ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

あさのあつこ/「The MANZAI 1」/ピュアフル文庫刊

あさのあつこさんの「The MANZAI 1」。

中学二年生の秋、転校してきたばかりの瀬田歩は、突然クラスメートの秋本貴史から「付き合って
欲しい」と言われる。サッカー部の時期キャプテンと噂されるエースで、身体も大きい秋本からの
突然の告白に面食らい動揺する歩だったが、よくよく話を聞いてみると秋本が言いたかったのは
「漫才に付き合って欲しい」ということだった。漫才など自分に向いてないと即座に断る歩だったが、
人なつこい秋本のペースに乗せられいつの間にかなしくずし的にコンビを組むことになり、文化祭で
ロミオとジュリエット」の漫才版をやる羽目に――思春期の少年たちをみずみずしく描いた傑作
青春小説。


あさのさん初読みです。何年も前からお薦めはされていたのだけれど、なんとなく手が出せずに
今に至ってました。でも、これは図書館で見かけて漠然と面白そうだなぁと食指が動いて
いた作品。漫才にかける少年たちの青春物語なんて、設定聞いただけで面白そうじゃないですか。
お笑い番組はエンタと笑点くらいしか観る機会がないのだけど、大好きです。人を笑わせるのって、
ものすごいパワーが要りますよね。お笑いの人って、すごいなぁっていつも思います。

本書はいきなり少年が少年に告白する場面から始まります。えっ、これってBLもの!?と一瞬
目が点になりかけましたが、そうではありません。いきなり「漫才に付き合え」と言われて、
「はい、付き合います」なんて返す人がいる訳ないですよね。二人が漫才を始めるまでには
紆余曲折がありますが、なんとなく主人公が押し切られる形で漫才コンビが結成されます。
そして二人の初舞台は文化祭。二年生はの出し物は決まっていて「ロミオとジュリエット」の劇。
各クラスが工夫を凝らしてそのクラスなりの演目を演じて競い合うというもの。歩と秋本の
クラスは、漫才版「ロミオとジュリエット」をやることになります。始めは強引な秋本にも
漫才にも引き気味の歩でしたが、だんだん漫才をやることに意欲を湧かせて行きます。その
過程がとても面白い。対照的な二人のキャラが際立っていて、会話もテンポ良くて楽しかった。
歩は中学二年にしては重いものを抱えた子ですが、人を笑わせることを覚えることで、少し
づつ成長して行く。少年たちの描き方がとてもリアルで、清清しくて、ああ、青春だなぁって
思いました。先ほどBL小説ではないと書きましたが、秋本の歩への執着ぶりは弱冠というか
かなりBLテイスト入ってます(苦笑)。あさのさんもそれを狙って書いているのかなぁと
思われるような・・・。今後は歩・秋本・恵菜の三角関係がどう変化していくのかがポイント
になって行きそう。恵菜のキャラはちょっと鼻につくけど、好きな男の子が可愛らしい男の子に
執着してたらそりゃ切ないし嫉妬もするよなぁ。なんかこれって三浦しをんさんが好きそうな
作品だなぁと思ってしまった(笑)。

さすが青春小説の名手と呼ばれるだけありますね。予想を裏切らない楽しい作品でした。
恥を忍んで打ち明けますが、私、実はあさのさんの名前を初めて聞いた時(もう何年も前ですが)、
あの女優の浅野温子さんが小説を書き始めたと思い込んでいたのでした・・・アホ。

二人の漫才コンビが今後どう成長して行くのか、続きを読むのがとっても楽しみです^^