ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

今野敏「審議官 隠蔽捜査 9.5」(新潮社)

大好きな隠蔽捜査シリーズ。○.5とついているのは、スピンオフってことですね。

脇役キャラが活躍するスピンオフ短編が9作収録されています。いやー、今回も

面白かった~。文章も読みやすく、テンポも良いので、あっという間に読み終わって

しまった。一編が短い中でも、必ずその中に竜崎の見せ場があって、どの作品も

読んでいて痛快だった。ほんと、誰に対しても相変わらずブレずに竜崎だな~。

竜崎の古巣・大森署の面々も、まだまだ竜崎に頼りたいようで・・・。竜崎の

影響の大きさを思い知らされた感じがしましたね。でも、新しい署長のビジュアル

にも度肝を抜かれましたけどね^^;;新しい署長と、竜崎が対面するシーン

なんかも、今後読めたらいいなぁ。

個人的には、冴子さん主役の回はやっぱり好きだなぁ。今回も、主婦目線ながらも

鋭い感性で連続放火犯のプロファイリングしちゃうし。その推理を、竜崎も

バカにしないで真剣に取り上げてくれるところがいいですよね。1巻の竜崎の

キャラからは考えられないような気もしますが^^;このお話、なんとなく前にも

似たような冴子さん視点の話を読んだよなー・・・と思っていたら、何のことは

ない、アミの会のアンソロジーに収録されていて既読だったかららしい(他の方の

レビューを読むまで気づいてなかったw)。

竜崎の家族視点の話は、長女の美紀の回も、息子の邦彦の回も入っています。

竜崎ファミリー大活躍ですね(笑)。邦彦の回は、またやらかしたの!?と

若干イラッとさせられましたが、本人何も悪いことはしておらず、単にお人好し

だったせいで巻き込まれてしまっただけでした。まぁ、それも結局は単なる

取り越し苦労だったってだけだったのでほっとしましたけどね。何よりぐっと

来たのは、竜崎が息子の言うことを全面的に信じてあげていたこと。それは、

美紀の回でもそうでしたが。美紀のケースは、もし自分だったら・・・と考えて、

美紀のようには振る舞えないし、相手の要望通りに謝罪してしまうかもしれない、

と怖ろしく感じました。自分自身は何ひとつ悪いことをしていないのに。美紀

の場合は、味方に竜崎がいたことが一番大きかったですね。これほど心強い

味方はいないでしょう。逆に、竜崎だけは、絶対に敵に回したくないっていうね。

竜崎と関わる人はみんな、最終的には竜崎のファンになってしまうし、何か困った

ことがあったら、ついつい頼りたくなってしまう。淡々と自分の思うがままに

振る舞ってるように見えるけど、そこにブレない刑事としての信念があるから、

どんな問題が持ち込まれても、最良の解決策を導き出してくれる。こんな頼りに

なる人他にいないよね。このシリーズ読むといつも思うけど、こういう人が身内に

いたら本当に心強いだろうなぁ。家族でも同じ会社内でも。ほんと、人たらし

なんだから(褒めてますw)。

残念だったのは、今回伊丹視点のお話が入っていなかったこと。一番の竜崎ラブ

人間なので(笑)、伊丹視点のお話を読むのはいつも楽しみなんだけどな。

まぁ、今回主役に据えられた人物、どの人も竜崎ラブなのは間違いないけどね。

これだけいろんな人に信頼されるのも、竜崎の一本筋の通った振る舞いがある

からですね。そして、常に結果も出しているしね。竜崎が語ることは、

すべて論理的で筋が通っているから、説得力がありますよね。窮地に陥った場面

でも、あっさり信念貫いて解決しちゃうしね。ほんと、すごい警察官です。

でも、タイトルの『審議官』の回では、窮地に陥った竜崎が、ある意外な行動に

出たりします。竜崎も立場が上の人間に対しては、こういうこともするんだなー

と意外な面を見た気持ちでしたね。キャリア飲み会での振る舞いとかもね。まさか、

竜崎がアレを言うとはね。超人みたいに見える竜崎だけど、やっぱり、会社員って

ことなんでしょうね。穏便にその場を収める為には、我を抑えて、取り繕うような

こともするのだなぁと驚かされたのでした。

今回も痛快で、とっても面白かったです。