ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

燃え殻「ブルーハワイ BLUE Hawaii」(新潮社)

ついつい読んでしまう燃え殻さんの最新エッセイ。今回も、うんうんわかるわかる

と思えるものから、それはどうなの燃え殻さん!ってツッコミたくなるものまで

いろいろ。でも、どれもが燃え殻さんの人柄が忍ばれて、どれを読んでも

楽しいし、切ない。なんだか、心に沁みるんですよね。言葉の選び方が好き

なのかな。

燃え殻さんの年齢、多分私と一緒。だから、若い頃のエピソードが出て来ても、

そうそう、そんな時代あったね、と思い返せて、なんだか懐かしい気持ちに

なったりします。自分にもそういう時代あったなぁと思ったりもします。

いやいや、そんな経験しなかったよ!と思うものが大部分ですけどね(笑)。

これだけ人気エッセイストとして話題になっているのだから、そこそこお金も

もらっているだろうと思いますが、エッセイ読んでいる限り、そういう空気感

は全くなし。むしろ、そういう風に誤解されていて戸惑っているように見える。

まぁ、確実に私よりはお金持ってると思うけどね・・・。

自虐ネタが多くて、鉤括弧の一人ツッコミにくすりと笑ってしまいます。

そんなにへりくだらなくても、と思うこともしばしば。燃え殻さんのように

人気者でも、生きて行くのって本人にしかわからない辛さや大変さがあるの

だろうな。もっと自信を持っても良さそうだけど、そうじゃないところが燃え殻

さんの好きなところでもあるので、このまま変わらないで欲しいな。

なくなったお祖母さんと、お母さんのエピソードにはぐっと来ました。怖がりの

燃え殻さんに病床の祖母が告げた約束や、病で入院したお母さんが、病床で

どんなに身体がしんどい状況でも、自分のことより息子の身体の心配を

するところに胸がいっぱいになりました。どちらも、燃え殻さんへの愛が溢れて

いて、燃え殻さんは裕福ではなくても、素敵な人たちに囲まれて育てられて

来た人なんだな、と思わされました。だから、燃え殻さんご自身も、他者への

思いやりや優しさにあふれているのだろうな。

燃え殻さんのエッセイを読むといつも、何気ない日常の一コマが、後から思い返すと

とても大事な思い出のひとつだったということに気付かされます。日々は、そういう

何気なくも大事な思い出の積み重ねなんですよね。

まぁ、私個人は、燃え殻さんのような面白エピソードはそんなにないけどさ。

行間から溢れ出す、燃え殻さんの優しさやユーモアに心癒やされるエッセイでした。