ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

柴田よしき/「流星さがし」/光文社刊

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柴田よしきさんの「流星さがし」。

新米弁護士・成瀬歌義は、京都の人権派弁護士の事務所から、東京の大手法律事務所に移籍して
きた。武者修行してこい、というわけだ。ところが、勝手の違うことばかり。熱意は空回りし、
依頼人には嫌われ、あげくには関西弁がよくない、とまで言われてしまう。しかも、持ち込まれる
相談も、一風変わったものばかりで…。青年弁護士の奮闘と成長がまぶしい、爽やかな傑作青春
ミステリー(あらすじ抜粋)。


あらすじ抜粋ですみません^^;ちょっと体調不良気味であらすじ考える余裕が^^;
個人的にとても好きだった『桜さがし』の続編と聞いて、読むのを楽しみにしていました。
でも、続編というよりは、恩師の浅間寺を慕う仲良し四人組のうちのひとり、歌義を主人公に
据えたスピンオフと云った方が正しいでしょう。歌義の彼女のまり恵もメールの文章のみの
登場だし、他の二人に到っては名前すら出てきませんでした^^;浅間寺先生の出番も表題作
『流星さがし』のみ、それも本当に冒頭の数ページだけなので、そこはちょっと肩すかしでした。
また、浅間寺先生を中心にした彼らの物語が読めると思って期待していたので・・・。
でも、新米弁護士として新たなスタートを切った歌義が、仕事に対して悩んだり迷ったりしながら、
依頼を通して少しづつ成長して行くところがちょっぴり切なく爽やかに描かれていて、なかなか
楽しめました。ミステリとしては弱いですが、じんわり心温まる連作集でした。

ただ、主人公の歌義がことあるごとに『これだから東京は』とか『東京の女は』とか、東京を
いちいち蔑む発言をするところにイライラっとしました。地元である京都を愛する気持ちは
理解できるし大事なことだと思うけど、自分で東京に行くと決めて選んだのだから、『郷に入っては
郷に従え』の精神で、もうちょっと柔軟になれよ、と言いたくなりました。地元では『歌やん』
だった呼び名が、東京では『歌さん』に変わったことに腹を立てるところも理解不能。新参者の
歌義のような存在をあだ名で呼んでもらえるってことは、親しみを感じてもらえている証拠。
なんで腹を立てる必要がある?関西人のプライドってよくわからん、と思いました(関西方面の方
すみません^^;)。
それに、遠距離恋愛でさびしいのはわかるけど、出会う女性にすぐふらっと行ってしまうところも
ちょっと・・・やっぱり、いつも会えないっていうのは弊害が出てきちゃうもんなんでしょうけど。
やっぱり、この先まり恵とは上手くいかなくなってしまうような気もするのですが・・・。でも、
今の時点では一応気になる女性が現れても、心の中にすぐまり恵の存在が浮かんで来るから、その
気持ちを忘れないで、まり恵への想いを貫き通して欲しいなぁと思います。

自分の失敗や欠点をすぐに認めて反省して、先輩や同僚弁護士の指摘を真摯に受け止める歌義の
素直なところは好感が持てました。こういう素直な人間は、失敗をいいように自分の糧にできる
から、成長も早いでしょうね。

どれもそれなりに面白かったのですが、『泥んこ泥んこ』で、結局依頼がどう決着がついたのかは
わからないままなので、ちょっと消化不良でした。でも、紗理奈の秘密を打ち明けられて、頼り
にされていると知った歌義が、素直にそれを『嬉しい』と感じるところに嬉しくなりました。
こういう重いものを抱えている人間を敬遠してしまう人もいますからね・・・。ちゃんとその重さ
ごと受け入れてあげる歌義は懐が深くて情に篤い人だと思う。
『離婚詐欺師』依頼人の妻がとった行動の謎は全く予想外でした。もっと後味の悪い結末に
なるのかと思っていたので、ラストにほっとしました。夫のとった行動も良かったですね。
『白い彼岸花の真相はちょっと強引に感じました。いくら酔っていたという前提があるとは
云え、白い○○と白い彼岸花を間違えるものだろうか・・・。まぁ、勝手に脳内変換されて
しまったのだろうとは思いますけど。白い彼岸花があるっていうのは知っていましたが、実際
見たことないです。彼岸花って、毒があるとかお墓に咲く花だとか、毒々しくてマイナスの
イメージしかないのですが、白い彼岸花だったら大分イメージ変わりますね。きれいかも。
見てみたいです。

今回は歌義のみに焦点が当てられましたが、そのうち他の三人の物語も書かれる日が来るので
しょうか。特に、アメリカにいるまり恵がどう成長しているのかは気になるので、いつか
書いて欲しいです。でも、浅間寺先生の出番はもう少し増やしてほしいなぁ(苦笑)。
のんびり書き継がれて欲しいシリーズです。