ミステリ読書録

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東野圭吾/「カッコウの卵は誰のもの」/光文社刊

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東野圭吾さんの「カッコウの卵は誰のもの」。

アルペンスキーの元・オリンピック選手・緋田宏昌は、娘の風美が生まれてすぐに妻を亡くして
以来、男手一つで彼女を慈しみ、育てて来た。成長した娘は父親の指導のもと、才能ある
アルペンスキーの選手になった。しかし、風美の才能は宏昌の遺伝によるものではなかった。彼女
の出生にはある秘密があり、それを知って以来宏昌はずっと悩み続けて来た。風美は自分と妻の
子供ではなく、流産した妻が病院からさらってきた子供だったのだ――罪を隠して彼女を育てる
ことに罪悪感を覚える宏昌の前に、ある日、一人の人物から連絡が来る。その人物の名前を聞いた
瞬間、宏昌は来るべき時が来たと覚った。その人物こそ、風美の父親だったのだ――親子の絆と
遺伝をテーマに描いたヒューマンヒストリー。


東野さんの新刊。発売日に予約したにも関わらず、予約19番目でした。でも、蔵書の数が多い
のでそれほど待たずに回って来ました。人気のある作品って、読んだらすぐに返さなきゃ
いけないと思う人が多いから、回転も早いんじゃないかとか思ったりしてるんですけど、
そんなことないかな?^^;少なくとも、私はそう思うんだけど。これも、なるべく早く返して
来なきゃ。本当はもっと返却期限が短い本もあって、そっちを先に読むべきところなんだけど、
こっちを優先的に読みました。だって、私の後にあと430人も待ってる人がいるんですもの・・・!
430番目の人って、一体いつ回ってくるんですかね。蔵書12冊あっても、一年、二年は先
だよね、多分^^;
私はそこまで予約が多い本はもうすっぱり諦めて、何年後かの開架を待ちますけど。待とうって
気になるのは50人くらいまでかなぁ。いつまでも借りられない本を予約していると、予約の
上限にも影響あるしね(といっても、上限まで予約したことないんだけど^^;)。
っていうか、買えってか?^^;

おっと、前置きが長くなってしまった。すみません^^;
事前情報で『使命と魂のリミット』系と聞いていたのでどうかなぁと思ったのですが、出来
から云えばまぁ、おんなじくらい?リーダビリティがあるのでぐいぐい読まされちゃうの
だけど、ミステリとしては正直突出したものがあるとは言えなかった。真相までえらく遠回りして
引っ張った割には、意外性のない結末で拍子抜けしたことは否めません。事件のからくり自体は
それなりに良く出来ているとは思うけど、予想出来る範囲というか。そこから更にあっと
言わせるどんでん返しが欲しかったかなぁ。
ただ、本書の一番のポイントはミステリ部分ではなく、スポーツの才能が遺伝するのかという点と、
親子の絆という点の二つだと思うので、そこを読みどころとすればなかなか面白い作品だったと
思います。今回も様々な親子の形が出て来ます。その辺りは、親子の絆をテーマに描いた『赤い指』
を彷彿とさせるように感じました。メインとなるのは主人公の緋田宏昌・風美親子。宏昌は
元オリンピックのアルペンスキーヤーで、その技能を娘に引き継がせようと、幼い頃から彼女に
スキーを教え込みます。娘はその技能を吸収し、才能を開花させ、素晴らしいスキーヤーに成長
します。当然、周りからはさすが宏昌の遺伝子を受け継いだけあると見られます。でも、実は
風美の出生にはある秘密があり、二人は血の繋がった親子ではないのです。そして、宏昌の前に
風美の実の父親が現れ・・・という感じで物語は進んで行きます。風美の出生を知って、彼女に
真実を伝えて自分は彼女の前から姿を消すべきなのではと苦悩する宏昌の心の葛藤がリアルに
描かれ、なかなか読ませる作品になっていると思います。ただ、各キャラの書き込みが少し
薄いせいか、テーマの割にいまひとつ感動出来なかったなぁという感じでした。真相が明かされる
過程も驚く程あっけなくて、無理矢理収束させた感がなきにしもあらず・・・。ただ、まぁ、
表向きの真相のままだったら非常にもやもやしたものが残ったところでしたが、裏にある本当の
真相ならばいろんなことが腑に落ちるものだったので、読後はそれほど悪くなかったです。
何より、一番心配だった宏昌・風美親子の結末が苦いものでなくてほっとしました。ゆるい
ラストと云えばその通りなのですが、宏昌の自分の罪への誠実な態度に好感を持っていたので
(実際には、彼が罪を犯した訳ではないのだけれど)、最悪の結末で終わらなくて良かったです。
血が繋がっていなくても、宏昌が風美を想う気持ちは実の親そのもの、あるいはそれ以上だと
思えたから。秘密を胸に抱えたままこの先娘と接するのは辛いと思うけれど、二人にはずっと
信頼し合える親子でいて欲しいと思いました。

オリンピック開催中で、ちょうどテレビでもノルディック複合なんかをやっていたので、
とてもタイムリーに読めたな~と思いました。出版側もモロにオリンピックに合わせて出版
してますね。商戦、うまいなぁ、と、変なところに感心したりして。東野さんって、ほんと
サービス精神旺盛だよね。もともとスキー(スノボ)好きだから嬉々として書いてたんだろうな。
普通に面白かったです。でも、後に残るものはあんまりなかったかな^^;