ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

円居挽「クローバーリーフをもう一杯 今宵、謎解きバー「三号館」へ/大崎梢「誰にも探せない」

みなさま、こんばんは。桜も大分散ってしまいましたね。職場のすぐ前にそこそこ大木の
桜があるので(一本だけ)、この時期は窓からお花見が出来るというありがたい職場環境
なのですが、いかんせん、花びらの掃除が大変で。朝出勤したらすぐに掃き掃除を
しなきゃいけないのですが、風があったりすると、掃いても掃いても地獄に陥って、
えらい目に遭います。
今の時期は風も強いですからねぇ・・・。おうちに桜の木がある人ならこの気持ち
わかってもらえるのでは。散り際も綺麗なんですけどね。
 

読了本は今回も二冊です。


円居挽「クローバーリーフをもう一杯 今宵、謎解きバー「三号館」へ」(角川書店
ずっと読んでみたかった円居さんに初挑戦。ルヴォワールシリーズが有名だとは思うのですが、
なぜかこの方、全く図書館に本が入らない。毎年ミステリランキングで必ずランクインされているので、
ずっと気になっていたのですが、そんなこんなでなかなか手に取る機会に恵まれませんでした。
先日、予約本が落ち着いていた時、思い立って行ってみた中央図書館で本書を発見、即確保と
相成った訳なのでした。新刊情報で出た時見落としてたんだなぁ。開架にあって良かったよ。
さて、前置きが長くなりましたが、本書。京都大学のお散歩サークル『賀茂川乱歩』に所属する
大学生が主人公の青春ミステリ連作集。
京大のお散歩サークルってところがなんともゆるい感じですが(笑)、雰囲気はまずまず
私の好みでした。京都ならではの不思議な世界観があって、雰囲気はちょっぴりモリミー風。
特に、主人公の想い人・青河さんのキャラは、モリミーの『夜は短し~』の黒髪の乙女のようだと
思いました。
主人公が謎を抱えると、大学構内のどこかに忽然と現れるバー『三号館』の設定は、鮎川哲也氏の
バー三番館シリーズからなのかな?と思ったり。三番館シリーズは別にファンタジー要素は
全くない正統派の本格ミステリーですが^^;
こちらで出て来る三号館の設定は、最後を読むまではかなりファンタジックなイメージで
読んでいたのですが、ラストの話で一応その存在の謎にもきちんとした種明かしがあったので、
すっきりしました。バーのマダム・蒼馬美希さんの正体もわかったし。
ただ、各作品の謎解き部分は、ちょっと謎自体がしょぼいというか、苦しい感じのものが
多かったかな。ラスト一編は大掛かりで、謎解き部分もなかなか良く出来ていたけれど(でも、
トリック自体は金田一少年風でしたが^^;)。
蒼馬さんのカクテルを飲むと、頭が冴えて謎を解明出来る、という設定自体は
面白かったです。私はお酒が飲めないけど、大学時代に、構内にこんな不思議なバーが
あったら、行ってみたいと思ったでしょうね(ノンアルコールカクテルを作ってもらったりとか)。
主人公トーチカ(遠近)と、彼の想い人青河さんとの恋の行方がどうなるのか、という部分も
読みどころの一つ。前半の作品ではその恋愛(片想い)部分にかなり重点を置いているのに、後半の
作品ではそれよりも三号館自体の謎の方に重きを置いていて、恋愛パートがないがしろ状態に
なってしまっているところが残念でした。せめて最後の一作で、もうちょっと恋の方に何らかの
進展が欲しかった。まぁ、青河さんのような女性が相手だと、そうそう恋愛も発展しないので
しょうが・・・。
最後、三号館に火を点けた犯人に関しては、怒りしか湧いて来なかったです。身勝手過ぎる。
そんな悪意のあるキャラだとは思っていなかっただけに、ちょっとショックが大きかったです。
最後は、三号館がああいう状態になってしまったし、蒼馬さんの正体も判明しちゃったし、
続きはないということなのでしょうか。トーチカと青河さんの恋の行方が気になるので、
また続きを書いて頂きたいなぁ。
読書メーターのレビューを読んでいたら、ラスト一編の中に、ルヴォワールシリーズのキャラクターが
友情(?w)出演しているとの情報が。どの人のことなんでしょうか。天一坊さんのことかな。
そちらのシリーズもぜひ読んでみたいなぁ。図書館になぜ入らないのだ・・・。


大崎梢「誰にも探せない」(幻冬舎
大崎さんの最新刊。数年ぶりに、幼なじみの伯人に再会した大学生の晶良。伯人は、かつて、
埋蔵金が眠る幻の村を夢中になって探した仲間同士だったが、ある時期を境にケンカ別れしてそれっきり
になっていた。突然晶良の前に現れた伯人は、再びあの村を探しに行こうという。突然の申し出に
戸惑う晶良に、一緒に行かないなら、あの時晶良の祖母から手にいれた地図だけでも見せて欲しいという。
伯人の本当の目的とは何なのか――。

埋蔵金探しという、ちょっと夢のある題材ですが、実際は殺人事件が起きたり、主人公たちが
物騒な男たちに追いかけ回されたりと、サスペンス色の強い作品です。
幼い頃にケンカ別れした友達が突然目の前に現れて、また一緒に埋蔵金を探しに行こうと誘う。
怪しいことこの上ないですよねぇ(苦笑)。私が晶良の立場だったら、絶対一緒に行かないと
思うな。何か裏がありそうだもの。事実、晶良も伯人も散々な目に遭う訳なのですが。
ハラハラドキドキの展開ではあるのですが、どうも肝心なところで緊迫感に欠けるせいか、
いまいち入り込めなかったというのが正直なところ。読みやすいのでページはぐいぐい
進むのですが・・・。特に、終盤、幻の村を探して山に入り、怪しい男たちに追いかけられる
シーンは、一番緊迫感があってしかるべき筈なのに、男たちの山登り経験のなさ故に、
さほどの盛り上がりもなく終結。もうちょっと、最後派手な展開があっても良かったかなーと
思いました。
伯人と晶良のわだかまりが解けて良かったですけどね。晶良の友人の吉井は、いい奴なのか
そうじゃないのかよくわからないまま読んでいたのだけど、最後でいい仕事しましたね。
逆に三咲の強かさには唖然。人間、欲が絡むと人格が変わるというけれど・・・いやはや。
女ってコワイ・・。伯人がひたすら可哀想だなぁと思いました^^;最後は因果応報の結末
だったので溜飲が下がりましたけどね。
カノコ先輩の天然なキャラは可愛らしくて好きでした。晶良と上手く行ったりしたらいいのになーと
思いましたね。
埋蔵金探し自体は、私もやってみたい。ワクワクしますよね~。山登りキツそうだけど^^;
晶良たちは、いつか幻の六川村を発見出来るのでしょうか。仲間も増えたし、大人になって
体力も備わって来たから、今度は見つけられそうな気がしますね。