ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

似鳥鶏「難事件カフェ2 焙煎推理」(光文社文庫)

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以前に読んだ『パティシエの秘密推理』の続編。あれから、もう7年が経っている

らしい。そして、7年経って続編が出ることになり、タイトルを変更し、1巻も

新装丁になって発売された模様。なんか、雰囲気全然違ってる^^;前は

もっと甘い感じの表紙じゃなかったっけ??タイトルも表紙も、渋みのある

雰囲気に変更されたってことね。焙煎推理って何だよ!ってツッコミたくなる

ところではあるけれど(苦笑)。

イケメン兄ちゃん二人が喫茶店やってることくらいは覚えていたけれど、細かい

設定は忘れちゃってました。ただ、弟が元刑事で、その元刑事の弟を目当てに

警察官の女の子がやって来ることは覚えてました。そして、その女の子、直ちゃん

の語尾の口調がいつも引っかかっていたところも・・・。女の子なのに、語尾に

いちいち『~っす』ってつくんですよ。これが何かすごく嫌で。直ちゃんのキャラ

自体は嫌いじゃないのに、この言葉遣いでかなり好感度が下がっていた。そして、

今回もその設定は健在(当たり前か)。若い男が使ってもイラっとするのに、

若い女性刑事が使う言葉じゃないだろう、と直ちゃんが言葉を発する度にツッコむ

自分がいました・・・。基本良い子だし、意外と聡明なところがあるのもわかるん

ですけどねぇ。この設定、どうにかならなかったのかなぁ。

三つのお話が収録されていますが、一話目の、犯人が隠れたトリック関しては、

どう考えても無理があるだろう、と思ってしまいました。実際どういう手順で

それが成功したのか、映像で観てみたいですよ。○を入れてからその下に隠れる

ってどうやるの?隠れてから○を入れるのは無理だろうし・・・。あと、二重△に

するって言うけど、どういう材質のものを使ったら下に○が漏れないように出来る訳??もう、トリック読んでも?の連続。横穴掘るのも☓☓☓使うのも、どっち

にしろ無理だとしか思えなかったんですけど・・・(伏せ字ばかりですみません)。

犯行動機には同情しましたけど。被害者を含め、友情で繋がっていたであろう

四人に関しては、嫌悪と怒りの気持ちしか覚えなかったです。何が友情だよ。

こんな下衆な四人の間で結ばれた友情には、1片の感動も覚えない。季さんの

静かな怒りに共感を覚えるばかりでした。

2話目の方がミステリとしての出来は良いと思う。駅のロータリーで、刃物が

刺さったまま倒れた女性が発見された。女性は一命を取りとめたものの、当時の

記憶を失っていた。当時、女性にはストーカーらしき男が付きまとっていたが、

その男にはその時鉄壁のアリバイがあった・・・。

被害者の女性の当時取った行動と心理には、なるほど、すごく頷けるなと思え

ました。今の時代ならではの考え方なのかな。母親からの呪縛もあったとは思う

けど。母親の教え自体は悪いことじゃない。人に迷惑をかけるな、というのは

当たり前のことだし、子どもに教える大事なことの一つでもある。でも、それが

度を過ぎるのはどうなんだろう。自分を殺してまで、人に気を遣うのは、本末転倒

でしかないのでは。時には人に甘えることも必要なんだ、と痛感させられました。

でも、この事件を機に、被害者の意識が少し変わったことは良かったと思う。

最終話は、新規オープン予定のカフェで、コーヒーの試飲をした惣司兄弟と直

ちゃんだったが、そのコーヒーには異物が混入されていた。異物を入れたのは、

店主夫婦かその息子か、はたまた智なのか――というあらすじ。影がありそうな

弟の智の秘密が明らかになります。まさかの理由。警察を辞めたのも、これが

原因だったのか・・・。これはもう、今後ものんびり喫茶店でスイーツ作りに

励んでもらうしかないですね。警察官としての余りある才能は勿体ないとは思い

ますけれど。たまに、直ちゃんが持って来る難事件を手助けする安楽椅子探偵

の役割で十分でしょう。季さんも心配だろうしね。

幕間に出て来た独白の仕掛けは、なんとなくこういうことだろうな、という予想は

出来てました。多分、未解決の事件の関係だろうなとも思ったし。はっきりこうだ

という推理までは出来なかったですけどね^^;

個人的には、直ちゃんは季さんの方とお似合いって感じがするんだけど、恋愛

方面には発展しないのかなぁ。

今後は、このタイトルで続刊が出て行くのかな。

智が考案したスイーツは相変わらず美味しそうでした。季さんの本気の焙煎珈琲

と併せて、食べてみたくなりました。