ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

相沢沙呼/「ロートケプシェン、こっちにおいで」/東京創元社刊

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相沢沙呼さんの「ロートケプシェン、こっちにおいで」。

酉乃と心が通じ合ったはずのクリスマスのあの日、しかし彼女の連絡先を聞き忘れたまま冬休みに
突入してしまった。あの出来事は夢だったのではないかと、悶々と過ごす僕に、織田さんから
カラオケの誘いが。カラオケの後の食事の際に、急に泣きながら飛び出していってしまった織田
さんにいったい何が? 僕は酉乃に力を借りるべく『サンドリヨン』へと向かう……。バレンタイン
での事件をはじめ、学園内外で巻き起こる謎をたおやかに解く、マジシャン・酉乃初の事件簿
(紹介文抜粋)。


個人的にとても気に入っていた午前零時のサンドリヨンの続編。もぉ~~、今回もとっても
キュートで甘々でニヤニヤしながら読んじゃいました。三作目の『恋のおまじないのチンク・ア・
チンク』だけアンソロジーで既読で、その時は短編として読んでましたが、今回はそれぞれの作品
の合間に挿入されるインターバルが最後の一作に繋がるような連作短編形式になっているので、
一作の長編としても読めるように構成されてるところが良かったですね。ラストではちょっとした
騙しのテクニックも使われていて、ヤラレタ感もありましたし。東京創元社らしい作品集になって
いると思いました。

なんといっても、主人公の須川君の初への恋心に今回もドキドキワクワク。もー、ほんとに、
じれったいやら、いじらしいやら、読んでるこっちはもどかしいこと、もどかしいこと。ツンデレ
美少女の初ちゃんがまた思わせぶりな態度ばっかり取るしね。でも、アンソロジーでも思ったけど、
バレンタインのアレは、完全に須川君がいけないよね。なんでそれ、受け取っちゃうかなぁ、と
呆れました(しかも初の目の前で!!)。挙句に○○○チョコ(爆)。でも、そんなチョコでも
律儀に全部完食してあげちゃう須川君って、ほんといい子だと思うよ・・・。女心はわかってない
けどね(苦笑)。

一つ一つの謎解きは今回もさほどミステリ度は高くないです。ただ、限られた須川君の情報だけで
マジックネタを絡めつつ鮮やかに謎解きをしちゃう初ちゃんの安楽椅子探偵っぷりは今回も素敵
でした。みんなに、照れながらマジックを披露してはにかむ初ちゃんに萌え・・・これは、須川
でなくても萌えるだろう・・・(オヤジ目線)。
あと、先述したように、最後にインターバルで出て来る人物の事件が解決されるところは、しっかり
ミステリ的な驚きもあるので、前作よりもトータルでミステリとしての完成度は高くなっていると
思います。
ただ、残念だったのは、文章は基本的には好みなのですが、たまに説明部分でわかりにくいところが
あって、状況がよく飲み込めないところがあった点。その辺り、もう少しスマートに説明が出来る
ようになると、もっと良くなるんじゃないかな(なんで偉そう?^^;;)。

今回、根底にあるテーマは、女同士の友情。中高生の頃って、ほんとに、ほんのささいなきっかけや
行き違いなんかで、仲間からハブかれて孤立しちゃったりする。一人になるのが怖くて、言いたい
ことを我慢したり、笑顔でごまかしたり。思春期の人間関係って、本当に狭くて濃密な分、儚い。
初のような存在は、普通だったらいじめの対象になるのかもしれないけれど、彼女の場合は
そういうのを超越しちゃう雰囲気があるんでしょうね。それでも、やっぱり一人は誰だって寂しい。
友達を作るのって難しいけど、初は今回、ちょっとだけ前進出来たようで嬉しかったです。孤高の
初ちゃんもかっこいいけど、やっぱり友達に囲まれてマジックを披露する時の恥じらいながらも
嬉しそうな初ちゃんは、高校生らしい初々しさがあって可愛いらしかったもの。それを、これまた
嬉しそうに横から見守っている須川君も微笑ましかったけれどね。

エピローグのラスト一行に思わず赤面。きゃー(><)。二人の距離もちょっぴり前進、かな。
今回もニヤニヤしながら読んじゃいました。面白かったー。このシリーズ、大好きだー。
ちなみに、タイトルはある童話の主人公のこと。このシリーズのタイトルは西洋童話で繋がって
行くのかしら。次は何が来るかな。ラプンツェル辺りか。
続きも楽しみ、楽しみ^^