ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

藤崎翔「モノマネ芸人、死体を埋める」(祥伝社文庫)

最近ちょっと注目している藤崎さんの最新作。『逆転美人』は結構話題になって

いるみたいですね(確かに面白かった)。

今回は、往年の名野球選手・竹下竜司のモノマネで食べている、モノマネ芸人の

マネ下竜司こと関野浩樹が主人公。竹下本人からも認められ、世間でも大分

認知されて、四万人のドーム球場でモノマネを披露するまでに登りつめていた

浩樹だったが、ある日を境に人生が逆転してしまう。その日、いつものように

酔った竹下から自宅に呼びつけられた浩樹が目にしたのは、竹下が殺した女の

死体。竹下が警察に捕まると同時に、自分の仕事も終わってしまう。竹下から

死体を隠蔽する手伝いをしろと言われて、頭をフル回転させる浩樹。竹下は、

野球だけで生きてきた人間なので、致命的に頭が悪いのだ。どうやったら完全

犯罪を遂行出来るか――。

 

ネタバレ気味感想となっております。未読の方はご注意を!

 

 

 

 

 

 

途中までは、タイトル通りの展開で進んで行くので、まぁ、想像通りの物語

という感じ。ただ、その先はやっぱり藤崎さん。ほお、ほお、そう来ましたか!

みたいな怒涛のドンデン返しへ。

正直、浩樹が竹下を裏切るところまでは、想像通りでした。しかし、その先の

黒幕の部分までは全く考えが至りませんでした。確かに、その人物、何か裏が

ありそうだよなーという言動はしていたので、そこまでの驚きはなかったのですが。

どちらかというと、ああやっぱりな、と納得する気持ちの方が強かった。

しかし、驚きは更にその先にありました。まさかの人物の活躍で、二人の犯罪が

警察にバレてしまうとは。しかも、その人物を招き寄せたのが、あの人だったとは

(指示代名詞ばっかでわかりづらくてすみません^^;読んでいただければ

わかるとは思うのですが←そりゃそうだ)。マネ下のバースデーの為に、そこまで

画策していたとは、ちょっと泣かせるな~と思いました。まぁ、過去の言動が

言動なので、いまさら感もありましたけど)。友達だと思ってたってところも

ちょっと驚きました。寂しい人生だったんですねぇ・・・。

でも、浩樹が本心から竹下を裏切ってなかったところにはほっとしましたね。

ラストの果凜の裏切りにもびっくり。確かに、その場面での相手のセリフ、

読んでて引っかかったところではあったので、そういう意味だったのか~と

溜飲が下がりました。伏線、細かっ!!竜司の妻の真穂のセリフでも、似たような

伏線がありましたね。計算され尽くしててすごいなー。まぁ、若干あからさまな

気もしなくはないですが。

ところどころユーモアがあって、テンポも良いのでさくさく読めました。マネ下

のモノマネ芸人仲間の名前がいちいち面白かったな。役所狭司、椎名すりおろし

林檎、藤田似トル、ぶく山雅治、製氷室京介、真田虫広之・・・よくまぁ、これだけ

考えつくなぁと笑ってしまいました。元お笑い芸人の面目躍如、という作品でしたね。

くだらないけど面白い、ユーモアミステリの新境地を開いた人じゃないかな。

今回も楽しく読めました。

ラストの警察官の後日談だけは、若干蛇足に感じましたけどね。