ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

里見蘭「古書カフェすみれ屋と本のソムリエ」/東野圭吾「危険なビーナス」

今日は台風一過で久しぶりにいいお天気でしたね~。っていうか10月なのに暑かった^^;
今年の異常気象はまだまだ続くのでしょうか・・・。
野菜が高くて、ほんとに嫌になっちゃう。レタス300円とか!ありえない~(><)。


読了本は二冊です。


里見蘭「古書カフェすみれ屋と本のソムリエ」(だいわ文庫)
里見さんは、随分前に『ミリオンセラー・ガール』という書店ものの作品を読んだ
ことがあったのですが、今回も本にまつわるお話。ご本人がそっち関係のお仕事をしていた
とかなのかな~。
すみれ屋は、店主のすみれが開いた、カフェ兼古本屋。カフェ部分をすみれが担当し、
古書スペース部分はすみれが以前アルバイトしていたブックカフェ併設の新刊書店で書店員を
していた紙野君が担当している。
そんな紙野君には、特殊な能力がある。悩みや憂いを抱えたお客が来ると、その人に
相応しい1冊の本を選び出し、それを読ませることで、たちまち問題を解決させてしまう
のだ――。
本関係のミステリーが大好きなので、とっても楽しめました。何といっても、主人公
すみれが作る絶品料理が本当に美味しそう。かなりマニアックな料理方法なんかも
出て来るので、すみれは相当料理の勉強をしたのだろうなぁ。いろんな国に武者修行に
行っていそうだし。でも、コスト的に、こんな凝った料理を朝から晩まで一日中カフェで
出すって採算取れるのだろうか・・・と余計な心配をしてしまった^^;一応、すみれが
なんとか利益は出ているみたいなことを言っていた覚えがあるけれど・・・。
元カリスマ書店員の紙野君のキャラクターも魅力的でした。彼が選ぶ本は、どれも
その人に相応しいものばかりで、その慧眼っぷりに感心しました。すみれに対する
態度には、どう考えても愛があるように思えてならなかったのだけど・・・後半では、
すみれ自身も明らかに紙野君を意識していたし。今後、そのあたりは少しづつ進展が
ありそう。
ミステリ的には、日常の謎系なので、さほど瞠目すべきところはないというのが正直な
ところ。三話目の『百万円の本』なんて、健太君の身の上に起きていること、かなり
早い段階でわかってしまった。プールにガラスのかけらを入れた犯人もすぐわかったし。その
理由ももちろん。すみれさんがそのことに気がつかない方が不思議なくらいだった。
どっかで読んだことあるような内容だったからかなぁ。
まぁ、そこを差し引いても、十分魅力的な作品だったと思います。すみれさんの絶品
料理と、紙野君のバラエティに富んだおすすめ本で、心が癒されました。
こんな古書カフェがあったら絶対にか通っちゃうよ~。カフェでお茶しながら本
読んでるだけで幸せになれそう。でも、すみれ屋に行って、すみれさんの料理を食べずに
帰るのは無理そうだ~。しかし、毎回だとお金が続かない・・・って、一体何の心配
してるんだか(笑)。
美味しい食べものと本がお好きなら楽しめる作品じゃないかな。お薦めです。


東野圭吾「危険なビーナス」(講談社
東野さんの最新作。
・・・うーん・・・・。この、なんとも云えない『微妙』感は何だろうなぁ・・・。
いつも東野作品はリーダビリティが抜群で、あっという間に読めちゃうのだけど、
今回は前半なかなかノレなくて、時間がかかってしまった。ちょっと、プライベートで
いろいろあって、なかなか読む時間が取れなかったせいもあるのだけど。
一番の原因は、主人公とヒロインの二人に全く好感が持てなかったせいだと思う。
特に、主人公伯朗の、女にだらしない性格には辟易しました。美人だからって、
弟の奥さんに横恋慕して、彼女に近づく男がいたら嫉妬心むき出しにして不機嫌に
なったり。もう、いちいち彼の言動にムカムカイライラしました。しかも、彼の
一番の問題は、女にうつつを抜かすあまり、肝心の仕事がおろそかになっているところ。
私はペット飼ってないですけど、もし飼ってたとしたら、こんな無責任な医師のいる
動物病院には絶対行きたくない、と思いましたよ。女に会う為に予約の患者(動物)の
処置を助手に任せて自分は外出って。そりゃ、医師だって人だし、プライベートは
大事にした方がいいと思うけど、仕事時間にそれはダメでしょう。
ヒロインの楓も、いかにも東野ヒロインって感じで、何かあるぞー感半端なかった
ですね。敢えてバカっぽさを強調したしゃべり方が苦手で、どうしても好きになれなかった。
なんか、自由奔放な言動といい、典型的な東野版ファム・ファタルって感じの女性でしたね。
ただ、それは彼女なりの考えがあってしていたことだった訳ですけど。彼女に関しては、
いろんな想像を巡らせていたのだけど、まさかの正体でしたねぇ。今回、一番驚いたのは
そこだったかなぁ。実は、楓は整形外科手術を受けた明人なのでは、とかまで思って
たりしたんですよね(笑)。あとは、明人はすでに殺されていて、矢神家の財産を騙し取ろうとする
詐欺師とかさ。それなら、入籍してないのはおかしいよなぁとは思ったのだけど。
ただ、伯朗の弟明人の失踪の真相にはちょっと拍子抜け。いや、まぁ、読後感としては
悪くなかったからいいんだけど・・・。なんか、もうちょっとドラマティックな展開を
期待していたので、ちょっと肩透かしだったな。
後天性サヴァン症候群の方もね。テーマとしては面白かったけど、伯朗の父親が、なぜ
研究を辞めてしまったのかは謎のままだし、なんか、食い足りない感じで終わってしまった。
矢神家の遺産相続問題も、楓の登場によって、もうちょっとドロドロ展開が繰り広げられると
思っていたのだけれど、そこはあっさりスルーだったしな。ま、今後ドロドロしてくるの
かもしれないですけどね^^;でも、あの人が帰って来たから、上手く収める気はする
けどね。
気になったのは、伯朗の助手、陰山の意味深な服装の変化は何だったのかということ。
もしかして、楓に気がある伯朗の気を自分に向けたいが為、女っぽい服装をしだしたのかな?
と思っていたので、最後のあの態度でガクっと来ました。個人的には、楓よりは陰山の方が
数倍好印象だったので。ま、何考えてるかよくわかんない女性ではあるけど。確かに、
楓がダメだったから、すぐに陰山を食事に誘う伯朗の態度には怒りがこみ上げて来たけど。
あれで、陰山の伯朗に対する気持ちも変わってしまったのかなぁ。最後、彼女が池田医師に
話があるって言ったのは、何のことだったのかなー。彼女は最後までミステリアスなまま
だったな。
しかし、ラストのあの人の登場は蛇足だったんじゃないだろうか。伯朗にとってはハッピー
エンドなんだろうけども・・・。あんなもの飼ってどうするつもりなのやら。
フラクタル図形っていう言葉は初めて知りました。理系とか数学の分野が出て来るところは、
東野さんらしかったですね。伯朗の父親の絵、湯川先生や石神が見たらどう感じるのかな、と
そんなところばかり気になってしまった。
なんか、イマイチ感半端なかったなぁ。いろんな部分が消化不良のままのような。
ラスト、爽やかさを演出してはいるのですが、とってつけたような印象しかなく、
全体的にはもやもやした読後感でした。ちょっと黒べるよりの感想になっちゃった。
東野作品に対する愛ゆえとお許し下さいませ。
氏の作品はどうしてもハードルが高くなっちゃうからね^^;