ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「2010 本格ミステリベスト10」/原書房刊

「2010 本格ミステリベスト10」。

米澤穂信辻真先インタビューほか、のべ130人による本格ミステリ・ランキング、人気作家
40人の「近況」など満載。ミステリ映画、本格推理ゲーム、ラノベにコミック、古典復刊情報に
評論関連まで網羅した1冊(紹介文抜粋)。


今年もとうとう師走に突入し、各種ランキング本も出揃ってきました。その中でも私が特に
注目しているのが本書、本格ミステリベスト」と宝島社発行のこのミステリーがすごい!
の二つ。まずは本格ミステリベストから発売されました。いつもランキング部分と中をちょろ
ちょろ立ち読みするだけで買ったことはなかったのですが、今年はなんと珍しくもランキングの
上位10作すべて既読という、青天の霹靂の如くの奇跡が起こりまして、記念として購入して
参りました(笑)。早川のミステリベスト本も確認したところ、上位10作品中9作品が既読。
なんとも、今年は成績が良くてびっくりな私です。今年は随分ミステリから離れた作品を読む
機会が多く、こうしたミステリランキングに入りそうなものはかなり読みこぼしがありそうだ
なぁと予想していたので。こうなると俄然気になるのはこのミスの方ですが。さて、どんな
ランキングになりますでしょうか。そちらも購入予定(のつもり)。


さて、ランキングをざざっと紹介。今回も本屋で確認したい方の為に直接書名を出すことは
控えますが、順位の部分をクリックすると記事に飛んでその作品がわかるようにしておきます。
気になる方はいちいち記事に飛んでみると各順位がどの作品なのか知ることができます(笑)。

まず、ゆきあやさんから1位と2位は意外な作品が入っているとの事前情報を受けておりましたが、
私もびっくり。1位に関しては、こんな作品を1位にしていいのか?と思わなくもないですが、
確かに本格ミステリを基準とした場合、これを挙げたくなる人が多いのは頷ける気がします。
今年出したもう一作の長編よりは私もこちらの方が相応しいかな、と思います。続編が出ること
自体意外でしたが、見事に違う切り口で前作の面白さと不愉快さを踏襲した怪作となっていると
思いました。2位は、出たこと自体がファンにとっては感涙ものの、シリーズ新作。やはり往年
からのファンの票を手堅く獲得したって感じでしょうか。本格としては個人的には首を傾げる
ところはあったのですが、私も長年新作を待ち続けたファンの一人として、この順位は素直に
嬉しいですね。3位は、発売がもう少し早ければ、もしかしたら1位にもなり得る作品だった
かもしれません。ホラー小説の体裁を取りながら、ラストではきっちり本格要素で楽しませて
くれて、個人的にも大満足の作品でした。私も自分の年末ランキングには間違いなくランクイン
させるつもり。4位は、私としてはそれほど良いと思った作品ではないのですが、年々力を
つけてきた作者の面目躍如といった作品なのかもしれません。私は11位にランクインした方が
面白かったですけどねぇ。5位は個人的にはもっと上位でもいいと思っている大好きなシリーズ
最新作。まぁ、この作者のランク入りは鉄板のようなものでしょう。作者の実力が十二分に発揮
された連作形式の長編だと思います。今年はもう一作出た作品がSFだったせいか、票割れがなかった
のは良かったですね。文春ベストでは1位を取りましたし、本ミスではまぁ、この辺りに落ち着く
のが妥当な所でしょうか。6位は与えるのが遅すぎた位の○○賞受賞作。シリーズ完結編にして、
ベテランの文章力と技巧力が盛り込まれた良作。ラストの不穏さに衝撃を受けましたが、シリーズ
の着地点には相応しい終わり方だったのではないかと思いました。7位は前作の高評価を考えると
当然ランクインされるだろうと予想していた作品。このミスの方ではもっと上位なのではないかと
予想していますが・・・。本格ミステリとして見ると弱さはある気はしますが、前作の面白さを
踏襲しつつも新しい切り口で独特の世界を広げたところはさすがだと思いました。8位はゆるい
作風と油断するとラストで痛い目に遭うユーモアミステリ。バカだけど本格。デビュー作から
追い続けて来たこの作家の時代がやっと来た・・・!?ばんざい。9位は同点で二作同時ランク
イン。便宜上、9位aと9位bで分けておきます。9位aの方は警察小説で終始するかと思いきや、
終盤はエンタメ小説にシフトして行きながら、きっちりミステリとしても構成されている力作。
ただ、私個人としてはミステリとしての出来はそれ程いいとは思わなかったのですが。今年
もう一作出た作品の方が私としては出来が良かったと思うのですが、どのランキングにも
引っかかっていなくて寂しい限り。9位bの方はちょっと意外なランクイン。面白く読んだ
けれど、ミステリとしての弱さが目立ち、瑕疵も多かったと思うので。でも、前半の非常に
イライラムカムカした読み心地の悪さを払拭したラストの展開で爽やかに読み終えられた所は
良かったです。


上記の記述でも明らかですが、11位までは既読でしたが、それ以降は読んでない作品がズラリ。
12~30位の中で未読が9作ありました。まぁ、あんまり食指が動かない作品が多いのです
けれど。14位はもっと上に行って欲しかったよねぇ、ゆきあやさん^^;やっぱり、同点
27位(ab)との票割れの結果でしょうか。まぁ4位と11位で票割れしたにも関わらずきっちり
ランクインさせた人もいますけど^^;
16位にまさかのあの作品がランクインでちょっと笑ってしまいました。まぁ、怪作なのは
間違いないですし、一読の価値はある作者の労作ですよね。


他には先述したように4位と11位で二作ランクインの人気作家のインタビューが載っていて、
これがなかなか興味深い内容となっていて面白かったです。11位の作品のタイトル秘話とか。
そして、毎回楽しみなのが京極さんと喜国さんの装丁大賞選考座談会のコーナー。会話が
いちいち面白いです。
『厭な小説』『汚いで賞』に輝いたのが笑えました(笑)。大森望のデカ文字のサブリミナル
効果発言にも爆笑。うう、実物見てみたいぞ。京極さんはいちいちこのコーナーをやめたがって
いる発言を繰り返してましたが、来年もちゃんとやってくださいね。


新作近況会(このミスでいうところの『隠し玉』コーナーね)にもちらほらと気になる情報が。
綾辻さんが新作館シリーズを書き始める・・・かも?の言葉にはとりあえず食いつきました(笑)。
大倉さんの白戸修シリーズも、霧舎さんの新本格もどきシリーズも、東川さんの館島の続編も(え!!)、
鳥飼さんの観察者シリーズも、米澤さんの古典部シリーズの長編も、本当に刊行されたら嬉しいなっ。


ちなみに、帰りに古本屋に行ったら文春ベストと早川ベストで読みこぼしていた『粘膜蜥蜴』
売っていたから思わず買っちゃいました。どうなのかなぁ、コレ。