ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾「マスカレード・ゲーム」(集英社)

シリーズ第四弾。前回の事件から数年が経っている設定。新田刑事は出世して

警部になり、殺人事件の捜査の指揮を取るほどにまでなっています。新田たちは、

最近起きた三つの殺人事件の共通点に着目し、これが連続殺人事件であることを

突き止める。三つの殺人事件の被害者は、すべて過去に人を殺した犯歴があったのだ。

しかし、動機を持つ被害者遺族たちは、皆それぞれにアリバイがあった。そこで、

警察は、これがそれぞれの遺族たちによるローテーション殺人であることを導き出す。

すると、容疑者である遺族たちが、クリスマスイブの夜にこぞってホテル・コルテシア

東京に泊まることが判明した。そこで、過去二度に亘って潜入捜査を担当した新田に

白羽の矢が立った。新田は、再びホテルマンとしてホテル・コルテシア東京に潜入

することに――。

新田がずいぶん偉くなっているのに驚きました。山岸さんは渡米中だったので、

なかなか出て来なくて、ちょっと物足りないなぁ、まさか今回登場なしとかない

よね?と不安にかられながら読んでました。真打ち登場!とばかりに出て来た時は

ほっとしました。おお~!と思いましたね(笑)。やっぱり、ホテルでの潜入

捜査中の新田さんのバディには山岸さんが欠かせませんからねぇ。

同じホテルが三度も事件に使われるなんて、偶然が過ぎないか?と疑問には思い

ましたが、その理由は一応ちゃんと作中で触れられているので、溜飲は下がりました。

とはいえ、やっぱり偶然が過ぎるとは思いましたけどね^^;

今回も怪しげな人物がたくさん宿泊していて、誰がこの事件の仕掛け人である

『マルチバランス』なのか、全然わからなかったです。新田の同級生の女性は

絶対何か裏があるとは思ってましたけどね~・・・。まんまとミスリードさせられ

ていたなぁ。

新田とホテルでの捜査の在り方について対立する梓警部のキャラは、ちょっと最初

言動が鼻について好感持てなかったです。まぁ、彼女は彼女で純粋に真相を解明

したいが為の言動ではあったと思うのですが。でも、その強引なやり方には大分

イラッとさせられました。退職間際の能勢刑事のフォローがなければ、もっと

ムカついていたかもしれないです。

新田と能勢刑事の絡みをもう少し読みたかったなぁ。

 

 

以下、ラストに触れています。未読の方はご注意を!

 

 

 

 

 

 

潜入捜査中の新田の言動が、ホテルにいるということを差し引いても、かなり

警察よりもホテル側よりだったので、刑事よりもホテルマンの方が適性があるのでは?

と度々思わされていたのですが・・・まさかの結末に唖然。新田の刑事としての

責任感の強さが浮き彫りになった形でもあるのでしょうが・・・意外過ぎました。

これでシリーズ打ち止めなのか?と言う人がいるのも頷けました。ただ、ホテル

を舞台にこれからもシリーズを続けたいと考えた結果、こういうオチになった

のかも、とも思いましたけれどね。しかし、総支配人、新田が断る可能性を考え

なかったのかな。なんか、引き受けて当たり前、みたいな態度だったのがちょっと

違和感ありました。こんな人生の岐路に立たされたような選択、その場で答えが

出る訳ないと思うんですがね。

山岸さんが渡米しちゃったせいか、シリーズごとに少しづつ縮まっていたように

見えた二人の距離が、今回全然縮まっていなかったところにちょっとガッカリ。

前の事件から今回の事件が起きるまで、全く会う機会もなかったっぽいし。

あくまで、二人はホテルを通した関係であり、お互いの間にあるのはせいぜい

『尊敬』の念くらいってことなんでしょうね。それはそれで尊い関係なのかも

しれませんが・・・できれば、『愛情』まで昇華してほしかったな~・・・。

もし、続編があるとしたら、次は、新田ががっつりホテルマンになっている姿が

拝めるということですよね。それもちょっと見てみたい気はしますね。