ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

天野頌子/「陰陽屋へようこそ」/ポプラ社刊

天野頌子さんの「陰陽屋へようこそ」。

『陰陽屋はじめました』――東京北区王子ののんびりした商店街に現れた看板に目を留めたのは
最近家庭に不幸が続く沢崎みどり・瞬太親子。瞬太が止めるのも聞かずに、みどりは地下一階に
あるそのお店に藁をもすがる気持ちで足を踏み入れた。暗い店内から現れたのは、自称『陰陽師
安部祥明。祥明と面談するうちに、妖狐であることがバレてしまった瞬太は、なぜか祥明のおどし
でこの店でバイトをするはめに――インチキ美形陰陽師と妖狐少年コンビが繰り広げるほのぼの
コメディ。


美形の陰陽師と妖狐少年コンビが活躍するコメディ――なんとも惹かれる題材ではないですか。
以前本屋で平積みになっていて面白そうだなとチェックしていたところ、図書館で発見
したので読んでみました。

うーん、軽い。良くも悪くも。しかし、これは完全にラノベのノリですね。キャラ萌え小説
を狙っているのはわかるのですが、残念なことに肝心の祥明のキャラがいまひとつ魅力的
でなかった。美形で口が悪いという設定はいつもなら私好みど真ん中な筈なんですが・・・。
陰陽師にしては妖しさがないのがいけないのかも(インチキだから仕方ないとは云え)。
実家についての謎も引っ張った割にあまりにも現実的な問題だったので拍子抜け。もっと深刻な
家柄の問題とかがあるのかと思って期待していたのに。
妖狐少年の瞬太君は可愛らしかったですけど。瞬太君は例えると薬屋探偵に出てくるリベザル
少年ですかね。あちらの方がより屈託がない気がしますが。でも瞬太の天然ぶりも相当です(笑)。
彼が狐であることを隠しおおせていると思っているのが本人だけで、周りの人間がそれに
気付かないふりをしているというのが微笑ましい。瞬太たちが住んでいるのがお稲荷様の街
という設定が利いていると思いました。委員長・高坂のキャラも結構好き。最後まで敵
なのか味方なのかわからなかったですけど^^;

それぞれの話は正直ひねったものではなく、だいたい先が読めてしまうような展開でやや
物語性に乏しいかな、という感じはしましたが、あまり深く考えずにラノベノリで読むのが
正しいのかな。明るい人情ものコメディとして気軽に楽しめる作品です。

しかし、巻末の番外編の高坂少年の瞬太君日記、完全に瞬太君のストーカーです^^;
そうか、この作品、ボーイズラブも狙っていたのか!?と思っちゃいましたよ(笑)。
あ、それを云ったら祥明と瞬太なのか・・・?あ、いやいや、すいません。暴走でした^^;;