井上さん新刊。おそらく二冊同時発売だったのかな？これとは別に、SISTER編
というのも出ています。Side-A、Side-Bみたいな感じらしい。予約が回って来た
のがこちらが先だったのでこちらから読みましたが、一説によると、SISTER編
の方を先に読んだ方が良いらしい。SISTER編ももう予約は回って来ているので
（まだ引き取りに行けてないけど）、読めばその意味がわかるのかなぁ。
ぎんなみ商店街という商店街で起きる事件にまつわる連作中編集。三作が収録
されています。扱う事件はSISTER編も同じらしく、同じ事件なのに視点が
違うと解釈も違って来る、というのがウリのようです。
こちらのBROTHER編では、木暮元太・福太・学太・良太の男ばかりの四兄弟が
主人公。母は失くなっており、父親は海外赴任中で、四兄弟だけで生活しています。
そんな中、銀波坂で酒や米などを扱う袴田商店に車が突っ込む事件が起きる。
運転手は不運にも、手に持っていた焼き鳥の串が喉に突き刺さり即死だった。
その事故の唯一の目撃者が木暮家の四男・良太だった。良太は、事故の直後、車の
助手席側から何者かが出て来たのを目撃したと言う。しかし、その証言の後、良太
の様子がおかしくなり――。
二話目は、三男の学太が通う銀波中学校の美術準備室で起きた、器物損壊事件の顛末
を描いたもの。
三話目は、商店街が協賛した「ミステリグルメツアー」にまつわる不穏な事件を
描いた作品。フレンチシェフとしてツアーに帯同していた元太と連絡が取れなくなり、
心配した弟たちは、元太の足跡を辿ろうと奮闘するが。
うーむ。なんだか、どの事件もどこか腑に落ちない終わり方というか、納得できない
部分が残っているんだよなぁ。SISTER編にその部分が描かれる、ということなの
だろうか。これ一作だけ読んだ限りでは、どうにも作品として判断しづらい。
四兄弟のキャラ造形も、いまひとつ魅力に欠けるところがあって、キャラ読みも
できず。ミステリ的にもキャラ的にも中途半端な印象で、いまいち乗り切れなかった
って感じ。一応、長男はイケメン、語り手の次男は無難な性格、三男はクール、四男
は天真爛漫、みたいなざっくりした性格分けはあるんですけど・・・でも、それぞれ
描写不足のせいか、せっかくのキャラ分けがあまりうまく行っていないように
思えました。特に、次男と三男は一緒にいることも多いので、どっちのセリフか
ちょっと混乱しちゃうことが多かった。全員太がつく名前も似てるから＾＾；
どの事件でも焼き鳥が出て来るので、何か意味があるのかな？と勘ぐったりして
いたのだけど、最後まで読んでも特にその理由には言及されてなかったですね。
単なる偶然？それとも、そこがSISTER編に繋がっているのかな。SISTER編の主人公
が焼き鳥屋の三姉妹らしいので。裏があるのかも？？
とにかく、この作品だけで評価すると、いまいちだった、としか言いようがない。
ミステリとして読みどころがない訳ではないけれど、腑に落ちない部分も多くて、
あまりすっきりした読後感ではなかったので。とりあえす、SISTER編も読んで
みないと何ともかんとも。読んだらまた総評を述べたいと思います。
