ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもみなさま、こんばんは。
ようやく春めいて来ましたね~。今年の冬は本当に寒かった(><)。
日差しの温かさにほっとする今日このごろです。
桜の開花ももうすぐですね。


さて、今回の読了本は三冊。今回は全くタイプの違う三冊になりました。
ではでは、一冊づつご紹介~。


柚木麻子「その手をにぎりたい」(小学館
最近人気絶好調の柚木さん最新作。バブル期まっただ中のOL青子が主人公。
東京の家具メーカーで三年間事務OLをしていた地方出身の青子は、事情があって故郷に
帰ることに。東京最後ということで、上司に連れられて、銀座の高級鮨屋にやって来ます。
そこで青子は、若き職人一ノ瀬の握る鮨のあまりの旨さに衝撃を受け、この鮨を
再び、今度は自分で稼いだお金で食べたいが為に、転職を決意。不動産会社に再就職を
決め、再び一ノ瀬のお店へ――。底辺OLから少しづつ職歴を上げ、お店に通う頻度を
上げて行く青子。それと同時に、一ノ瀬への想いも募って行く・・・恋と仕事とお鮨に
生きる青子の10年間を時系列順に綴った連作短篇小説です。
好きな人が握る鮨が食べたいが為に転職して、稼いだお金をほとんど費やし、その喜びを
味わう為だけに仕事をする。本人にとってはそれが幸せなんでしょうが、私には到底出来ない
生き方だなぁ、と思いました。でも、それもひとつの生き方としてはいいのかな。
青子の生き方は、バブルそのものですね。しゃぼん玉のようにキラキラしているけれど、
はじけた後には何も残らない。お鮨の美味しさが口に入れた途端に溶けてなくなって
しまうのと同じ。それでも、そのとろけるような夢の一瞬を追い求めることをやめられない。
20代、若さも才能も兼ね備えた青子は、周りからちやほやされ、本人も自信に満ちあふれて
いましたが、30代を超えると次第に周りからの目が厳しくなって行きます。必死になって通い
つめた鮨職人一ノ瀬との関係にも変化が訪れ、青子の人生には暗雲が立ち込め始める。
バブル期の人間の浮き沈みの様子が非常にリアルに描かれていると思います。
私は生のお魚があまり得意じゃなくて、お寿司もあまり好きではないんですが、それでも、
本書に出て来るお鮨は美味しそうだなぁと思いました。寿司好きの人にはたまらないのでは
ないかなぁ。柚木さん、食べ物描写は相変わらずお上手ですよね。
一ノ瀬が○○してしまっただけに、青子との恋愛の結末は予想していたのですが、ラストシーン
までドキドキさせられましたね~。お互い、もっと早く素直になっていたらその後の展開は全く
違っていたのかな。でも、結局結末は同じになるような気もするけれど。青子がその後の人生をどう
生きるのか、それも興味がありますね。
柚木さんの描く世界は本当にリアルですね。とても面白く読みました。


似鳥鶏「パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から」(幻冬舎文庫
評判のよろしい(らしい)似鳥さんの文庫書きおろし作品。喫茶店で働く兄弟が主人公。
語り手は兄の季(みのる)で、推理担当は元警察官で美形の弟・智(さとる)。優秀な警官
だった智を呼び戻す為、県警から智の元には度々県警秘書室の直ちゃんこと直井楓巡査が
やって来る。直ちゃんは、智に解決して欲しいと度々未解決事件の謎を持ち込んで来る。
弟を連れ戻されたくない季はしぶしぶ事件に協力することになり、兄の困るところを
見たくない智もやはり、事件に首を突っ込まざるをえなくなるのだった・・・。
兄弟それぞれのキャラがいいですね。私は人のいいお兄ちゃんがお気に入り。ツッコミ所も
結構あるけれど、ミステリとしてはなかなか秀逸。それぞれに、智の謎解きの後の優しい結末が
良かったです。ただ、ラストの一作だけは、タイトルに反して少し苦い解決でした。タイトル
みて、全然違う結末を予想していたので、あの展開には驚かされました。似鳥さんらしい、
毒全開の展開に唖然。智が可哀想でした。もっと明るい、甘い結末になると思ったのになぁ。
それにしても、各作品に登場する智特製のお菓子が美味しそうだった~~!こんな素敵な
兄弟がいて、美味しいお菓子とお茶が出て来る喫茶店なら絶対通うって!!私も常連に
なりたい~~(><)。
しかし、ひとつ気になったのは、直ちゃんの「~~っス」って言葉遣い。県警秘書室の
女性の言葉遣いとは思えないのですが・・・。なんか、こういう言葉使う人嫌いなんですよね。
直ちゃんのキャラ自体は嫌いじゃなかったので、ちょっと残念でした。直ちゃんと季の
関係も、もうちょっと変化があったら良かったなー。続編があるなら、是非その辺りに
進展が欲しいところです。


恩田陸「雪月花黙示録」(角川書店
恩田さん最新作。恩田さんらしいところと、らしくないところがごちゃまぜになったような
話でしたねぇ。っていうか、設定とかキャラとか、モロにマンガかアニメ。私の中では、
完全にCLAMPの絵で映像化されてました(笑)。ただし、及川ミッチーだけは当然のことながら、
及川光博さまを思い浮かべましたことよ。ほほほ。最後の奥付の書き方といい、ほんとに
アニメ化前提の話なのかな??と思ったりもしたんですが。謎。
あらすじを引用しますと、
和文化を信奉する「ミヤコ民」と物質文明に傾倒する「帝国主義者」に二分された近未来の
日本。美青年剣士の紫風が生徒会長を務めるミヤコに謎の飛行物体が飛来した。それは第三の
勢力「伝道者」の宣戦布告だった!
だそうです。意味不明ですねぇ(苦笑)。これは、読まないと絶対訳わかんないと思うな。うん。
学園SFファンタジーですかね。いろんな要素混ぜ混ぜ。ラストで全然収拾ついてない辺りも恩田さん
らしい(苦笑)。いいの、いいの。なぜなら恩田さんだから!(ファンならこの意味わかる筈)
蘇芳、萌黄、紫風の関係が良かったですね。三人ともカッコイイ。しかし、萌黄と紫風は
とても高校生とは思えなかったけれども(苦笑)。及川道博のキャラはやっぱり及川ミッチー
がモデルだよね。誰が読んでもそうとしか思えないよね!?
各章のタイトルも素敵でした。ふりがなないと絶対読めないけど。漢文かとおもったよ・・・。
少女マンガ好きならはまる話じゃないかなー。あまりにも荒唐無稽すぎて、ついていけない
部分もありましたけどね・・・。多分、恩田さん、すっごく楽しんで書いてたんじゃないかな。
ラスト部分は賛否両論あるみたいです。っていうか、否定派が多いのかな。私もちょっと唐突に
感じたし、作り過ぎたこういう演出はあんまり好きじゃない。まぁ、ご愛嬌、みたいな感じ
なんだろうけれど。





とまぁ、ジャンルばらばら、バラエティに富んだ三作でございました。それぞれに面白かった
です。