ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

近藤史恵「オーロラが見られなくても」(角川書店)

近藤さん新作短編集。それぞれの主人公が馴染みのない海外に行っていろんな

人や美味しい物に出会うことで、躓いた人生を見つめ直す、というような感じ

の作品集。海外×食べ物×近藤史恵で面白くない訳がない、という訳で、好み

ど真ん中の作品でしたね。

だいたい一箇所くらいは行ったことがある海外が出て来るんですけど、今回は

ひとつも行ったことがある国がなかったです。読みやすいので、ほとんど一日で

読んじゃった。出て来る食べ物もどれも美味しそうだったなぁ。既読の作品も

入ってました(『遠くの縁側』と表題作)。

最初のページをめくると、海外行きの航空チケットを模した紙が付いていて、

凝った構成だな~と思いました。表紙のケーキ(タルト?)もめっちゃ美味し

そうよね。

 

では、各作品の感想を。

『遠くの縁側』

ランジェリーメーカーに勤める藤本乙葉は、アムステルダムでヨーロッパ向けに

開かれた見本市にやって来た。いくつか契約も取れたが、終了間際に現地スタッフ

と訪れたバーで、パスポートや財布の入ったカバンを盗まれてしまう。パスポート

の再発行の為に現地に一人残ることになった。一人で外食する気分になれず、

何か買って帰ろうと思っていると、町中に日本では見かけないコロッケの自販機を

見つけ――。

今回の作品では行ったことがない国ばかりと述べましたが、アムステルダム

空港だけなら何度か乗り継ぎ便の時に立ち寄ったことがあります。ただ、空港から

外には出てないので、観光はしたことないんですよね。オランダ行ってみたい

ですけどね~。コロッケが自販機で買えるって面白いですね。めちゃくちゃ美味しそう

で食べたくなりました。

 

『パンケーキとイクラ

フリーのカメラマンをやっている僕は、数ヶ月前、突然恋人の咲良から別れを

告げられた。彼女が言うには、他に付き合いたい人がいるのだと言う。傷心の

僕は、バルト三国の一つ、リトアニアにやって来た。通りがかりのカフェで

地元のパンケーキの写真を撮ろうと思い注文すると、出て来たパンケーキに

イクラが添えられていた――。

パンケーキにクリーム+イクラは、私もちょっと抵抗あるかも。キャビアよりも

魚卵が主張しそう。でも、現地の方はこれが普通なんですもんね。一度試して

みるのも良いかもしれないな。

最初は突然他に付き合いたい人がいると言って別れを告げた彼女を勝手だな~と

思ったけど、主人公の妹が推理した通りの理由だとすると、勝手なのは主人公の

方だったと印象が逆転しました。フリーのカメラマンの男性だと、こういう

理由でフラレるケースは結構多そうですよね・・・。

 

ジブラルタルで会えたら』

親友の優來が結婚した。何をするにも一緒だったのに、彼女の一番はわたしで

なくなってしまった。新婚旅行でイタリアかスペインを巡っている彼女の傍ら、

どうしようもなく寂しいわたしは、モロッコにやって来た。優來にメッセージ

を送ると電話がかかって来て、今彼女はスペインのグラナダにいるという。優來

は両者の距離は近いと言うのだが――。

一番仲の良い友達が結婚した時って、こういう気持ちになるよなぁと思いましたね。

まぁ、傷心旅行に出ようとまでは思わないかもですが^^;モロッコ、素敵な国

だろうなーって思いましたね。マラケシュは昔、松田聖子さんの歌の中に出て

来て、めっちゃ憧れありました。いつか行ってみたい~。

 

『オーロラが見られなくても』

長年の父と祖母の介護からようやく解放されたわたしは、今後のことを考える前に、

一度だけ好きなことをしてみたいと思い、オーロラが見たくて、アイスランド

やってきた。オーロラを見る前に参加した氷河湖ツアーで、わたしは日本人の

女性と知り合いになった。美しい人でミュージカル俳優をしているという。自分

とは真逆の世界の遠い人だと思っていたのだが――。

オーロラは、人生で一度は見てみたいものの一つではありますが、あの寒い場所

に行くと思うともう、寒いの苦手人間の私は心がくじけますね・・・。しかも、

せっかくそこまで行っても、天候次第では滞在中に見られない可能性もあるって

言うし。賭けですよねぇ。まぁ、イタリアの青の洞窟も似たようなものでは

あったけど(運よく、天気が良くてバッチリ見られました)。

主人公に介護を押し付けた兄には怒りしか覚えなかったですね。現地で出会った

ミュージカル俳優の秋月さんがびしっと言ってくれて、胸がスカッとしました。

 

『マイナス十二度のアイスキャンディー』

以前、二年ほど同じ職場で働いていた中国人の郭さんから、いつか故郷のハルビン

に来てと言われていたわたしは、コロナ禍が開け、ある理由から仕事を辞めて、

次の仕事を探す前にハルビンに行くことを思い立つ。郭さんは、一緒に働いて

いた時、故郷の母親の体調が悪いと言って故郷に帰っていた。ハルビンでは、

冬には、マイナス三十度にもなるそうで、その寒い中アイスキャンディーを

食べるのだというが――。

このタイミングで中国に行くお話とは・・・前に同じ系統の作品で、ウクライナ

戦争が始まったタイミングでロシアに行く話が収録されてなかったっけ。

敢えて狙って書いているのかと思ってしまうけども。主人公が仕事を辞めた

理由には腑に落ちない気持ちになりました。主人公は何も悪くないのに・・・。

でも、相手の本性がわかって良かったのかもね。

マイナス三十度といえば、以前横浜の水族館かなんかで体験したよな~と思い

出しました。めっちゃ寒かった^^;現地にいると、マイナス十二度くらいで

あったかいっていう表現になるんだから、想像を絶する世界だなぁと思いました。