ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

西澤保彦/「下戸は勘定に入れません」/中央公論新社刊

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西澤保彦さんの「下戸は勘定に入れません」。

大学で教鞭をとる古徳先生はバツイチ・独身の50歳。人生に疲れ、酔って死ねれば本望とウイスキー片手
に夜道を歩き始めたが、偶然、旧友・早稲本と出会ってしまう。いまや堂々たる実業家のこの男は、かつて
古徳の恋人を奪って結婚したのだった。気まずさに逃げようとする古徳だが、早稲本の誘いを断り切れず、
豪邸のホームバーで杯を傾けることに。やがて、酔った2人は28年前の晩へとタイムスリップしてしまう。
条件が揃うと、酒の相手を道連れに時間をさかのぼってしまう古徳先生。はたして失った恋の秘密を解き
明かすことができるのか?前代未聞のタイムスリップ本格ミステリ!(紹介文抜粋)


西澤さん最新刊。この間腕貫探偵の新作を読んだばかりなのですが、もう新刊が出たのですね。
そして、巻末のあとがきを読んでびっくりしたのですが、この本が西澤さんの61冊目の著作
なのだとか。ひ、ひえぇ。もう61冊も本出していたのか!!氏のデビュー作である『解体諸因』
からのファンなので、その大部分は読んでいる筈ですが・・・(少なくても50冊以上は間違いなく
読んでいるハズ)時代の流れを感じるなぁ・・・。

今回の作品は、初期のSFミステリに雰囲気は近いかな。ある限定された条件下に置かれると、
なぜか過去にタイムスリップしてしまう特殊能力を持つ主人公のお話です。ちょっと特殊な
条件が必要なので、正直こんな限定された条件が度重なるのはいくら何でもご都合主義的
過ぎだろ、とツッコミたくなりました。まぁ、お酒がその条件のうちの一つになっている
辺りは、非常に西澤さんらしい設定だと思いましたが。お酒を飲んで酩酊しながら登場人物たちが
推理する、という設定が氏の作品にはたくさんありますからね。西澤さんって、ほんとにお酒が
お好きなんだろうなーと思いますね(でも、確か大病を患われた筈だから、飲酒も制限されて
いるのでは、と心配になったりもするのですが)。

作中には四話収録されていて、連作短篇形式になっています。時系列も少しづつ繋がっている
ので、最初に出て来た謎が一話進むごとに少しづつ解き明かされて行く形になっていて、
長編小説としても読めます。
ただ、特殊な状況下でのタイムスリップを扱っている為、その都度状況把握するのが大変でした。
過去と現在を行ったり来たり、過去の人物の記憶がタイムスリップした人物に移植されたり。
終盤は何が何やらでした^^;最後は無理矢理収束された感がなきにしもあらず。
しかも50のくたびれたおっさんになぜ若い美女が突然なびく?母親が好きだった人間だからって、
初対面で会っていきなり好きになるって環境がどうにも解せなかったです。主人公は、西澤さん
ご本人の願望の現れなんですかねぇ(苦笑)。
あと、主人公が自殺願望を抱えている理由も最後までわからず、なんとも消化不良。一話目で意味深に
自殺を仄めかしているから、それ相応の理由があるのかといろいろ勘繰って読み進めていたのに、
最後は昔(学生時代)から自殺願望を持っていた、みたいな曖昧な理由で終結されていて、かなり
拍子抜けしました。しかも、学生時代の自殺願望の理由なんか、失恋だし(それも、本人は大して
意識しておらず、周りが早合点していただけ、という)。
ミステリとしての整合性という点では、ちょっと腑に落ちない部分が多かったかな。
ただ、特殊な状況下でのタイムスリップという設定自体は面白かったです。
お得意のレズ描写(笑)もほとんど出て来なかったからほっとしました(若干の仄めかしはありましたが^^;)。
でも、SFミステリという、西澤作品の原点のような作品が読めたのは嬉しかったな。SF苦手だけど、
西澤さんのSFミステリは面白くて好きだからね。また『七回死んだ男』のような傑作SFミステリを
書いて欲しいなぁ。

久々に単独記事だったのに、もう書くことがないや^^;内容薄い記事ですみません^^;;
タイトルはコニー・ウィリスという方の犬は勘定に入れません あるいは消えたヴィクトリア朝
花瓶の謎』という作品からのもじりだそうです。当然ながら読んでません・・・。
有名な作品?(タイトルは聞いたことがあるような)面白いのかな(海外ミステリに疎くって
すみません^^;;)。