ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

若竹七海「御子柴くんと遠距離バディ」/阿部智里「玉依姫」

こんばんは。今年はほんとに異常なくらい毎日寒いですね。福井のニュースには目が点に・・・。
北陸の方の雪もすごいみたいで、金沢の友人が心配だったりもしますが・・・。
ほんとに、春が待ち遠しいです。


読了本は二冊です。


若竹七海「御子柴くんと遠距離バディ」(中公文庫)
シリーズ第二弾。前作では長野県警から東京に出向させられた御子柴くんが、上司から
長野に帰る度に美味しい東京みやげを買って帰らされるお話だったんですが、今回は
一話目の事件でえらい目に遭わされた御子柴くん、諸事情により東京から長野に戻らされ、
長野での活躍がメイン。ただ、東京でコンビを組んでいた竹花刑事の東京での活躍も同時に
追って行く形なので、東京と長野、両方同じくらい舞台として登場します(話によっては
東京の方が多いくらい)。御子柴くんが長野にいるので、信州のお菓子がちょこちょこ登場
してましたね。東京にいる一話目で、私の大好きな地元スイーツ、武蔵野日誌が登場したのが
めっちゃ嬉しかった。ほんとに美味しいんですよ、武蔵野日誌!ちっちゃバームクーヘン
みたいな生地の中にクリームが入ってて。青木屋はどらやき(くろどら)もめっちゃ美味しい
ですけどね!あと、ちょびっとだけだけど、葉村晶の名前が出て来たのが嬉しかったです
(名刺が出て来ただけだけど。スリの被害者、なんで名刺持ってたんだろう)。
しかし、あとがきで若竹さんが自らおっしゃってますけど、若竹さんって自分のキャラを
酷い目に遭わせるのがよっぽどお好きなようですね。先程述べたように、一話目でいきなり、
御子柴くん、ある事件の捜査過程で瀕死の重症を負ってしまいます。っていうか、あの
一話目のラストを読んだら、これって、最悪の結末なのでは?と想像したひとも多いの
ではないだろうか。続きがある前提で書かれたのだろうとは思うけれど。心臓止まるかと
思いました。
二話目がその後のお話だとわかった時点ですごくほっとしたのですけれど(時系列が
最初よくわからなかったんで)。
二話目以降は毎回長野と東京でそれぞれ事件が起きて、それが最後に繋がって行く形
なので、ちょっとからくりが複雑でついて行けないこともありました。登場人物も
結構多かったりするし。じっくり読むと、良く出来ていると思うのですが・・・(私の
理解能力の問題だと思われ・・・^^;)。
ただまぁ、毎回毎回、長野と東京の事件が繋がるのは、正直ちょっと都合良すぎな
印象もありましたね。御子柴くんと竹花刑事、両方を出したいのはわかるんですけどね。
とはいえ、最終話の『遠距離バディ』はやっぱり良く出来ていると思いました。
冒頭の小林さんにはすっかり騙されてしまいましたしね。あの穏やかな小林さんが
なぜ!?とショックでした・・・違ってほっとしました^^;
しかし、御子柴くんの代わりに竹花刑事の相棒になったクソ刑事の細澤が、まさか
最後にああいう形で再登場して来るとは・・・。途中とんでもない理不尽な理由で
出社拒否して出て来なくなって、何なんだこいつは、と腹立たしい気持ちでいたの
だけれど・・・。さすが若竹さん、細かいところまで伏線が張り巡らされていますね。
次作では、御子柴くんがまた東京に戻れそうで何より。竹花刑事も、あの使えない相棒に
辟易していたところでしょうから、御子柴くんとまた仕事が出来るのは何より嬉しいはず。
遠距離ではなく普通の近距離(?)バディとなった二人の活躍が楽しみです。


阿部智里「玉依姫」(文藝春秋
八咫烏シリーズ第五弾。冒頭からいきなり現代のお話で面食らわされました。まぁ、噂
ではちらっと知っていたのだけれど。まさか、ほんとに前作とは全く違った流れの
お話が始まるとは思いませんで。戸惑いつつ読み進める感じでした。
若宮も雪哉も出て来ないので、何かあんまり読むテンションが上がらなかったの
ですけど・・・(苦笑)。
しかも、いたいけな女子高生が祖母の生まれ故郷の村に行って、村人たちに陥れられて、
山神の生贄にされるという、なんとも理不尽なお話ですし。親戚や村人たちの志帆に
対する醜悪な態度には、嫌悪感しか覚えなかったです。
ただ、主人公の志帆が山神の母となる決意をして、山神にいろんなことを教えたり、
一緒に料理を作ったりする過程は読んでいて楽しかったです。少しづつ山神が志帆に
心を開いて行くのが嬉しかったし、最初は気味悪い容姿だったのが、志帆と暮らして
行くうちに美しく成長して行くところも良かったですし。
ただ、せっかく志帆に会いに来てくれた祖母に対する彼女のそっけない態度には
がっかりしましたが。阿部さんの描く女の子キャラって、どうも、どこかで好感持てない
部分を持っている子が多い。志帆は根っからのお人好しだという設定の筈なんです
けどねぇ。確かに、山神に対してはお人好しなのかもしれないですけど、ほんとの
お人好しだったら育ててくれた祖母に対してあんな態度は取れないんじゃないかな。
もちろん、山内に入って今までの志帆とは違ってしまった部分もあるのでしょうが、
ああいう性格の本質の部分はそう違っているとは思えないので。
一応、八咫烏と人間と大猿の関係性がなんとなくわかるお話になっているとは
思うんですが、正直、私にはよくわからないままでした。実は、読んでる時は奈月彦
が若宮ってことすらすっかり忘れてまして。若宮も雪哉も出て来なくてつまんないなー
とか思ってました(アホ^^;)。でも、なんか奈月彦と今まで出て来た若宮の性格が
違うように思えて、同一人物だと思わなかったです^^;読む前に、ちゃんと人物相関図
を確認してから読めばよかったなぁ。あと、大天狗の谷村って、前の作品でも登場して
ましたっけ?谷村のキャラは今回一番好感持てたかも。最初胡散臭い人間だとしか
思わなかったけど(まさか大天狗とは思わず)。
っていうか、時系列もよくわからない。今までのお話と、この現代の話って、そのまんま
時系列が繋がっていると思って良いのかな?その辺り、今回の説明では全然よくわからな
かった。ますほの薄が出て来るので、多分そういうことだとは思うんだけど。どこから
どこまでが繋がっているお話なのか、さっぱりわからなかったです。
最後にちょっとした反転があるのは今回も変わらず。志帆はこれから山神と一緒に
生きて行くのかなぁ。猿たちがどうなったかもよくわからないし。
あと、気になったのは、山神の本名って結局何だったんでしょう?それが書かれて
いると思われる祭りの手引書は結局山神の怒りによって燃えてしまっただろうから、
永遠にわからないまま??何か、今回はその辺りの伏線回収のツメがちょっと甘い感じは
しました。それとも、その辺りの謎も次回ではっきりするのかな?次回が最終巻かと思って
たんですが、一部完結ってだけだそうですね。このシリーズ、一体どこまで広がって
行くのだろうか・・・。とりあえず、最終巻が回って来るのを楽しみに待つことに
しておきます(相当待ちそうな感じですが^^;)。