ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

近藤史恵「夜の向こうの蛹たち」(祥伝社)

f:id:belarbre820:20200722200041j:plain

近藤さん最新作。三人の女による心理サスペンス・・・だそうです、ジャンル分け

すると。美人作家二人と、うち一人についている秘書。彼女たちの微妙な三角関係

を描いたビアン小説。

うーん、うーん・・・読みやすいからぐいぐい読めちゃうのだけど、ジャンル的には

あんまり好きなタイプの話じゃなかったなぁ。なんか、ぐちゃぐちゃしてるし。

なんで今さら近藤さんがこんな直球のビアン小説書いて来たのかよくわからないな。

セクシャスマイノリティーが突然書きたくなったのかなぁ。別に、レズビアン

悪いとかじゃないんですよ。それは西澤さんの作品で慣れてるしさ。でも、主人公

も相手の二人の女性も、みんな面倒くさい性格で、全然好感持てなかったから、

そういう人たちの恋愛読んでも、全然ドキドキもしなければワクワクもしなくて。

どっちかというと、すごく冷たい目線で読んでいたような気がする。主人公の

織部妙は、美人作家として有名で、女性しか愛せない性癖を持っている。ある日、

文学賞のパーティで、新人で美貌の女流作家・橋本さなぎと出会う。しかし、

妙が心奪われたのは、橋本と一緒にいた肉感的な女性で、橋本の秘書をしている

初芝祐の方だった。取り立てて美しい顔でもなければ、スタイルもいいとは

言えないが、肌が抜けるように白く、柔らかそうだった。彼女に近づきたい妙は、

まずは橋本の方と仲良くなろうと試みるのだが――。

意中の女性、祐に近づきたいと思いつつ、ヘテロであろう彼女とどうにかなろうとも

思わない妙の、微妙に揺れ動く女性心理は良く描けていると思います。ただ、

いちいち自分に言い訳しながら次の行動に出る妙にイラッとするところも。まぁ、

気持ちはわかりますけど。いくら自分が美人だからといって、告白してすんなり

受け入れてもらえるものではないことは、妙自身が経験上、一番痛感しているで

しょうから。

それだけ、マイノリティーの性癖の人は恋愛するのも大変ってことなんでしょう。

妙と祐の関係は嫌いじゃなかったですけどね。キャラ的に一番嫌だったのは

橋本さなぎですね。他人に依存するしか出来ない人間って好きじゃない。結局

妙のことも依存先としか見てなかった訳で。他に依存先が見つかったらあっさり

切り捨てられるって。わかってはいたけど、何かとても虚しい関係でしかなかった

ことにがっかりしました。ま、妙の方も、祐の代わりでしかなかったのは明らか

だったのだから、お互い様なんでしょうけどね。

彼女はこれからも依存先を見つけて寄生して行くんだろうなぁと思いました。

読み終えて、特に残るものもなく、あっさり終わった感じ。せめてもうちょっと

ミステリー要素でも入ってたらもう少し楽しめたのかも。