちょこちょこ観に行ってました。映画も全盛期

でしたしね。今はシネコンができて、小さな映画館はどんどん立ち行かなくなって

なくなってしまった。シネコンシネコンで大きくていろんな映画が選択出来るし

便利な施設ではあるんですけどね。確かに、小さな映画館の座椅子って長く

座ってるとお尻が痛くなったりするしね。でも、やっぱりミニシアターはミニ

シアターの良さがあるんですよね。かかる映画もマニアックだったりね。だから、

映画館を立て直そうという阿岐本組の取り組みには共感できました。今回は、

立て直しの方法が、ちょっと今までと違っていました。映画館に勤める人々は

ほとんど出て来ない。SNSを使ったり、経営者側の人々の意識を変えようと

図ったり。阿岐本組長って、思いつきと好奇心で今までの再建話を成功させて

来たけど、やっぱり基本的に頭がいいんだろうな、と思わされました。

今回もやっぱり日村さんの心配性は健在。どんな時でも阿岐本組長を立てて、

任侠道を貫くところは一本筋が通っていて、大好きですが、そのうち気を

遣いすぎてハゲるんじゃ・・・とちょっと心配になります(苦笑)。しかし、

日村さんが、映画館で映画を観たことがなかったのにはビックリ。一体どんな環境で

育って来たんだか・・・^^;

日村さんを始めとする阿岐本組の組員たちも、早苗も、みんなが健さんの映画に

ハマってしまうところが面白かった。本物のヤクザもやっぱり健さんの渋さには

惚れちゃうんだなぁ(笑)。

相変わらず最後はお決まりの大団円でしたが、この予定調和がなんとも言えず

気持ちいいのよね。このシリーズはこうでなくっちゃ。

甘糟刑事の上司の横ヤリも上手く躱せて良かったです。ヤクザだって、出前くらい

好きに取りたいよね。長く付き合って来たお店の大将は、警察の脅しにも屈しないで、

当たり前のこととして出前を届けてくれる粋な人でほっこりしました。こういう

街の人々との繋がりがあってこそ、今の阿岐本組があるんですよね。

今回も痛快に読み終えられました。次は何の立て直しかなー(日村さんガンバレ)。