ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもどうも。毎日暑いですねぇ。はじめ、今年の夏は冷夏だって言われてません
でしたっけ・・・しーん。
ワタクシは現在夏休み真っ最中でして、のんびり過ごしております。
明日からは三泊四日で石垣島に行く予定でございます。
なんとか台風来なさそうでほっ・・・。この間の巨大台風の経験で、戦々恐々と
していたのですけれども。
気が向いたら旅行記なんかも書くかもしれませんが、どうなるやら。


今回はさらりと読める作品が三冊続きました。中には二時間で読了したものも・・・。


では、一冊づつ感想を。


千早茜「男ともだち」(文藝春秋
タイトル通りといえば、タイトル通りな作品。主人公の神名は京都在住のイラストレーター。
同棲している恋人がいるのに、時々医師の遊び相手と逢引きしたりするような、ちょっと
倫理感に欠けるような女性。そんな神名が、ある日学生時代の男ともだちであるハセオと
再会します。神名が苦しい時に励まして支えてくれるハセオ。けれども、学生時代も今も、
決して二人の間は一線を超えることはない。神名にとってハセオは、唯一無二の男ともだち。
永遠に失いたくない存在なのでした。
昔から男女間の友情は存在するのか否か、という議論は存在しますね。子供の頃はともかく、
中学生以降、男友だちという存在がいたことがな自分にとっては、正直ピンと来ないテーマ
ではあるのですが。いや、もちろん、仕事上の同僚とかはいましたよ。特に、前の職場の
同期は男女隔て無く非常に仲が良かったので、男友達がいたといえなくもない気もするの
ですが。でも、仕事辞めてからも付き合いが続いたとかは全然ないし、今は連絡先すら
わからなくなっています(ほぼ全員)。それに、悩みを打ち明けたとかそういう経験もないし。
だから、神名とハセオの関係にはいまいち共感出来なかったですね。神名にとってハセオは、
すごく都合のいい存在だと思う。自分が苦しい時には側にいて慰めて欲しい、でも必要ない
時は距離を取って会わなくてもいい便利な友だち。気分屋の神名みたいな人間、私だったら
絶対友だちにはなりたくないなぁ。
そもそも、同棲している男性がいるのに、医師と火遊びってのが全く理解できないです。
倫理がどうとか言っても仕方ない人間がいることはわかっているけど、それでも、全く
罪悪感を覚えない、というのもちょっと人間としてどうなのか、と思ってしまいました。
相手も自分にそれほど求めていないから、みたいな都合のいいような解釈してましたけど、
ちゃんと相手の意志も確認してないのに、なんて勝手な言い草なんだろう、と呆れました。
浮気相手の医師の下衆っぽさにも辟易しましたけどね。あくまでも火遊び相手と割りきって
いる関係ならば、それでいいと思うのだけれど。
ハセオはハセオで、なんだかよくわからない男。ちょっと、雰囲気が『私の男』の淳悟
に似ているかな、と思いました(あそこまで退廃的ではないのですが)。女にだらしがない
のに、神名にだけは誠実に対応する。男女の関係がないからそうなのだろうけど、本心は
どうなのかなーとちょっと気になりました。神名を女として見てないのは間違いないのだろう
けど・・・。
終盤、二人の間に微妙な緊張感が芽生えるところがあるので、最後どうなるのかと思ったの
ですが・・・なんか、予想通りな結末すぎてちょっとガッカリ。ま、お互いにとってお互いは
非常に都合のいい存在なんでしょうね。そういう存在がいるってのも心強いのかも。
ただ、個人的には男ともだちなんて欲しいと思ったことがないので、神名とハセオの
関係よりは、神名と美穂の女同士の関係の方が羨ましかったかな。自分の汚い部分もさらけ
出して、何でも腹蔵なく話せる友だちがいるっていうのはね。
まぁ、面白かったのですが、共感出来る作品かと問われると、全く共感出来ない作品、と
いうしかないでしょうね。直木賞候補になったので読まれる方も多いと思うのですが、世間の
評価は分かれそうだなぁ。私は、『魚神』のような独特の世界観の方が好きだなぁ。こういう
作品なら、千早さんじゃなくても、書く人いくらでもいると思うもの。直木賞狙いだったの
かしら・・・。


悠木シュン「スマドロ」(双葉社
新聞広告でかなり大々的に宣伝していて気になったので予約してみました。
うーん、うーん・・・・び、微妙・・・。
ケータイ小説のように読みやすいというか、薄いというか、ほんとに正味二時間で
読み終えました。
連作短篇形式で、一作ごとに主人公が変わるのですが、後の作品とはかならず人間関係で
繋がっているところがあります。最後まで読むと全体の人間関係がはっきりする、という形。
一章ごとに明らかになった人物相関図が挟まれているので、人間関係は把握しやすいのですが、
全体の相関図がわかってくると、誰と誰が繋がっていて、それぞれどういう縁故があるのかとか
複雑になってきて、最後ちょっと混乱しました(最後ちょっとだけ読みなおした^^;)。
最後全部が繋がってすっきり・・・を狙っているのはわかるのですが、はっきりいって、
ここまで偶然が重なるのはやりすぎだと感じてしまいました。繋がりすぎ。小説の為の、作者が
作ったご都合主義のようにしか思えなかった。
ノローグ形式の文章なので読みやすいから、暇つぶしにはいいかもしれないけど。
また、人物造形が浅いものだから、誰一人として共感出来る人物がいない。イケメン男性二人組
が来たからって家にあげて、関係持っちゃう主婦がそんなにいるのか?しかも泥棒までされて。
顔ばっちり見られている筈なのに、心を掴まれたから捕まらないとか・・・あり得ない^^;
普通詐欺で訴えられてるでしょ・・・。
一話目の主人公の場合はまだ、彼女の立場を考えれば納得出来ないこともないのだけれど。
ちなみに、タイトルの『スマドロ』『スマート泥棒』の略。スマートに泥棒するからスマドロ。
何じゃそりゃ。外見がイケメンだからって、犯罪者は犯罪者だと思うんですがね。
スマドロ二人組の関係が最後に明かされるところだけは意外性があって面白かったですけどね。
こんな怨恨が隠されていたとはね。因果応報ってやつでしょうか。
あと、主人公たちの設定年齢が30代前半の割には、過去の学生時代の描写が古臭すぎて、ちょっと
時代設定があってないような感じがしました。少なくとも、30代後半じゃないと合わないような。
でも、現代パートでは今の時事ネタふんだんに盛り込まれているから、現代自体の時代設定が
ズレている訳ではないし。なーんか、ちぐはぐな印象を受けてしまいました。
目新しさはあるのでしょうが、今後に期待が出来るかと言うと・・・うーむ。
繋がり過ぎてかえって不自然、というのは、初期の湊作品でも感じたことがあったなぁ。
これを否定的に取るか、好意的に取るかは、読む人次第、なのでしょうね。


「時の罠」(文春文庫)
四人の人気作家による、『時』をテーマにしたアンソロジー
寄稿作家がとにかく豪華。全員好きな作家さんだったので、新聞広告を見て即行予約しました。
寄稿作家は以下。辻村深月万城目学湊かなえ米澤穂信。このメンツを見たら、読まずには
いられませんよね!?
テーマ括りのアンソロジーはもともと好きなので、尚更楽しみでした。

収録順に感想を。

辻村深月『タイムカプセルの八年』
息子の夢を壊したくない一心で、教師の怠慢で埋められずにうっちゃられたタイムカプセルを、
父親が探しだして埋めようと頑張る話。
息子が小さかった時の父親のエピソードは酷いものでしたが、息子の夢の為に頑張る姿は
好ましく映りました。タイムカプセルをきちんと埋めない教師にはただただ腹が立ちましたね。
そんないい加減な先生がいるなんて・・・(怒)。父親会の付き合いが、その後も続いて行く、
というところが良かったです。

万城目学『トシ&シュン』
縁結びの神様が、学問・芸能の神様と一緒に仕事をすることになり、あるカップルの将来を
手助けしようとする話。ううむ、ストーリーを説明するのが難しい。ちょっと不思議な
万城目さんの世界そのもので、とても楽しく読みました。ラストのオチもいいですね。
語り手の神様がなんともお茶目で可愛らしい。続編が読んでみたくなりました。

米澤穂信『下津山縁起』
最初、読んでて何が何だかさっぱりわかりませんでした。一番戸惑いながら読んでた作品。
終盤までは全く面白いと思えなかったのですが・・・。
しかし、最後の最後で仰天の結末。そ、そんなバカなーーー^^;;よくもまぁ、こういう
設定を考えつくものだ、と呆れ半分、感心半分。これが、前代未聞の殺人事件なのは間違い
ないでしょうね(苦笑)。

湊かなえ『長井優介へ』
タイムカプセルで辻村さんと被ってしまったのがちょっと痛かった。でも、作品的には好き。
ちょっとした行き違いが重なって、大事な友だちを信用出来ずに失ってしまった主人公。
でも、その誤解が解けないままでなくてよかったです。最後は爽やかな気分で読み終えられました。

好きな作家ばかりということで、どの作品も楽しめました。さすがにみなさんお上手ですね。
直球の辻村さん湊さん、変化球の万城目さん米澤さん。なんだか、女性作家と男性作家で、
作品の傾向が真っ二つに分かれたところが面白い。現実的な作品(女性)と、ファンタジックな
作品(男性)。『時』というテーマを与えられた時、女性の方が、現実主義ってことなのかなぁ。
どちらも、それぞれに味わいがあってよかったですけどね。



三冊分書いたので、長くなっちゃってすいませんです^^;;
では、4日程不在にしますが(この不定期ブログにとっては何てことないですね^^;)、
みなさま、ごきげんよう