ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

下村敦史「告白の余白」/大崎梢「本バスめぐりん」

どうもこんばんはー。今日は節分ですね。みなさま、豆まきしましたか~?
うちは特に豆まきもせず、恵方巻きも食べす。実家にいた頃は、親が豆買って
来てくれてたから、ちょこっと庭に向けて豆まきくらいはしてましたけどね~。
この年になると、年の数(正確には、満年齢+1らしいが)豆を食べるのも
ちょっとしんどいしね・・・(しーん)。相方は恵方巻き嫌いっていうし、
節分には特に関心のない我が家なのでした(苦笑)。でも、邪気は払いたいので、
心の中で鬼は外って唱えておこうっと。


読了本は二冊です。


下村敦史「告白の余白」(幻冬舎
デビューからなんとなく追いかけている下村さんの最新作。今回は山岳ミステリ
ではなく、舞台は京都。
高知の実家で両親と農業を営む北嶋英二。突然、継ぐ筈だった農業を捨て、
四年前に家を出て行った双子の兄・英一が帰って来る。英一は、実家の農地の
法廷相続分を生前贈与して欲しいと言う。勝手な言い分に腹を立てる両親
だったが、英二は兄の取り分ならば仕方がないと進言し、両親も承知する。
しかし、その夜、遺書を残し兄は自殺した。遺書には、ある女性が2月末までに
実家を訪れたら、生前贈与分の土地を譲渡して欲しいとの旨が書かれていた。
英二は、兄の死の真相を探る為、その女性がいるであろう京都へ行く決意をする――。
ううむ。京都の人間(特に女性)が読んだら、怒りそうな内容ではありました^^;
京都の女性って、みんなこんなに裏表があるんでしょうか。そんな訳ないですよねぇ。
ヒロインの京子という女性の言動がなんとも掴みどころがなくて、裏表がありそうで、
全く好感が持てなかったです。にっこり笑って突き放す、みたいな。実際、その
通りの性格だった訳なのですが・・・。彼女の母親の言動にも辟易したし。
伝統ある和菓子屋の女将とお嬢さんってことで、いろんなものを背負って
生きてきたのだから、こういう性格になるのも仕方がないのかもしれませんが・・・。
本音と建前の世界っていうか。怖~~~っと思いました。
終盤の畳み掛けるような真相解明部分は読み応えあったのですが、いかんせん、
それまでの京都探訪部分が長い。ちょっと中だるみした感じは否めませんでした。
もう少し、テンポ良く書けたのではないかなぁ・・・。途中、京都の観光案内書か
ってくらい、観光描写が続くし。その辺り、もっと端折っても良かったと思う。
京都の魅力も伝えたかったのかもしれないけど・・・こういう描写はさりげなく
入っているのが良いのであって、詳細を語る必要はないと思うのですが。京都は
大好きな街だけど、ちょっとしつこくて途中うんざりしてしまった。
あと、気になったのは、兄の遺書にあった2月末を遥かに過ぎても、だらだらと
京都に居続ける主人公のだらしなさ。真相がわからないからといって、そこから三ヶ月も
のうのうといるなよ・・・とツッコミたくなりました。実家の農家だって、人手がなくて
大変だってわかっているのに。その間の滞在費だって相当なものだと思うし。兄の死の
真相を探るまで、とにかく時間かかりすぎ。京子と一緒にいたかったのもわかるけどさ。
最初に京子と英二が会った時、英二の手を見れば別人だってわかりそうなのにな、と
腑に落ちない気持ちでいたのだけど、最後まで読んで納得。さすが京女?
ただ、京子が英二たち家族の前に姿を現さなかった理由は最後までよく
わからなかったな。どういう気持ちが働いたのか。彼女なら、家の為に
何食わぬ顔で権利を主張しそうな気がするけどね・・・。そういう主張を
した結末の方が、よりラストで彼女の怖さが引き立ったのでは。
京都女の腹の探り合いにひたすら背筋が寒くなりました。京都の女性は
怒らせちゃいかんというのがよーくわかりました(苦笑)。くわばらくわばら。


大崎梢「本バスめぐりん」(東京創元社
バスで巡る移動図書館を取り上げた大崎さんの最新作です。やっぱり、大崎さんは
本や出版関係のお話が一番楽しいなー。
今回もとっても楽しめました。
仕事をリタイアしてから60半ばを過ぎて暇を持て余していた照岡久志は、
同窓会で再会した友人の賢一の紹介で、種川市の移動図書館バスの運転手の
仕事に就くことに。相棒は20代の若い司書・梅園菜緒子。市内16箇所を、
火曜から金曜までの四日、二週間かけて回る。利用者には様々な人がやって来る。
年の差40歳の凸凹コンビが、本を巡って様々な出来事に立ち向かう、ハートフル
ミステリー。
今度は移動図書館か~、と、大崎さんの引き出しの多さに感心。本にまつわるお話も、
書こうと思えばいくらでも書けるものですねぇ。
普通の図書館とは違う、移動図書館ならではのお話に興味津々でした。
わが町にも移動図書館はあったような気がするけど、違う市の話だったかなぁ。
実物を見たことがないので、ちょっと定かではないのですが。
私が今住んでいるところは家から3~4分のところに図書館があるのでとても
便利なのですけれど、もし近くになかったら本当に困るな、と思います。
そういう時に、毎週移動図書館が近くに来てくれたら、それはそれは有り難い
だろうな、と思う。だから、テルさんやウメちゃんが働く移動図書館めぐりんの
利用者たちが、めぐりんが来るのを心待ちにする気持ちがよくわかりました。
本が好きでも、近くに本屋や図書館などがない環境の人にはとても嬉しい制度
だと思う。
ただ、二週間ごとにせいぜい1~2時間しか利用時間がないのはちょっと
不便だと思うけど^^;中学生の杏奈ちゃんのお話でも出て来たけど、
借りて二週間後のおなじ時間に来れない人もいるでしょうからねぇ。市内の
どこの図書館に返してもいいとはいえ、図書館が近くにないから移動図書館
利用するのでしょうし。代わりに返してくれる人が周りにいる人ばかりでは
ないでしょうしね。なかなかその辺は、難しい問題だと思いますね。
そういう意味では、杏奈ちゃんの場合は恵まれているなぁと思いました。
ちょっと、周りの人が世話焼き過ぎる気はしましたけど。施しが嫌だと思う人も
いると思うからね。ただ、めぐりんの利用者がみんないい人なのはよくわかりました。
今回出て来た利用者たちはみんな、基本的にお人好しでいい人ばかりでしたね。
ただ、そういう人ばかりではないのが現実じゃないのかとは思うけれど。
最終話は、テルさんに対するクレームの話なので、少し人の悪意が入って
いますが・・・ただ、真相自体はちょっと拍子抜けするものだったしね。
クレームをつけた人物もそんなに悪意の人って訳ではなかったのでほっとしましたが。
移動図書館だからなのか、テルさんやウメちゃんと利用者たちとの間の距離感が
近いのが良かったです。私が通ってる図書館の司書(じゃない単なるパート
さんがほとんどだとは思いますが)さんには、彼らのように気軽に相談に
乗ってくれそうな人なんかいないもんなぁ。機会的に仕事をこなしているような
人がほとんどで。本の扱い方もすごく雑で、たまにイラっとする時もあるくらい。
まぁ、お世話になっているので、文句言える立場じゃないですけどね^^;
三話目では、ウメちゃんが気になる男性、野庭さんという人材派遣業社で働く
男性がめぐりんの利用者として出て来るのですが、結局そのお話の終わりでは
二人の仲が進展する気配もなく。その後二話分全く彼の話が出て来ないので、
どうなったのかと気をもんでいたら、最終話でその後のフォローがありました。
まぁ、結局進展らしい進展はないのですが・・・でも、希望は持てそうな感じ。
ウメちゃん、本に関しては熱い女性ですが、恋愛に関しては全く奥手のようで、
ちょっともどかしかったです。もうちょっと積極的になればよいのに~。
でも、おっちょこちょいだけど明るくて前向きなウメちゃんのキャラはとても
好感が持てました。真面目で優しいテルさんとは良いコンビですね。二人の
やり取りがとても楽しかったです。
最終話の市民祭りでの様子も楽しそうで良かったです。ウメちゃんの
はりきりっぷりが微笑ましかった。こうやって、少しづつでも市民たちに
移動図書館の存在を知ってもらって、利用者が増えるといいな、と思いました。
あと、テルさんの奥さんもいいキャラでしたね。なんだかんだで、良い夫婦
だなーと思いました。
大崎さんの本関係の作品は、やっぱり本好きにとってはツボに来ますね。
好きな小説のタイトルもちらほら出て来て嬉しかった。
面白かったです。