ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

今野敏「マル暴ディーヴァ」(実業之日本社)

マル暴甘糟シリーズ第三弾。相変わらずやる気のない甘糟刑事ですが、強面上司の

郡原が更に仕事をしない人なので、必然的に仕方がなく、いろんなことをやる羽目

になってしまいます。マル暴担当なのに、こんなに弱々で大丈夫!?といつも

思うのですが、なんだかんだでやり遂げてしまうところは何気に有能だったりする

のかな、と思わなくもなかったり。

麻薬の売買が行われているらしいというジャズクラブに、ガサ入れの前に甘糟と郡原

が下見で潜入することになった。そこで、二人は素晴らしい歌声のジャズ歌手・星野

アイと出会う。彼女目当てに多くの客が訪れていた。甘糟と郡原もその歌声の虜に

なったが、二人は彼女の正体に気づき、驚愕する。その上、店にはとんでもない

身分の客まで来ていて、現場は更に混乱することに――。

歌姫の正体がまさかの人物で、びっくり。ってか、こんな副業して大丈夫なの?^^;

お金もらってやってるのかよくわかりませんが・・・。まぁ、オーナーの手前、

断りようがなかったのかもしれませんが。彼女の歌を聴きに現役の○○○○まで

お忍びでやって来ちゃうし。もう、なんか何でもありだなぁと呆れつつも、その

はちゃめちゃなところがこのシリーズらしさでもあるのかな、とも思いました。

現実には絶対あり得ないでしょうけどね。大問題になっちゃうよ^^;

甘糟の巻き込まれっぷりも相変わらずで、仕事をしない郡原に何でもかんでも

押し付けられてちょっと可哀想でした。ここまでパワハラされて、心の中では

愚痴満載でも、結局真面目に仕事をしてしまうところが彼の良いところでしょうか。

Z世代の新人だったら、間違いなく上司や会社を訴えるんじゃないでしょうか・・・。

ちょいちょい任侠シリーズの阿岐本組が出て来るところがファンにとっては

嬉しい。日村さんは相変わらず渋くて、甘糟の欲しい情報をピンポイントで示唆

してくれたりして、優しいなと思いました。

ラストは相変わらず上手く行き過ぎな感が否めませんが(あんなに簡単に味方が

寝返るなんてありえないと思うし)、まぁ、そこはあまりツッコんじゃいけない

ところかな、と。マル暴担当に見えないマル暴刑事甘糟が、上司や暴力団関係の

人々に振り回されてドタバタしてるのが一番の読みどころであり、今回もそこは

十分に楽しめましたからね。

歌姫星野アイの歌声は聴いてみたくなりましたね。あそこまで、聴く人々を魅了する

歌声というのを、生で体験してみたい。彼女は今後も歌い続けるつもりなのかな。

そのうち芸能界にスカウトされたりして。もちろん、そんな誘いは一蹴するで

しょうけどね。