ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

万城目学/「偉大なる、しゅららぼん」/集英社刊

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高校入学をきっかけに、本家のある琵琶湖の東側に位置する石走に来た涼介。本家・日出家の跡継ぎ
として、お城の本丸御殿に住まう淡十郎の“ナチュラルボーン殿様”な言動にふりまわされる日々が
始まった。ある日、淡十郎は校長の娘に恋をするが、その直後、彼女は日出家のライバルで同様に
特殊な「力」をもつ棗家の長男・棗広海が好きだと分かる。恋に破れた淡十郎は棗広海ごと棗家を
この街から追い出すと宣言。両家の因縁と三角関係がからみあったとき、力で力を洗う戦いの幕が
上がった――!(あらすじ抜粋)


書店で見かけた時、あまりの意味不明なタイトルに、全く内容が想像出来ずにいたのですが、
読み終えると、実に内容に即したタイトルだということがわかり溜飲が下がりました。まずもって、
『しゅららぼん』って何なんだよ、って思いますよね、きっと誰もが(もちろん、当然のごとく
私も思いました)。職場で読んでたら、職場の人も『何なんだ、そのタイトルは!内容が全く
想像出来ないじゃないか!』と若干キレ気味に言ってましたしね(私も説明出来なかった・・・
その時点では。そもそも、キレる意味もよくわからんのだが)。
どういう意味なのかは、ネタバレになるので敢えて書きませんけども。マキメさんの造語なのは
間違いないので、わからなくても何ら問題ありません(笑)。滋賀の方言なのかなーとか最初は
思ったんですけどね。全然違います。さて、真相やいかに。気になる方は読んで確かめましょう(笑)。

と、タイトルネタはそれ位にして。内容は、もう、万城目さんらしい、相変わらずの荒唐無稽な
設定のオンパレード。いろいろツッコミたいところは多々あったりするんですが、面白かったから
まぁ、いいや(笑)。プリンセス・トヨトミの時は歴史薀蓄に躓いてイマイチ楽しみ切れな
かった所があったんですが、今回は徹底したエンターテイメント作と言って差し支えない内容
だったので、読みやすかったのも良かった。まぁ、琵琶湖の歴史が絡んだりもしてるのですが、
その辺もほとんどさらっと流されちゃってる感じだし(苦笑)。
いろんな要素がてんこ盛りに入っていて、話はどんどん大きくなって行くし、一体最後どうやって
収拾つけるのかなぁと思ったのですが、まぁ、落ち着く所に落ち着いたかな、という感じでした。
若干呆気無い感じもしたのですが、最悪の結末を覆すには、こうするよりなかったんだろうな、と
思いました。しゅららぼん効果で琵琶湖がエライことになって、男二人がそこを白馬で駆け抜ける
シーン(こう書くとさっぱり意味不明ですね・・・気になる方はどうぞお読み下さい・・・って
もういい?^^;)は映像化したら迫力あるだろうな~と思いました。まぁ、下手すると超B級の
セコイ映像に成り下がる可能性もありますけど^^;でも、内容的にはわかりやすい話だし、
登場人物のキャラ設定も個性的ではっきりしてるからキャスティングしやすそうだし、少なくとも、
トヨトミよりは映像化向きな感じがしますけどね。これも映画とかになるのかなー。

相変わらず、キャラ造形が抜群に良いですね。それぞれに味わいのあるキャラばかりで、会話文
読んでるだけでも楽しかったです。涼介・棗・淡十郎のメインキャラもいいですが、パタパタと
走りまわるパタ子さんや、淡十郎の姉にして、引きこもりで『竜と話せる女』のグレート清子の
キャラも強烈でした。

終盤で明かされる黒幕に関しては、全くノーマークの存在だったのでかなり驚かされました。
でも、きちんとそこに至る伏線が張られているんですよね。良く出来たミステリーと言っても
差し支えない位で、感心しました。『ホルモー六景』の時も感じたんですけど、万城目さんって
ミステリー小説書いても絶対面白いと思う。こてこてのミステリーに挑戦してくれないかなぁ。

荒唐無稽な話なのは間違いないのですが、合間合間に友情やら恋やら青春やら冒険やら、いろんな
エンタメ要素がしっかり挟まれているので、トヨトミ並にページ数も多いのですが、全く飽きずに
楽しく読み通すことが出来ました。後半は面白くてほぼ一気読み。特に、第六章から終盤に
かけての盛り上げ方が素晴らしく、ぐいぐい惹きつけられました。黒幕の正体が意外に小物だった
のはちょっと拍子抜けしたところもあったんですけどね(意外性はバッチリだったんですが^^;)。
でも、その人物の結末も悪いものにならなくてほっとしました。動機を知って、その人物が哀れに
思えて仕方なかったので・・・。

ある人物の犠牲のもとで事態の収拾がついたところはかなりショックな展開だったのですが、
そこは万城目さん。エピローグで見事に挽回してくれて、爽快な気持ちで読み終えられました。
今度はどんな名前なのかな。これで、入って来た人物が実は違う人だったってオチだったら
ずっこけるでしょうねぇ・・・(苦笑)。せめて入って来たところまで書いてよぉぉぉ~~!と
叫びたくなったんですけどね(笑)。こんな所で終わらせるとは、作者もひとが悪いよね(苦笑)。

でも、一番残念だったのは、表紙に淡十郎が欠けてることかも(苦笑)。淡十郎、途中まで
変なヤツとしか思わなかったんだけど、最後はいい活躍して好感度アップでしたからねぇ。
三人揃った表紙にして欲しかったな。