ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

今野敏「去就 隠蔽捜査6」/森晶麿「俗・偽恋愛小説家」

どうもこんにちは。すっきりしない天気が続きますねぇ。
お布団が干せなくて困る^^;明日は中秋の名月らしいですが、お月さま綺麗に
見えるかなぁ。


読了本は二冊。


今野敏「去就 隠蔽捜査6」(新潮社)
シリーズ最新作。やっと回って来たー。今回も面白くってほぼ一気読みでした。
ストーカー被害が続く中、竜崎が署長を勤める大森署でも、ストーカー対策チームが
新設されることに。しかし、その矢先に、大森署管轄内でストーカーによると思われる
女性の連れ去り事件が勃発し、さらにその女性と共に姿を消したと思われる友人男性の
死体が発見される。大森署内に捜査本部が置かれ、竜崎は指揮本部長の伊丹から、
副本部長に任命されることに。一方、家庭内では、娘の美紀が付き合っている男性
からストーカーまがいの行為をされて悩んでいると相談を受ける。公私共にストーカー
事件に関わることになった竜崎に、新任の上役との軋轢から、更なるピンチが訪れる――。
今回のテーマはストーカー犯罪。最近、ニュースでもその手の犯罪事件が多く報じられる
ようになりましたよね。私も知り合いから、別れた旦那や付き合っていた相手がストーカー
っぽくなって大変だった、という話を何度か聞いたことがあります。誰にでも起こり得る
身近な問題なんでしょうね。エスカレートしていくと、本当に殺人にまで発展する可能性が
あるし、警察がこういう問題に真剣に取り組んでくれるのは、市民としては有り難いこと
だと思います。竜崎が、上からの取り決めで仕方がなくというのではなく、真剣にストーカー
対策チームの編成に取り組むところに好感が持てました。せっかく新しい制度を作るのだから、
機能しなければ意味がない。当たり前のことだけど、こういう大きな組織にいると、そういう
当たり前のことが当たり前でないのが普通だから。思いつきの、表面上だけの対策チームなんて、
全く意味がないですから。竜崎の言うことは、本当にいちいち的を射ていて、感心させ
られました。それだけに、頭でっかちの、体面ばかりを気にする上役の理不尽ないちゃもん
にはムカムカさせられました。終盤、その上役のおかけで、竜崎はまたもピンチに見舞われ
ます。竜崎がしたことは、すべてが理にかなっているのに、自分が蔑ろにされたと逆恨み
して、竜崎を失墜させよう企む。こういう人間がいるから、組織は腐って行くんじゃない
のかな・・・。でも、ちゃんと見ている人は見ているというのがよくわかる結末で、胸が
すっとしました。大森署の人たちも、みんな竜崎のことが好きなんだなぁとわかって、
嬉しかったです。問題児の戸高も、なんだかんだで竜崎のことを認めていて、一目
置いているのがわかりますしね。
娘の美紀の交際相手とのストーカー問題も、竜崎の機転ですんなりと丸く収まりましたし、
やっぱり竜崎ってすごい人だなぁ、と今回もしみじみ思わされたのでした。
今回のことで、伊丹にもちょっと貸しが出来たので、彼に対する竜崎の態度にも少しは
変化があるかな?伊丹は竜崎のことが大好きなのに(え、違う?w)、いつもそっけない態度で
伊丹が可哀想なんですもの^^;もちろん、過去のいじめの記憶は消せないでしょうけど・・・。
あとは、やっぱり今回も妻の冴子さんは凄かった。竜崎が左遷されるかもしれないと
打ち明けた時のきっぱりした態度があっぱれ。刑事の妻はこうでなくちゃいけないの
だろうなぁ。そして、最後、娘の前で一芝居打ったことにもすぐに気付く慧眼にも脱帽。
やっぱり、竜崎は冴子さんの内助の功があってこそ、竜崎でいられるのでしょうね。
今回も、スカッと気持ちよく読み終えられました。面白かったです。


森晶麿「俗・偽恋愛小説家」(朝日新聞出版)
懲りずに、またも借りてしまった森作品。でも、これは一作目が結構面白かったので、
続編を楽しみにしていた作品です。
ただ、今回は、前作よりもちょっと、読むテンションは下がったかなぁ。だって、
主人公の月子が、好きな人がいるにも関わらず、かつて憧れていた幼馴染に再会
して、気持ちが揺れ動いてふらふらしているんだもの。もっと素直に自分の気持ちに
正直になったら、あんな風にどっちつかずな態度になったりしないだろうに。
まぁ、それが女心というものなのかもしれませんが・・・。
今回も、夢センセによる有名童話の新しい解釈は面白かったです。かなり強引な説も
ありましたけど・・・。
第一話は白雪姫がテーマ。白雪姫の斬新な解釈は面白かったですけど、殺人事件の方は
正直、無理があるだろう、と思いました。○ったまま車いすに載せて、演奏会の場に
連れて来て、○○させる・・・その場で誰かが触れた時点で、トリックバレると
思いますけど・・・。あと、結露で身体中が濡れてたりしないのかな??
ツッコミ所しかない真相に苦笑するしかなかったです。
第二話はラプンツェル。これもツッコミ所満載。舞台上で殺人が起きてるのに、
最後までコンサートを続けるってのはやっぱり無理があると思う。代役がいたから
誤魔化せたっていうのは、ちょっと苦しすぎるのでは。どのみち警察が調べれば
公になる事件の筈だし。かえって、お金目当てで無理やり続けたってことで、後々
主催者側に批判が集まるのではないかなぁ。
その後、関係者である未知が、すぐに月子と夢センセが飲んでいるバーに現れたのも
おかしい。警察から事情聴取されてる時間の筈では?そんなすぐに解放されないでしょ。
容疑者の一人とも云える訳だし。何かいろいろ腑に落ちない感じがしてモヤモヤしました。
第三話目は、かえるの王様。不勉強ながら、元ネタを知らなかったので、夢センセの
新解釈を読んでも、目からウロコ、みたいな感じにはならなかったな。っていうか、
すごい解釈だなーと目が点にはなりました。童話の世界で、こういうタブーを盛り込むって
あるのかな。腐女子が盛り上がりそうですけど(笑)。聡のあっけない心変わりには唖然。
今まで何だったんだ^^;愛情があるのかよくわからないけど、罪悪感から
女性と付き合っても幸せにはなれないだろうなぁと思いました。月子を振り回す
だけ振り回してあっさり退場って、一体何なんだーー^^;;
幕間を挟んで最終話はくるみ割り人形。これも、バレエでちらっとみたくらいで、
元の話ってよく知りませんでした。こういう話だったんだー。
夢センセの作中作の仕掛けには、恥ずかしながら全然気づいてませんでした^^;
読書メーター見てたら、一目瞭然!みたいな人が多くって、穴があったら入りたかったです
・・・ミステリ好きのくせに^^;
途中いろいろありましたが、最後はちゃんと収まるところに収まって良かったです。
全く、回りくどい二人だなぁ。
しかし、前作でも思ったのだけど、やっぱり夢センセの恋愛小説は、ちっとも良さが
わからなかった。綺麗な文体とか、どこが?って感じだし。会話文にセンスがあるとも
思えないし。最後にわかる仕掛けでなるほど!と唸らせるものはあると思うけど・・・
文章的に褒めている月子の感性がよくわからなかったです。
一応大団円を迎えた二人だけど、更なる続編はあるのかな。もうちょっと二人の
ラブラブな所が読みたいですねぇ。
あの毒舌夢センセがラブラブって有り得そうにないけどね(笑)。