ミステリ読書録

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乾くるみ「カラット探偵事務所の事件簿3」(PHP文芸文庫)

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とっても久しぶりのカラット探偵事務所シリーズ第三弾。前作から8年が経っての

続編刊行。当然ながら、前二作のことなどきれいさーーーっぱり忘れていました

とも。主役二人のキャラすら全く覚えていなかったという・・・どういうこと?^^;

とはいえ、今回はそれが良い方に行ったと云えるかもしません。ラスト一作の

仕掛けに素直~に騙されましたもん。これ、前のお話読んだ直後だったらもっと

違和感持って読めたと思うんですよね。語り手の井上の○○のこととか(漢字二字)。

探偵の古谷と井上の関係とか。作者だって、8年も前の前作のことなんて読者は

忘れていると思って出しているんじゃないかなぁ(嘘です。単なる負け惜しみです

・・・読書メーターの感想で、ばっちり覚えているという感想の方いました)。

それにしても、前二作がしっかり本書の伏線になっているところには参りました。

始めから三部作のつもりで書かれていたのかなぁ。でも、ラストのFile19の仕掛けは、

語り手本人も言及してたけど、ミステリとしてはアンフェアじゃないのかなぁ。

井上はアンフェアじゃないって言い張っていたけどさ。一部の事実を捻じ曲げて

書いていた訳で。まぁ、それがあってもなくてもどうせ私は気づけなかったと

思うけどね・・・。

一作ごとのミステリ完成度としては、そんなに特筆すべきものもなかったように

思いますが、ちょっとした小技がちょこちょこ効いていて、楽しく読めました。

ただ、私の読解力の問題のせいか、謎解き解明部分の説明が冗長でわかりにくいこと

も多くて、状況がいまひとつピンと来ないお話もいくつかありました。ただ、その

中でも、遊園地のイベントの謎解き問題を作るお話とかは面白かったです。

今流行りの謎解き問題は、こんな感じに作られているのかな~と思えました。

東大卒の松丸君や伊沢君なら、古谷が苦心して作った問題も、すぐに解けちゃうん

だろうなーと思ったり。私は絶対正解にたどり着けそうにないと思いましたが^^;

幼馴染の古谷と井上が探偵と探偵助手の間柄だったのが、たった二年間だけだった

というのは意外でした。まぁ、その理由は前作ですでに明かされていたらしいのだ

けれど。

しかも、本書を含めたシリーズ三作に収録された事件は、すべてが一年の間に

起きていた出来事だったらしい。書かれていない事件もたくさんあったと思うから、

探偵事務所が扱う事件数としては少なすぎるくらいでしょうけど。ただ、一年の

間に、これだけバラエティに富んだ謎解き事件の依頼が入ったというのは、やっぱり

『謎解き専門』の探偵事務所ならでは、なのかもしれないですね。

15年が経って古谷と井上の関係は探偵と探偵助手ではなくなっています。それは

やっぱり少し寂しいものがあります。でも、二人のその後の関係は、もっと深いもの

になっている訳で。今後さらにこのシリーズの続編が書かれるとしたら、古谷と

現在の助手のお話になるんでしょうね。書かれるつもりがおありかはわかりません

けども。現在の助手と知り合うきっかけの事件についても終盤でほんの少し言及

されているから、もしかしたらそのうち続編が出るのかもしれませんね。