ミステリ読書録

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東野圭吾/「あの頃の誰か」/光文社文庫刊

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東野圭吾さんの「あの頃の誰か」。

メッシー、アッシー、ミツグ君、長方形の箱のような携帯電話、クリスマスイブのホテル争奪戦。
あの頃、誰もが騒がしくも華やかな好景気に躍っていました。時が経ち、歳を取った今こそ振り
返ってみませんか。東野圭吾が多彩な技巧を駆使して描く、あなただったかもしれれない誰かの
物語。名作『秘密』の原型となった「さよなら『お父さん』」ほか全8篇収録(紹介文抜粋)。


東野さんの文庫新刊・・・といっても、収録作品はすべてかなり昔に書かれたもので、しかも
どのお話も「ワケあり」で他の短篇集に収録出来ずにお蔵入りしていたものばかりだそうで。
確かに、時代がかった古臭さを感じるものが多かった^^;巻末に著者ご本人による作品解説
があるのですが、冒頭のシャレードがいっぱい』なんて、ご本人自らが『もはや時代小説』
と解説されています(苦笑)。確かに、かつてのバブリーな時代が思いっきり反映された作品
で、今読むとかなり時代遅れな感が・・・^^;まぁ、それはそれで、その頃を懐かしく思い
返しながら読めばいい訳なんですけども。
ただまぁ、全部が『ワケあり物件』というだけあって、どれも感心出来るような完成度の作品は
なかったです。まぁ、面白くなくはないけど、別に取り立てて記憶に残るものもなかった、という
のが正直なところでしょうか。ちと辛口ですかね^^;でも、ご本人自らが出来に納得いかない
作品が多いのも確かですし、収録するのを躊躇ったものも多かったようですし(編集者説得
されてしぶしぶ、という流れだった模様)。
おそらく、目玉としては『秘密』の原型となる「さよなら『お父さん』」でしょうね。といっても、
これを収録するのもご本人は最初嫌がったようですが。実は私、途中まで『秘密』の原型って
知らずに読んでまして、あまりにも設定がソックリなので、もしや・・・と思って最後の
あとがき解説そこだけ読んで、やっと納得が行きました。原型となる短編があったとは全く
知らなかったです。個人的に『秘密』は全く好きな作品じゃない・・・というか、むしろ苦手な
作品なのですが、原型となる作品が読めたのは嬉しかったですね。



以下、各作品の感想を簡単に。

シャレードがいっぱい』
遺言の隠し場所は、誰もが気がついてしまえるのではないでしょうか。伏線あからさますぎ^^;;
でも、ダイイングメッセージ『A』の謎解きは面白かったです。でも、私、こんな○○(漢字二字)
知らなかったです。ヒロイン弥生の人物造形があんまりなのが、東野さんらしいというかなんと
いうか(苦笑)。
 
『レイコと玲子』
二重人格もの。まぁ、これといって、可もなく不可もなく。ラストの落とし方は好きですね。

『再生魔術の女』
これは後味悪いですね~^^;でも、サスペンス風で、女が峯和をじわじわと追い詰めて行く所が
緊迫感があって良かったです。ラストの救いのないオチも東野さんらしいですね。

『さよなら『お父さん』』
先述したように、『秘密』の原型となる作品。細かい設定は大分変えられていますが、大まかな
流れは一緒。ただ、ラストは『秘密』よりは大分さらっとしてますね。指輪のくだりがないだけで、
こうも作品の印象が変わるものなんですねぇ。長編バージョンより後味は悪くなかったです。

名探偵登場
なんとなく、オチは読めてしまったのですが。なんだか、ラストを読んでちょっぴり切ない気持ちに
なりました。でも、多分彼は幸せだったでしょうね。真実を知らないままだったのですから。

『女も虎も』
ショートショート。これも救いがないオチですねぇ。女の性悪な人物造形がやっぱり東野さんらしい。
あとがき解説で『虎に別の意味があることを知らないとオチの意味がわからない』と書いてあるの
ですが、虎の別の意味って何なんでしょうか?別にオチがわからなくはなかったんだけどな。

『眠りたい死にたくない』
これも要するに『女は怖い』に尽きる作品でしょうかね。東野さんって、ほんとに女性で痛い目に
遭ってるんですかね・・・。

『二十年目の約束』
これは確かに不満の残る出来でしょうねぇ・・・。ラストも中途半端なオチで、先の展開も読み
やすいですし。ミステリと云えるかどうかすら怪しいような・・・。晴美の父親から渡された
封筒に入っていたものが、もう少し衝撃的なものだったら良かったんですけど。かなり意味深な
書き方してたので、内容を知ってちょっと拍子抜けでした。そして、確かにタイトル、ひねり
なさすぎですね(苦笑)。



本屋で売ってるのを見て、実は文庫だったから買おうかちょっと迷ったのですが、結局短篇集
だからそれほど急いで読まなくてもいいか、と見送って図書館待ちしたという経緯があるのですが、
それで正解だったかも^^;
読みやすいしそれなりに面白かったですが、後々の記憶に残るような強烈な印象の作品はなかった
かなぁ。電車の中なんかで読むには良いかもしれません。

まぁ、東野ファンとしては、ひなまつり発売だという加賀シリーズ新刊に否が応でも期待は
高まる訳で。明日は早速図書館へ予約に走らねば!!