ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

宮部みゆき/「荒神」/朝日新聞出版刊

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宮部みゆきさんの「荒神」。

時は元禄、東北の山間の仁谷村が一夜にして壊滅状態となる。隣り合う二藩の因縁、奇異な風土病を巡る
騒動…不穏さをはらむこの土地に“怪物”は現れた。仁谷擁する香山藩では病みついた小姓・直弥や少年・
蓑吉らが、香山と反目する永津野藩では専横な藩主側近の弾正や心優しきその妹・朱音らが山での凶事に
巻き込まれていく。恐るべき怪物の正体とは?交錯する北の人々はそれぞれの力を結集し、“災い”に
立ち向かう!(紹介文抜粋)




若干記事がネタバレ気味です。未読の方はご注意下さい。









宮部さん新刊。基本的に時代物苦手なのだけど、内容知らずに予約したので、つい借りて
しまいました^^;
案の定、結構苦戦しました。時間かかった~~^^;読んでも読んでも終わらなくって、
何度も気が遠くなりかけてしまった。いや、普通の人はすんなり読めるのだと思うのですよ。
読書メーターのレビュー読んでたら、ほとんどが絶賛でしたから。
でも、どうも、私は時代物の人物関係とか時代背景とかの説明がすんなり頭に入って来ない
人間で。とくに、前半は苦戦したなぁ。物語が動いてくる後半はまだスピードアップ出来たの
だけど。
登場人物も多いから、誰が誰だか途中でわかんなくなっちゃったり。どっちが香山藩で、どっちが
長津野藩の人物かも混乱したし。
大好きな宮部作品でも、やっぱりジャンルが苦手だと読みにくいものなんだなぁ、と痛感。
やっぱり、私は、宮部さんの時代物とファンタジーは鬼門らしい・・・(この作品も若干
ファンタジー混じりなんで・・・)。

とはいえ、内容が面白くなかったって訳じゃ、ないんですよ、全くね。村を襲うバケモノの
気持ち悪さに辟易しつつ、先がどうなるのかハラハラさせられたし。愛着の湧いた登場人物だって
何人もいましたしね。
でも、バケモノの正体には正直、かなりガッカリさせられたな。ゲーム好きの宮部さんらしい設定
だな、とは思ったけど。化け物の設定だけが、ちょっと作品の中で浮いてる感じがしちゃって。
ゲームやアニメの世界みたいに現実感がないというか。そこがちょっと、私には不自然に
感じたんですよね。いや、そういう世界観だと割りきってしまえば良いのかもしれませんけども。

恐ろしい化け物に翻弄される人々の人間ドラマとして読めば、面白く読めるとは思います。
個人的には、蓑吉が蓑虫にされるシーンがすごくツボだった(笑)。緊迫した状況の筈なのに、
なんだか妙にとぼけている感じが面白かったです。蓑吉と馬のハナの関係も好きでしたね。

曽谷弾正の言動には本当に嫌悪しか覚えなかったです。自分の妻や娘を道具としか思っていない
所に、本当に腹がたちました。妹の朱音があれほどの人格者なのに、なぜ双子でこうも性格が
変わってしまうのか・・・。根に持つ性格の人間って、ほんと怒らせると怖いのね。
終盤の化け物対決でのシーン、曽谷弾正に関してはざまぁみろ、と思いましたが、朱音に
関しては、ただただ悲しかったです。彼女にしてみれば、本望だったのかもしれませんが。
彼女は何ひとつ悪くないのに・・・運命の残酷さに遣る瀬無い気持ちになりました。

でも、物語の中で一番哀れだったのは、絵師の菊池圓秀じゃないでしょうか。彼が最後に描いた
最高傑作ってどんな絵だったのでしょうか。化け物自体の絵なのか、それとも化け物の最期の姿を
描いた絵なのか・・・。ちょっととぼけた彼のキャラ、途中までは善人なのか悪人なのか
わからず好感持てずにいたのだけど、中盤で誤解が解けてからは好ましく感じていただけに、
あの結末はショックでした。あれほどの怪物との死闘を目撃したのだから、仕方ないのかも
しれませんが・・・。

作品は、朝日新聞誌上にて連載されたものを加筆修正したものだそうです。大分内容も変わっている
ようで、連載時にはあったエピソードが削られていたりもするらしい。そういうの知ると、
そちらバージョンの作品も読んでみたくなるのだけどね。しかし、新聞でこの作品を細切れに
読んでたら、何が何やらになる気がするな・・・^^;;

ゴジラとかの怪獣パニック映画なんかがお好きな人は楽しく読める作品かも(?)。
ただ、結構エグい描写もあるので、グロ系が苦手な方にはちょっと注意が必要かもしれません。