ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小島達矢「シュレーダーの階段」/瀬尾まいこ「春、戻る」

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どうも、こんばんはー。みなさま、三連休はいかがお過ごしでしたでしょうか。
私は木・金と連休だったので、西伊豆堂ヶ島まで一泊旅行に出かけておりました。
木曜日の天気は雨風で最悪でしたが、金曜日は快晴。ただし、風が強かった為、
今回の旅で最も楽しみにしていた堂ヶ島洞窟巡りの遊覧船が航行されず・・・
大ショックでした(ToT)。
まぁ、お料理も温泉も堪能してきたので、それでよしとするしかないか。


今回の読了本は二冊。全く正反対の作品となりました。
二冊なので、記事タイトルに書名を載せておきました。

では、一冊づつご紹介。


若干ラストのネタバレあります。未読の方はご注意下さい。


小島達矢シュレーダーの階段」(双葉社
『ベンハムの独楽』の小島さん最新作。『ベンハム~』は個人的にかなり微妙な評価
だったんですが、なんとなく気になる作品ではあったので(最初と最後の繋げ方は面白かった)、
その後もゆるく追いかけている作家さんです(読んでない作品もあるけど^^;)。
二種類の視点が交互に配置され、物語が進んで行く形式。片方は、突然誘拐され、不可解な
生き残りゲームに参加させられる女性。もう片方は、同級生のいじめに加担させられ、
いじめの仲間たちと共に、いじめられっ子の姉の部屋に侵入し、よからぬ企みの片棒を担がされる
中学生。全く関係なさそうなふたつの出来事が、ラストでひとつに繋がり、衝撃の展開が
待ち受けている・・・というのが大筋。
ただ、衝撃のラストってほどの衝撃は・・・正直なかったかなぁ。というか、確かに
途中で出て来た伏線がきちんと効いていて、ミステリ的な手法としては面白いとは思うの
だけど、何かいろいろ設定に無理がありすぎて、素直に感心出来なかった。殺人ゲームに
参加させられた理由も、それが明かされた後の展開も、どうもリアリティに欠けていて、
なんだかなーって感じでした。それに、一番ガッカリしたのは、あれだけ酷いいじめを
していたいじめっ子たちの態度の豹変っぷり。いじめをする人間がそんな簡単に改心
するなんて、それこそあり得ない。ラストの展開にはかなり興ざめって感じでした。
途中までは結構面白く読んでたんですけどもね。特に、誘拐された女性が命をかけて
与えられたゲームに挑戦するくだりは面白かったです。ゲームの攻略は私にはいまいち
説明されてもよくわからないものが多かったけど^^;
ちなみに、タイトルの『シュレーダーの階段』って一体何のことなのか、最後まで読んでも
よくわからなかったのですが、ネット検索してたら、奥行き(凸凹)の反転現象を表した階段
の図のことらしいです。まぁ、つまりは目の錯覚ですね。エッシャーのだまし絵みたいなやつ
かな。右から見る時と左から見る時とでは階段の凹凸が違って見える、というね。

ちなみに、こういうやつ。
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/b/belarbre820/20010101/20010101021330.jpg

二つの事象が裏表の出来事として出て来るからってことなんだろうな。しかし、そうならそうと、
冒頭に図と解説くらい載せるべきだと思うけどなぁ。その辺りは、ちと不親切だな、と思い
ました(って、これって常識?もしかして、私が無知なだけだったのか!?^^;)。
なんか、今回も非常に微妙な評価になってしまった。っていうか、ミステリとして成立
させたかったのであれば、もう少し細部に練り込みがないと・・・。他のジャンルの作家が
ちょっとミステリに挑戦してみたって感じの印象でした。
うむむ。久しぶりに黒べる登場しちゃったかも^^;


瀬尾まいこ「春、戻る」(集英社
こちらは一転、春に読むにはふさわしい、ほんわか心温まる作品。瀬尾さんらしい良作です。
主人公はもうすぐ結婚を控えた36歳のさくら。結婚が決まり仕事を辞めて料理教室に通う
さくらの前に、彼女の兄だという見知らぬ男が現れます。けれども、彼はどこからどう見ても
さくらよりはるかに若い二十代の青年。見に覚えのない青年に戸惑うさくらを前に、青年は彼女の
結婚に関して次々と口出しをしてくるように。一体彼は何者なのか、なぜさくらの前に
現れたのか?
さくらの前に現れた見知らぬ青年。彼の正体が最後までわからないので、もしかしてSF的な
展開になるのかなーとか途中思ったりもしてたんですが、全く予想とはかけ離れていました。
予想通りだったら嫌だなぁ、と思っていたので、外れてよかったです(だって、結婚した途端に
さくらの前からお兄さんがいなくなっちゃったりしたら悲しいもの)。
ふーむ。こういうことだったのかー、と目からウロコの気持ちがしました。ただ、いくら
辛い出来事だったとしても、そんな簡単に忘れてしまえるものなのかなぁ、とは思いましたが。
考えまい、考えまいとすると、人間って本能が働くものなんですかねぇ。
お兄さんのことを思い出せなかった理由は納得出来ましたけどね(だって姿がかなり違っている
だろうからね)。12歳も年下なのに兄だと言い張った理由には、さすがにちょっと強引過ぎないか?
とツッコミたくなりましたが、まぁ、お兄さんらしいとも言えるかな(苦笑)。

さくらの婚約者である山田さんの朴訥なキャラが好きでした。もちろん、さくらへの思いやりに
溢れたお兄さんのキャラも大好きでした。最初はちょっと鬱陶しいかな、と思いましたけど(苦笑)。
山田さんと三人で一品づつご飯を作るシーンが好きだったな。三人で遊園地に行くシーンも。
さくらが、最後にお兄さんに山田さんへの素直な気持ちを打ち明けるシーンも良かった。流されて
結婚を決めた彼女だけど、きっと幸せになれますね。こんな素敵な旦那さんと、どこまでも
優しくてさくらを誰よりも大事に思ってくれるお兄さんがついているのだもの。結婚しても、
三人の関係が続くといいなぁ。山田さんの作る和菓子とお兄さんの作るお料理はみんな美味しそう
でした。
優しい読後感で、気持よく読み終えられました。やっぱり、瀬尾さんの作品はいいなぁ。
人間にとって一番大事なものを教えてくれる気がする。心が洗われるんだよね。




なんだか評価が正反対の二作になっちゃったな^^;
黒べるが言いたい放題言っているみたいだけど、あまり気にしないで下さいましね。