ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「鍵のかかった部屋」/阿部智里「弥栄の烏」

こんばんは。秋ですねぇ。秋バラの季節でもありますが、今年の我が家の薔薇たちは
ほぼどの品種もお花は絶望的です。ちょぼちょぼとは咲いていますが、昨年のようには
きれいな花を咲かせてくれません。夏の猛暑、台風による塩害に加え、謎の害虫に
襲われ、葉っぱがどんどん食べられてしまいました。気がついた時には手の施しようが
ない裸状態に・・・。取り敢えず、秋バラは諦めて、摘蕾して切り戻して、養生させて
います。株自体は元気なので、来年の春を目指して再出発ってところです。来年の冬に
冬剪定させるまでは、とにかく害虫にやられないよう手入れしつつ、株の養生に専念
しなくては。メダカの方は、取り敢えず謎の連続死はストップし、今のところはみんな
元気。今日は相方が置き場所を整理して、二つの水槽が一つのラック(三段式の上段と
中段)に収まるようにしてくれたので、鑑賞しやすくなりました。良かった良かった^^


今日も二冊です。


鍵のかかった部屋~5つの密室~」(新潮文庫nex
鍵と糸を使った機械的な密室トリックがテーマの、5人の作家による競作アンソロジー
鍵と糸というオーソドックスなトリックを使うことが条件という、古いんだか新しい
のだかわからない作品集。でも、同じトリックを扱っていても、それぞれに全然
使い方が違っているのが面白かったです。なるほど、こういう使い方もあるのかー
って感じ。密室トリック自体がオーソドックスなだけに、それをどう料理して面白く
読ませるかは作家さんの手腕に関わっているので、なかなかにハードルの高いテーマ
だったのじゃないでしょうかね。
実は、予約本が重なっていたので目当ての似鳥さんだけ読んで返しちゃおうかと
思ってたんですが、一作づつがさほど長くないのと、他の作家さんがどういう作品を
書いて来るのか興味があったので、結局最後の島田さんまで全部読んでしまった。

 

では、各作品の感想をさらっと。

 

似鳥鶏 『このトリックの問題点』
これは、そもそも論ですね。似鳥さん、実際に試してみた結果の作品なんですかね。
それとも、これって本格ミステリ好きには周知の事実なんでしょうか。なんとなく、
ラストはちょっと後味の悪さを感じたんですけど。主人公の邪な意図が明らかに
されちゃったからね。こういうやり方で犯人に恩を売るってのはどうなんでしょうね。

 

友井羊『大叔母のこと』
亡くなった大叔母さんの自宅の開かずの扉を開ける為に主人公が奔走するお話。
大叔母さんの真意が生きているうちに一番伝えたい人に伝わらないままだったのが
悲しかったです。でも、時を経て明らかになってよかったのかな。
ところで、最後の通帳、見つけたはいいけど手続きとかいろいろ面倒そうだし、
どうなるんでしょうか。鍵を開けてくれた人に渡すという文言が遺言代わりに
なるのかなぁ。謎。

 

彩瀬まる『神秘の彼女』
春ちゃんの正体は、現代なら有り得そうな感じですね。似たようなお話が、
初野晴さんの作品にあったなぁ(ハルチカシリーズの一作)。
冒頭に突然出て来た盧遮那仏の存在のせいで、最初ファンタジックなお話なのかと
勘違いしちゃったのですけど、最後にその秘密が明かされてすっきりしました。
そこにトリックが関係してたとはね。例のトリックが出て来ないじゃない、と
思ってたんですけどね。しかし、糸は使ってないような・・・?

 

芦沢央『薄着の女』
ミステリ的には一番出来が良かったような気がします。犯人が薄着だった理由が
わかった瞬間、なるほど!と思いました。十時警部が犯人をじわじわ追い詰めて
行く過程が巧いな、と思いました。トリック自体は凡庸でも、その道具の○○に
着目したところが目新しかったですね。その上、ラスト一行でひっくり返される
あのオチ。まぁ、そこは蛇足に感じなくもなかったですけれど。

 

島田荘司『世界にただひとりのサンタクロース』
テーマとなるトリックとしては、テーマに沿っているとは言い難いと思いますが、
作品としての出来はさすがですね。島田さんらしいトリックだし、動機だし。
とても優しくて切なくて、そしてやりきれない物語。この作品を読まずに返そうと
していたなんて、本当に自分に腹が立ちますよ。若き御手洗さんはやっぱり素敵でした。
御手洗シリーズストップしたまんまなんだけど、また再開したいなぁ。


阿部智里「弥栄の烏」(文藝春秋
八咫烏シリーズ第六弾。これで第一部完結だそうです。やっとここまでたどり着いたー。
でも、まだ外伝が一作残っているですよね。また一年くらいかかりそうだけど(その
前に第二部が始まりそうな気が・・・^^;)。
前作の内容を八咫烏視点から語られたもの。回って来るのに時間がかかって、すっかり
前作の内容を忘れていた為、なかなか思い出すのに一苦労。そういえば、志帆って女の子
が山神を育てていたよなぁと、なんとなく読んでる途中で思い出しました。彼女が
逃げ出したことで、八咫烏たちの間ではあんな悲劇が起こっていたのですね・・・。
一番ショックだったのは、やっぱり茂丸ですよね・・・。なにも、あんな結末に
しなくても。その結果、雪哉の性格が更に変わってしまったのが悲しい。なんか、
最初の頃とは全然別人みたいになっちゃいましたね。一作ごとの彼のキャラのブレ
具合が激しいので、違和感ばかりを覚えてしまう。それが成長なのかもしれない
ですけど・・・。あと、若宮の性格も最初とは随分違ってますし。生きるか死ぬかの
戦いを経験して、いろんなものを背負うと、そんな風に性格も変わってしまうもの
なんですかねぇ・・・。
一応、八咫烏と山神と猿たちの間の因果については明らかになったのですが・・・
うーーん、だらかといってすっきりしたかというと、全然すっきりはしていない
ような。なんか、いまいち盛り上がりに欠けるままに終わってしまった感じ。
猿に関しても、山神に関しても。志帆が育てていた山神の結末もあっけなさすぎるし。
なんか、この作者さんは、キャラに対して愛情を感じられないんですよね。使い捨て
みたいな感じがすごくする。そういう物語だと言われてしまえばそれまでなんですけど、
せっかくそのキャラに対していい場面があっても、次の瞬間あっけなくそのキャラを
殺してしまったり。荒唐無稽すぎて、ちょっとついていけない。最初はそのドンデン返し
みたいなところに感心したのだけど、本書に関しては、もやもやばかりが残る終わり方
だった。唯一良かったところは、奈月彦と浜木綿夫婦に待望の時が来たところですかね。
側室騒動もあったりしてどうなることかと思ったけれど、良かったです。やっぱり、
二人にとってもこの結末が一番良いことでしょう。愛し合ってる夫婦なんですもの。
最後の最後で、雪哉の心に少し回復の兆しが見えたところは嬉しかったです。茂丸の
ことが、それほどに彼の心を蝕んでいたんですね・・・。他人に執着するタイプには
見えなかったけど、彼の存在は特別だったんでしょうね。
なんか、このシリーズは一作ごとに読むテンションが下がっていったような。
前半の3、4作目辺りまでが一番おもしろかった。後半、猿が出て来た辺りから物語が
破綻していった気がする。そして、前作で現代を出したのが最大の失敗だったと思う。
ファンタジーならファンタジーで徹するべきだった。中途半端な現代とのリンクが、
作品をブレさせてしまったと思う。辛口で申し訳ないとは思うけれど、物語が整理
しきれず無理に収拾をつけようとしたせいで、散漫な印象になってしまったことは
否めないので。また黒べるこが出てしまった。すみません・・・。
第二部読むか迷ってしまうなぁ。