ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「蝦蟇倉市事件 2」/東京創元社刊

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「蝦蟇倉市事件 2」。

海と山に囲まれた、風光明媚な街、蝦蟇倉。この街ではなぜか年間平均十五件もの不可能犯罪が
起こるという。マンション、レストラン、港に神社、美術館。卒業間近の大学生、春休みを迎えた
高校生、会食中の社会人、休日を過ごす教師。舞台も人も選ばずに、事件はいつでも起こっている。
様々な不可思議に包まれた街・蝦蟇倉へようこそ!今注目の作家たちが、全員で作り上げた架空の
街を舞台に描く、超豪華競作アンソロジー第二弾(あらすじ抜粋)。


昨日ほとんどの記事を書き上げて一瞬の操作ミスで全部の文章が消えてしまった為、再度書き直し。
なんだか気力がなくてあらすじも抜粋です。すみません(でも実は昨日の記事でも抜粋だった^^;)。
思ったよりも待たずに回って来た蝦蟇倉市を舞台にしたミステリアンソロジー第二弾。世間的な
評価はこの2の方が高いようなのですが、個人的には前作の方が好みの作品が多かったです。
各作品のリンクは前作よりも多かったかなぁ?真知博士がやたらと出て来るからそういう印象を
受けただけかもしれないけれど^^;ただ、全体的にオチが被っている作品が多く、後の作品に
なるにつれて新鮮味が薄れて行ったような・・・。個々の作品は悪くはないのですが。なんとなく
どの作品も似た印象があって、大して時間が経たないうちに内容がごっちゃになって誰がどの
作品だったのかわからなくなってそうな気が・・・^^;
その中でも米澤さんの作品は少し毛色が変わっていて印象には残りそうなのですが、正直、
この作品集で書くべき作品だったのかは疑問。ある作品のスピンオフ的な内容ですが、これが
蝦蟇倉市である必然性は全く感じなかったので。しかも、元作品、米澤作品の中で多分一番か
二番に苦手な作品だったので、キャラへの懐かしさ等も感じられず。ファンにとっては感涙もの
なんでしょうが・・・どうも、乗り切れないまま終わってしまいました。もっと、蝦蟇倉市の
特色を生かした米澤作品が読みたかったなぁ。ミステリとしては巧いと思うのですけれど・・・。
これは完全に私個人の好みの問題なので、多くの人はこの作品をベスト1に挙げるでしょうね。



以下、各作品の感想。

北山猛邦『さくら炎上』
これは良かった。個人的には一番好みだったかも。あり得ない動機に唖然。でも、無邪気さと
身勝手さが同居する、この年代ならではの思考回路なのかもしれません。ラストの美しく燃える
桜と、犯人の黒い犯罪との対比が鮮やかです。

桜坂洋『毒入りローストビーフ事件』
これは一番ダメでした。だって、ミステリーとしての収拾が全くつかない丸投げ状態のラスト
なんですもの。あとは勝手に想像して下さいってオチって好きじゃないんです。途中の、三人の
容疑者たちによる、お互いを犯人と指摘する推理合戦の過程は面白かったのに。hのダイイング
メッセージも解明されないままだし。消化不良。

村崎友『密室の本-真知博士 五十番目の事件-』
これは結構好き。押し入れの中に入っていた本が消えた謎は思った通りの真相でしたが。真知
博士の推理のまま物語が終わっていたらがっかりする所でしたが、もう一捻りどんでん返しが
あったので溜飲が下がりました。

越谷オサム『観客席からの眺め』
これはミステリの出来云々の前に、生理的に受けつけない作品でした。主人公のしたことも、それを
やらせた黒幕自体にも嫌悪しか感じなかったです。気持ち悪い。いくつか腑に落ちない点もあるので、
ネタバレ表記で後述します。越谷さんは初読みですが、爽やかな青春小説を書かれるイメージだけが
あったので、こんなえげつない犯罪を書かれる方だと思いませんでした。

秋月涼介『消えた左腕事件』
なかなか巧いと思う。ただ、先に出て来た作品とオチが被ってしまってる分、新鮮味が感じられ
なかったのが残念。これも真知博士もの。真知博士って、そんなにキャラが強い訳でもないのに、
使い易いキャラなんですかねぇ。しかし、なぜみんな推理を間違させるのか(苦笑)。
左腕が消えた真相はなるほど!と思いました。

米澤穂信『ナイフを失われた思い出の中に』
先述したように、某作品のスピンオフ的作品。はっきりいって、登場人物はある人物以外覚えて
いなかったので、誰だっけ?状態でした^^;幼女殺害容疑をかけられた少年の手記から齟齬を
見つけだし、意外な真相が明かされて行く過程はさすがに巧いと思うのだけれど、何せ元作品に
いい思い出がない為、今ひとつ乗り切れないまま読了。なぜこの企画でこれを書いたのかは
やっぱり疑問に感じますね。












以下、ネタバレ。未読の方はご注意を!












全体的に、どの作品もほとんどが語り手(主人公)またはそれに准ずる登場人物が犯人というオチ
になっているのはいかがなものでしょう。前の人が書いた作品を読んでいないのかな?リンクを
作るなら、きちんと読まないと無理だと思うんだけど・・・ミステリとしての意外性を演出させ
ようとして主人公犯人オチにしているとしたら、完全に裏目に出てますね。

あと、越谷さんの作品についてですが、犯人が十王環命会に入信した理由がどうも弱い気が
するんですが。別に、わざわざ入りたくもない宗教にはまったフリをしなくても、犯行は十分
可能では?髪の毛集めるだけだったらいくらでも他にやりようがあるでしょうし。それに、
髪の毛を遺体の回りに散りばめた理由も腑に落ちない。何故髪の毛に拘った?そこが明かされて
いないので、なんだか消化不良でした。私の読み取り不足?




















うーん、私はやっぱり1の方がミステリとして面白かったかなぁ。やっぱり道尾さんのアレが
あったし。自分で推理に参加したって意味でも、二重に楽しめたからかも。とはいえ、
こういう企画ものとしては二冊通して十分面白かったですけどね。
3が出る予定はあるのかなぁ。1970年代の作家はまだまだいそうですけどねぇ。
これで打ち止めかしら。そういえば、1と2、二冊並べると表紙に何かの仕掛けがあるらしい
ですが、1は手元になくて並べられないのでわかりません^^;読んだ方、情報お待ちして
おります・・・。



以下、十兵衛さんへ私信。

二匹の猫ですが、本書の冒頭の地図で見たら明らかですね。やっぱり、ゆかり荘の一階外廊下
の黒と、そこから少し離れた芝生にいる白で合っているようです。HPの地図だと点にしか見え
なかったけれど、こちらだとはっきり耳としっぽが描かれているのがわかりますね。すっきり。