ミステリ読書録

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深緑野分/「分かれ道ノストラダムス」/双葉社刊

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深緑野分さんの「分かれ道ノストラダムス」。

人類は滅亡する――。ノストラダムスの大予言が取り沙汰される99年夏、高校生のあさぎと
八女は、あさぎの初恋相手が死なずに済んだ可能性について探り始める。
町では終末思想に影響された新興宗教団体の信者が謎の死を遂げる。
果たして、あさぎたちが呑みこまれてゆく、ある邪悪な計略とは?
展開予測不能の青春ミステリー。


『戦場のコックたち』でブレイクした深緑さんの新作。『戦場~』は恥ずかしながら
一話を読んだ辺りで挫折してしまいましたが、他の作品も評判が良いようなので、
新作をとりあえず予約してみた次第。
今回はちゃんと最後まで読み通せました(笑)。といっても、作風が全く違って、
本書は高校生の青春ミステリなので、普通に読み進められましたけども。
(前作の場合は、戦場描写がどうにも苦手で、途中でリタイアしちゃったんですよね^^;)。
ただ、うーん、期待していた割に、さほどパンチのある作品ではなかったかなぁ。
青春小説としてはアリだと思いますけども、ミステリ的な驚きがほとんどなかった
ので・・・そこを狙った作品じゃないのかもしれないですけど、やっぱりこの作者
さんには、ミステリとしての面白さを期待してしまっていたので(『戦場~』は
そこを評価されたみたいですから)。ちょっと肩透かしだったなぁ。
舞台はノストラダムスの大予言で世間が騒然となっていた1999年。もうすぐ
地球は滅亡すると言われている夏。主人公のあさぎは、二年前に亡くなった
友人の基が遺した四冊の日記を譲り受ける。そこには、彼が当時の自分の行動を
事細かに書き出し、その時の自分の選択が正しかったかどうか検証する記述が
あった。そうすることで、彼はあり得たかもしれない平行世界を探そうとしていたのだ。
それを知って、あさぎは、基が死ななかったかもしれない平行世界もあったのではないかと
考え、その可能性をクラスメイトの八女と共に探り始めた。一方、町ではノストラダムス
予言を信じる新興宗教団体が立ち上がり、その過激派のリーダーが自殺しているのが
見つかった。そのリーダーの結城は、基のかかりつけ医と同じ苗字だった。基の死には
結城が関わっていたのかもしれない――。
そもそも、亡くなった友人が『死ななかったかもしれないルート』を探ることに、
何か利点があるのだろうか?とそこが疑問だった。結局彼の死は覆られない訳だし、
あんまり意味のない行動だよなぁ、と。
死ななかったかもしれないルートが見つかったとしても、どっちみち後悔しか
残らないのに。その行動自体に疑問を覚えてしまったので、彼女たちの言動に
いまいち入り込めなかった。
あと、明らかに怪しい桐の言葉を、あさぎがあそこまであっさり信じちゃうのもちょっと
理解出来なかった。どんだけ鈍いんだ^^;なんでそこで車に乗っちゃうの!?と呆然。
やめなよー!と叫びたくなりました^^;その桐の言動には、ただただ嫌悪と怒りしか覚え
なかったですね。あさぎにしようとしていたことは、人として終わってると思いました。
唯一良かったのは、あさぎと共に基の死の検証をしてくれることになる八女君のキャラと、
事件のその後の二人の関係の部分かな。特に、終盤の八女君のかっこよさといったら!
桐と対決する場面では、八女君の冷静さに胸がきゅんきゅんしちゃいました(笑)。
八女君の家庭環境は複雑だけど、こういう家族の形もありなんじゃないかな、と
思いました。カオルさんもマリさんも素敵な人たちだし、ニワトコ荘での生活も
楽しそう。何より、二人が育てたことで、八女君があんなに素敵に成長したのだからね。
中盤ちょっとダラダラしていて中だるみしてる感もありましたが、ボーイミーツガール
の青春小説として読む分には良い作品なのかも。ミステリを期待すると、多分
肩透かしになると思われるのであしからず。