ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもこんばんは。
GW終わってからいきなり仕事が忙しいので、毎日へろへろになりながら
出勤しております。長い休みの後って、ほんと憂鬱になりますね・・・。
次の長期休暇は7月の終わり。それまで身体がもつかなぁ・・・(涙)。


読了本は三冊。GW中に読んだ本はすでに返却してしまったので、
またもうろ覚え状態で記事を書かなければ。

では、一冊づつ感想を。


早坂吝「虹の歯ブラシ 上木らいち発散」(講談社ノベルス
一作目に続けて読みました。こちらは短篇集。援助交際をしながら生計を
立てている高校生の上木らいち。彼女の部屋の洗面所には七色の歯ブラシが
常備されている。彼女自身と、決められた曜日に訪れる彼女の固定客のための
ものだ。固定客にはそれぞれに違う色があてがわれている。そんならいちは、
援交の傍らになぜか次々と殺人事件に巻き込まれるのだが、何を隠そう、
彼女はそんな事件をさらっと解決してしまう名探偵でもあったのだ――。
虹の七色の各色を冠したタイトルの短編が七作収められています。
前作に続き、かなり下ネタ的なシーンも多いのですが、本格に拘った
トリックには唸らされることもしばしば。下品な作風と正統派な本格
との見事な融合とでも言いましょうか。一作ごとに仕掛けの見せ方も
変えているので、バラエティに富んだ作風になっていて飽きずに読めました。
個人的に一番度肝を抜かれたのは、三作目の『青は海とマニキュアの色』
ですね。まぁ、これ、完全にバカミスだとは思いますけれど・・・。
というか、鳥飼○宇さんの某作品を思い出さずにはいられなかったです^^;
あっちよりも遥かに下品度は上だと思うけれど(苦笑)。
でも、完全にミスリードさせられてました。最後の真相読んで、最初の
方に戻って読み返してみたりしちゃいましたもん。実に巧妙な書き方を
しているのがわかって、唸らされてしまいました。こんなアホな真相で
唸らされるってのも、何か非情にしゃくに触る気もするんですけど(苦笑)。
かなり強引な真相も多いし、相変わらずツッコミ所は満載なのですが、
本格好きとしてはかなり楽しめた作品でした。
ただ、ラスト一篇の、らいちに関する考察のくだりは、正直蛇足だと
思いましたねぇ。結局、何が真実なのかもわからず仕舞いですし。
ここまでメタミステリっぽくしなくても。まぁ、要するに、らいちって
女の子は謎な存在なんだってことにしときたいのでしょうけれどね。
バカミス全開のように見えて、しっかり本格に拘った構成になっている
ところは非情に好みの作風。エロ描写はほどほどにして欲しいですが(^^;)。
前作よりも個人的には面白かったかも。
三作目も多いに期待したいところです。


西澤保彦「さよならは明日の約束」(光文社)
どうしました、西澤さん!?って感じの、非情に爽やかな青春ミステリー。
しかも、舞台となるのが、マニアックな本に囲まれた、渋いマスターの
営むブックカフェ。本が大好きな美少女高校生と、B級映画フリークのさえない
男子高校生二人が、過去に起きたいくつもの不可解な事件を、推理合戦によって
解き明かす連作短篇集。
これは非情に好みの一作でしたね。いってみれば、安楽椅子探偵ものとも云えるの
かもしれません。本人たちが関わっていない過去の事件の謎を、提示された
ヒントをもとに、会話の中で少しづつ解き明かして行き、最後には意外な
終着点が見えて来る、という。この推理過程が非情に面白くて、ぐいぐいと
読まされてしまいました。少々強引な論理展開であっても、ひとつひとつ
考証して行くことで、きちんと納得が行く結末になるんですよね。
最近の西澤さんの作品に良く出て来るのが、学生時代の同窓会名簿。今回も
やっぱり出て来ましたね。過去を思い出すのに、一番わかりやすいアイテム
だからなんですかね。ここ数年の氏の作品、同窓会名簿やら卒業アルバムやらが
きっかけで、事件を思い出す、というパターンが非情に多い気がしますね。
本好きの女子高校生、エミール(あくまでもアダ名であって、外国人ではない)や、
B級映画フリークで熟女好きの柚木崎、穏やかなブックカフェの店長・梶本など、
各キャラ造形や、それぞれの人間関係なども良かったですね。こんな素敵な
穴場のブックカフェがあったら、そりゃー、本好きとしては通いたくなっちゃい
ますよねぇ。チョコレート・ドーナッツが美味しそうだったなぁ。本を片手に、
濃いエスプレッソとドーナッツとは、最強の組み合わせじゃあないですか~
(本が汚れそうではあるけど^^;;)。
冒頭の一作が一番西澤さんらしいオチだったかなー。って書けばどんなオチか
西澤ファンだったらわかるんじゃないかと(笑)。出たー!って感じだった
んで(笑)。
でも、ラスト一篇の爽やかなオチにはびっくりした。まさか、西澤さんの
作品で、こういうオチが読めるとは・・・!エミールがまさかねぇ。逆なら
全然不思議じゃないんですけど。なんか、ニヤニヤしちゃいました。
ミステリとしても十分面白かったのですが、ラストは爽やかな青春小説
としても楽しめたところが良かったですね。
キャラ的にも気に入ったので、是非また続編書いて頂きたいなぁ。


村崎友「夕暮れ密室」(角川書店
横溝正史ミステリ大賞の落選作ですが、一部の作家に絶賛され、全面改稿
の末書籍化された作品だそうです。
綾辻さんや北村さんが絶賛したということですし、青春ミステリは大好きな
ジャンルなので気になって借りてみました。
・・・が、うーーーーん。正直、何度か挫折しかけてしまった。
というのも、同じ事件を複数の人の視点から描いた群像作品なので、
同じような場面が何度も何度も出て来るんですよ。もちろん、視点が違うので、
それぞれに見方も違う訳で、それなりに書かれた意味はわかるのだけれども。
でも、はっきり言って、非情にまだるっこしい。時系列も行ったり来たり
するからわかりづらいし。読んでも読んでも、なかなか話が先に進まないので、
イライラしました。
こういう形じゃなくて、もっと素直に誰かの視点だけで書いても良かった
んじゃないのかなぁ。回りくどすぎて、読んでて疲れてしまった。
犯人もわかりやすいし。あー、やっぱりこいつか、って感じでしたもん。
目次だけ見ても犯人の当たりはつけやすいんじゃないかなぁ。こういう
構成だったら、大抵・・・ねぇ。
明らかに一人おかしい言動してるしね。読んだ人、ほとんど犯人だけなら
当てられるんじゃないのかな?
あと、密室のトリックは、貴志祐介さんの某シリーズの一篇に似たようなのが
あったなーと思いました。
それと、被害者がみんなにモテすぎてて、ちょっとリアリティなかったな。
こんなに誰も彼もが好きになるような女の子いるかしら・・・。それと、
冒頭の人物紹介、被害者の欄の紹介文の中の、『名探偵』って言葉、
必要だったのかな??こういう紹介のされかたしてて、いきなりああいう
状態になったから、ちょっとガッカリしたというか。意表をつかれたことは
間違いないのだけど・・・。
いろいろ違和感がたくさんあったのだけど、一番気になったのは、警察の
捜査がずさん過ぎるというところ。事件が起きた後で、あんな風に生徒たちが
現場を調べることが出来るとは思えないし、凶器や血だまりを警察よりも先に
生徒が発見出来るってのもちょっと・・・??普通は学校自体を立入禁止に
すると思うんですが。
あと、冒頭で意味深に出て来た、栞による國武と川村絵里子の関係の推理が、
結局その後の伏線でも何でもなかったことに拍子抜けしました。そこがかなり
事件の重要な鍵を握る場面なのかなーと思っていたんで。結局意味なしだったとは。
犯人の動機が身勝手過ぎて、ムカムカしました。
ラストシーンの後味の悪さにも辟易。青春ミステリといっても、西澤さんのとは
読後感が120%違いましたね。青春ミステリってのはほろ苦いものだというのは
定石ではあるけど・・・こういう終わり方は好きじゃないなぁ。
正直ちょっと期待はずれだったのは否めないです。綾辻さん推薦の作品は
あんまり外れがないのになぁ。ちと残念。
結構な黒べる記事になってしまった^^;これから読まれる方には申し訳ない^^;
これで大賞はやっぱり厳しかったのではないでしょうかね。その時の受賞作が
何なのかわからないですけど・・・^^;