ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

伊岡瞬「仮面」(角川書店)

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テレビで活躍する作家で人気評論家の三条公彦。読字障害を持ちながら、アメリ

留学後にその経験を本にし、じわじわと人気が広がり、そのルックスも相まって、

最近は幅広い層に人気を博していた。三条の秘書として雇われた菊井早紀は、謎

めいた三条の過去と裏の顔が気になっていた。その一方で、失踪したパン職人の妻・

宮崎璃名子の白骨死体が埼玉の自然林で発見された。行方不明になっていた新田文菜

の捜査を担当していた刑事の宮下と小野田は、文菜と璃名子に繋がりがあることに

気づく。更に捜査を進めて行くうちに、その裏にもう一人の人物が浮かび上がって

行く――。

伊岡さんの最新長編です。400ページちょいなんですが、結構時間かかりました

ねぇ。最近めっきり読むペースが落ちてしまって。漫画ばっかり読んでるせいも

あるのですけれど^^;サスペンスなので先が気になってぐいぐい読めるタイプの

作品だとは思うのですが、何か展開が回りくどいというか、ちょっと中だるみ感が

あって、思ったようにページが進みませんでした。

出て来る女性がその後の章で次々と死体になって発見されて、なかなかスリルが

ある展開ではあるのですけれどね。犯人は誰もが推理出来ると思うので、肝と

なるのはその動機や方法の方でしょうか。あとは、出て来る誰もが仮面を被って

いて、二面性を持っているのだけれど、その中でも誰が一番仮面を被った人物なのか、

という点が読みどころかな。璃名子や文菜の殺人の実行犯の本性には、本当に怖気が

走りました。これが真正のサイコパスってやつなんでしょうね・・・。

でも、被害者の女たちも、殺されて当然とは思わないけれど、相当のクズばっかり。

夫に隠れて不倫したり、妊娠したくて不貞を働いたり。まぁ、相手が一番のクズでは

あるんですけどね。文菜に関しては亡くなった子供のこともあるから、同情すべき

部分もないではないけど・・・それにしても、あんな風に男を買うっていうのはね。

そんな風にして妊娠して嬉しいものなんだろうか。私には全く理解不能。気持ち悪い

としか思えなかった。

クールでイケメンの評論家・三条の本性には本当に辟易したし、がっかりだったな。

小物過ぎて。その性的嗜好も気持ち悪かったし。それに、その経歴もあれだけ嘘

並べ立てたら、さすがに調べればすぐバレちゃうと思うけどな。週刊誌の記者が

もっと早くにその経歴詐称に目をつけなかったのが不思議で仕方ないのだけれど。

今回出て来た宮下刑事は、伊岡さんの他の作品にも登場するキャラクターなのですね。

読書メーターの他の方の感想で知りました。前の登場作品は多分読んでいないので、

全然気づかなかったのですが。かなりヘタレな刑事っぷりで、他の作品でもこんな

感じなのかな、とちょっと気になりました。あと、小野田刑事への恋情が唐突過ぎて

ちょっとびっくりしました。相棒に恋することがないとは言わないけど、恋に至る

経緯をもう少し丁寧に書いてほしかったなぁ。そして、もっとびっくりしたのは、

その小野田刑事の宮下刑事に対する想いの部分。こっちは更に唐突で目が点。ええ、

そんな素振り、まったくなかったじゃん!!って思わずツッコミたくなりましたよ。

立場上、必至に抑えていたのかもしれませんが・・・一体どこでそんな感情が芽生えた

のやら。伊岡さんは恋愛要素を無理に入れない方が良いかもしれない・・・。

しかも、あのラスト。なぜに指○!?受け取って置いて、友情!!?いやー、もう

謎でしかなかったな。まったくもって、あのラストは意味不明だった。一体何が

書きたかったんだ・・・。今後、その関係は変わる可能性があるのかないのか。

まぁ、とにかく、登場人物がこぞってクズばっかりでした。人間、誰しも仮面を

被っているものだ、と言うことが言いたかったのかな。こんな裏の面を持ってる

人ばっかりだったら、人間不信になっちゃうなぁ。