ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」(新潮社)

今年度の本屋大賞受賞作。出た時からずっと気になってた作品ですが、話題が先行

して予約数が偉いことになった上に、本屋大賞を受賞したことで更に予約が

増えて、随分待たされることになりました。文庫落ち待ちでもいいやと思って

ましたが、一応予約しておくか、と思って予約しておいたら、入荷数が増えた

からなのか、思ったよりは早く回って来てくれて良かったです。私の後には700

人以上が待っているし、続編の方はあと200人待ちくらいなのでまだまだ

回って来そうにもありませんが・・・^^;

とにかく、話題沸騰の青春小説ということで、期待MAXで読みました。読み

やすいので、あっという間に読み終えられちゃいました。うんうん。予想通りの

面白さではありましたね。やっぱり、ヒロインの成瀬の破天荒なキャラが立って

いて良かったですね。『200歳まで生きる』をモットーに、様々なことに

全力でチャレンジする成瀬あかり。周囲からは少々浮いているが、本人は周りの

評価など何ひとつ気にしておらず、ひたすらゴーイングマイウェイを貫く。そんな

彼女の生き方に、共感する読者は多いんじゃないかな。でも、私がこの作品で秀逸

だと思ったのは、成瀬のキャラよりも、その破天荒な成瀬を幼い頃から見守って

来た、友人の島崎のキャラの方。島崎という理解者がいるからこそ、成瀬の

キャラクターが生きていると思いました。成瀬に付き合って西武百貨店の中継に

一緒に映ってあげたり、M-1に出ると言い出したら、相方として一緒に出場して

あげたり。大抵の人は成瀬の言動に引いてしまうのに、島崎だけは、成瀬が

どんなに突拍子もないことを言い出しても、それを面白がって見届けてくれる。

成瀬って一見周りの人間のことなんか気にしなさそうに見えるけど、意外と他人

の意見に耳を傾けるタイプだし、島崎のことはめちゃくちゃ頼りにしている節が

ある。島崎本人は全然それに気づいてなさそうですけど。いきなり漫才やりたい、

M-1に出たいって言われて、一緒に漫才やってくれる人なんていないですよ。

しかも、文化祭で大勢の生徒の前で披露するとか。私だったら絶対無理。

島崎本人は、自分は地味で目立たない生徒、みたいに自虐してるけど、全然そう

じゃないと思うなぁ。まぁ、成瀬みたいな特殊な性格の子と一緒にいたら、自然と

目立つようになっちゃうのかもしれませんけど^^;終盤、島崎が自分の前から

いなくなると知った時の、成瀬の動揺が、成瀬にとっての島崎の存在の大きさを

物語っていると思う。二人は本当にいいコンビだと思いました。

個人的には、競技かるたの大会で見かけて、成瀬のことを好きになってしまった

西浦君とのエピソードが好きだった。硬派な西浦君はなかなか良いキャラだった

から、成瀬とうまく行けばいいのにな、と思ったけど、恋愛なんて全く興味なさそう

な彼女が相手だったのが運の尽きというか・・・。でも、そういう彼女のちょっと

変わった部分を気に入ってくれる、西浦君のセンスが良いなぁと思いました。

連絡先は交換したみたいだから(成瀬は携帯持ってないから文通になるだろうけど

w)、今後も交流が続けばいいなと思う。

女の子なのに、高校に入学すると同時に坊主頭にして、三年間でどれだけ髪が伸びる

かチャレンジするとか、突然競技かるたをやり始めるとか、まぁ、とにかく思い

ついたら即実行、みたいな成瀬のバイタリティが凄まじかった。一緒にいると

退屈しなさそうだけど、それに付き合うのは大変かも。頭は抜群に良いのだろうから、

将来は本当に政治家とか目指すようになりそう・・・。島崎を追って、東京の

大学(東大)目指してもいいんじゃないのかなぁ。

成瀬の今後の生き様も気になりますね。続編はまだまだまだまだ回って来そうに

ないけど、そっちも面白いとのことなので(ネット情報)、楽しみにしていよう。