ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

米澤穂信「米澤穂信と古典部」/井上真偽「探偵が早すぎる 下」

どうもみなさま、新年あけましておめでとうございます。
って、もう年明けて4日ですけど・・・ご挨拶が遅くなって申し訳ございません。
三が日は珍しくシフト制の相方が三日ともお休みでして、実家行ったり初詣行ったり初売り
行ったりと、いろいろお出かけしておりました(義実家の方は、あちらの都合で
来週以降に行く予定)。
当然のごとく本を読む時間はほとんどなく・・・ま、これは毎年のことなんで(苦笑)。
ちなみに、初詣で引いたおみくじは中吉でした。なんか、微妙なことばっか書いてあったなぁ・・・。

 

読了本は昨年末に読んだ二冊を上げておきます。一応今日読み終えたのも一冊あるのだけど、
それは次回持ち越し。


米澤穂信米澤穂信古典部」(角川書店
タイトルからわかる通り、古典部シリーズのムック本。シリーズの歩みやら、
有名ミステリー作家との対談やら、新作の書き下ろし短編やら、薄い本の割に盛りだくさん
な内容で、面白かったです。シリーズ最初の方の内容はさっぱり記憶の彼方に飛んで
っちゃってるんで、これ読んで読み返したくなりました。
ただ、最初の二冊くらいは私、このシリーズ結構酷評してるんですけどね^^;
も、もちろん、今は大好きなシリーズですからね!←ここ大事!(笑)
嬉しかったのは、米澤さんと対談している作家四人、全部が大好きな作家さんばかり
だったこと。北村薫さん、恩田陸さん、綾辻行人さん、大崎梢さん・・・。特に、
恩田さんと綾辻さんの対談が読めたのは嬉しかったですね。この二人と米澤さんとの
ミステリ対談はもっと読んでいたかったです。
あと、米澤穂信に30の質問のページも面白かった。特に作家篇。道尾さんの
質問がぶっ飛んでて笑えました。かなり無茶な質問ばっかりで、それに答える米澤さんの
方も、かなり適当な答えになってるところがウケました(笑)。一句詠めとか心理テストとか、
完全に遊んでるし(笑)。仲いいんだなーと嬉しくなりました。確か、随分前に雑誌で辻村さんも
入れた三人で対談してたんですよね。同年代の作家みたいな感じで。そこでも、仲良さそう
だったっけ。その辻村さんの、単なるいちファンと化してる質問も微笑ましかったです。
書き下ろし短編の『虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人』は、奉太郎の読書感想文
にただただ唖然。こんな解釈も出来るのかー!と思いました。なるほどー。疑問に
思ったことさえなかったので、目からウロコの思いでしたね。あと、三年の時の
『猿蟹合戦を読んで』のあの仕掛けに関しては、同じようなことを昔、本楽大学の課題の
記事でやったなぁ、と感慨深いものがありました。こんなニクイことを中学三年で
やっちゃうんだから、奉太郎ってやっぱりタダモノではないですね。本人は黒歴史みたいに
思ってるけど(笑)。しかし、当時このメッセージに気づいてくれた人なんているのかな?
多分、誰一人気づいていないような・・・って、気づかれてない方が奉太郎にとっては
いいのか(笑)。
古典部四人の本棚の写真も興味深かったですね。それぞれ読書傾向が違ってて。
摩耶花が漫画だけってのが何ともらしいというか。私の実家の本棚も漫画中心だけど
(あとは文庫とノベルスがほとんど)。作者も楽しんで考えてるのがわかって、
面白い趣向だなーと思いました。
今まで作中に登場した用語の細かい解説なんかもついていて、この本片手に本編を
読み返したくなること請け合い。ファンには嬉しい一冊じゃないでしょうか。


井上真偽「探偵が早すぎる 下」(講談社タイガ
去年最後に読んだ本。年末ランキングを上げた後で読み終えたので、去年のランキング
対象に入れられなかったのが非情に残念。もうちょっと早く読み終えていたら、
ミステリランキングは間違いなく変わっていたと思います。さすがに、上巻だけじゃ
対象にならないからなぁ。
今までになかったタイプのミステリなのは間違いない。この作家さんは、たくさんの
トリックを一作に詰め込むのがお好きなのかな?ひとつひとつもなかなか大掛かりな
トリックなのに、それを惜しげもなく次から次へと詰め込んで来る。『その可能性は
すでに考えた』のシリーズも似たようなところがありますね。よくもまぁ、こんなに
いろんなトリックが考えつくものだ、とそこは本当に素直に感心しちゃいますね。
まぁ、『その可能性~』の方は設定に受け入れ難いところがあって、そんなに高い評価を
しなかったのだけれど・・・。
こちらは、莫大な父親の遺産を一人で受け継いだ可愛らしい女子高生相手に、悪魔のような
親戚たちが次から次へと殺人トリックを仕掛けて来るお話なんですが、そのトリックを
探偵がことごとく先回りして潰して行くところが読みどころ。当の女子高生は自分が
殺人トリックを仕掛けられていることなどつゆともしらないまま物語が進んで行く。
ある意味勧善懲悪な展開で、探偵がトリックを仕掛ける悪者たちをことごとくぶっ潰して行く
過程には、爽快感すら覚えました。相手がサイコパスみたいなやつばっかなんで(笑)。
特に、最後に登場したあの天尼はすごかったですね。いろんな意味で。彼女が仕掛けた
トリックもトンデモなかったですし。血も涙もないとはこのことでは・・・(絶句)。
でも、本書で一番驚かされたのは、ラストで明かされるある人物の正体。いや、何かあるな、
とは思っていたんですけどね。ここまでは想像してなかったんで。ビックリ。それが
わかった後で、あの申し出だったんで、かなりショックだったんですけど・・・一華、
グッジョブ!と思いました。しかし、謎が多い人だなぁ。まだまだ、知らない面がたくさん
ありそうだ。ところどころにおちゃめな一面も垣間見えるし。ぜひとも続編を書いて
頂きたいけれど、そうなると探偵役はどうなるんだ?っていう根本的な問題が・・・。
いろいろ問題はありそうですけど、一華や橋田にまた会いたいので、続編お願いしますっ。
しかし、一華はいい友達を持ちましたね。あんな莫大な遺産を受け継いだだけに、
何か下心とかあったり裏があったりするのかも?と途中若干疑ったりもしたのだけど、
未夏も律音も本当にいい友達だったのでほっとしました。このままの関係が続いて
行って欲しいですね。
本格ミステリとしても読みどころが多いですし、キャラ読み小説としても十分キャラが
確立されているので、とても楽しめました。何度も言うけど、続編希望っ!