ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

道尾秀介「風神の手」/「謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー」

どうもどうも、みなさまこんばんは。
なんだかお久しぶりの記事になってしまった。というのも、オリンピック始まって、
ぜんっぜん本が読めなかったからです・・・書く記事がないので上げられなかったという^^;
でも、男子フィギュアが終わって、自分の中では一段落って感じかなー。女子も楽しみでは
あるのだけれど、さすがにメダル争いは厳しそうな感じだし・・・んん、失礼か。
でも、金銀はどう考えてもロシアの二人組が持って行くでしょうからねぇ・・・あの二人は、
ちと次元が違いますよね。日本のお二人、頑張って銅メダル争いに食い込んで欲しいなぁ。
コストナー、オズモンド辺りの出来次第では、十分チャンスはあると思うんで。頑張れ。
んで、昨日は当然ながら一日興奮しっぱなしでした。金曜のショートは休みだったから家で
観られたのですが、土曜のフリーは仕事だったんで、予め職場の人に『頼むから、羽生君の
時間だけはテレビを観させてくれ』とお願いしてありました。私の鬼気迫るお願いに
恐れをなしたのか(笑)、昨日は仕事を調整して長めに昼休みがもらえて、しっかり生で
観戦できました。もーう、滑り終わるまで、生きた心地がしなかった・・・あんなに疲れる
応援は、ソチの浅田真央ちゃん以来だったな。みなさんご存知のような結果で、本当に、
本当に、感動しました。こんなドラマがあっていいのか、と愕然としました。どんだけ
伝説作るんだよ・・・(涙)。昌磨くんの立て直しにも感動したなぁ。日本中が願って
やまなかった日本人の金銀ワンツーフィニッシュ。実現してくれて、本当に幸せな瞬間に
立ち会えて、心に残るオリンピックになりました。感謝しかないですね。
あとは、やっぱりハーフパイプ平野歩夢君かな。前回のオリンピックの時から注目
していて、すっごく楽しみにしてました。ただ、予選は生放送の時間に観戦出来たのですが、
決勝は仕事で、職場でちょこちょこ仕事の合間にスマホでチェック。生で観たかったなぁ。
4回転☓4回転、シビレたー。
まだまだ競技は残っているので、全部の選手に実力を出し切って欲しいです。


前置き長くてすみません~。語りたいことがありすぎて、止まらない(笑)。
本題行きますね。オリンピック観戦の合間に、なんとか二冊読みました。


道尾秀介「風神の手」(朝日新聞出版)
我らがミッチー最新刊。三つの物語とエピローグからなる連作中編形式のミステリーです。
主人公はそれぞれ違いますが、共通して出て来るのが、遺影専門の写真館、『鏡影館』。
一章目は、『鏡影館』に写真を撮りに来た余命僅かの母に付き添う娘が主人公。
二章目は、『鏡影館』のオーナーの幼馴染の男が主人公。
三章目は、一章目に出て来た母親が高校生の時に好きになった男の息子が主人公。

 

一作ごとにそれぞれドラマがあるのですが、少しづつ繋がっていて、最後にすべての
伏線が繋がるところは、さすがの一言。一作ごとのミステリ要素はちょっと甘いかな?
と思いながら読んでいたのですが、最後まで読んで、こういう風に繋がるのかーと
驚かされました。初期の頃の派手などんでん返しみたいなものはないのですが、
人間心理に深く切り込んだ、直木賞作家らしい深みのある作品になっていると
思います。
そして、今回もやっぱり秀逸なのは、闇と光の対比が鮮やかな情景描写。毎回
道尾さんの作品には、そういう要素が必ず含まれているのだけれど、今回は、
暗闇の中で行われる鮎の火振り漁の情景。闇の中で浮かび上がる炎の光が、とても
美しく印象に残りました。もちろん、その美しい情景の裏で暗い犯罪が行われていたりも
するのですけれど。
そしてもう一つが、暗闇の川に光るウミホタルの情景。ウミホタルが川に現れた
経緯を考えると、綺麗とばかりも言えないのだけれど、情景だけを思い浮かべると、
なんとも幻想的で美しいシーンだと思いました。
一話では高校生の仄かで淡い恋心、二話目では小学生の生き生きとした友情が
描かれ、三話目ではばらばらに思えていた二つの話が繋がって行きます。登場人物の
人間関係も複雑に絡み合って行くので、ちょっと整理しないと最後ついて行かれない
こともあるかも・・・(私もそのひとり^^;)。
もう一つ印象的に登場する小道具は、万華鏡。万華鏡を使った写真の撮り方は、正直
実物を観ないとイメージしづらかったけど、面白い写真が撮れるんだろうなーと思いました。
ただ、二章目に出て来たくらげパチンコは、読んでいてあまり気分が良くなかった。
『月と蟹』に出て来たヤドカリを火であぶるシーンを思い出しました。子供ならではの
無邪気な残酷さを演出したいのはわかるのだけど・・・道尾さんって、こういうシーン
書くの好きですよねぇ。でも、お話としては、二章目のまめとでっかちの友情物語が
一番好きだったな。でっかちのキャラ好き。だから、あの出来事があった以降に二人が
あまり一緒にいなくなったというのが悲しかった。もちろん、その後も友情関係は
細くは続くのだけれど。でも、子供時代ってそういうものなのかもしれない。そういう
意味では、すごくリアルだなーと思いました。
全体的なテーマは、バタフライエフェクトだと思います。小さなきっかけで、将来が
大きく変わって行く。風の吹き始め。どんなことにも云えるテーマだと思う。あの時
ああしなかったら、今の自分はいない。それでも、その選択を選んだ自分ごと受け入れて、
これからも生きていく。
私もそれはよく思う。小さなきっかけで、自分の運命が変わる。今は、今の自分を選んだ
自分を褒めてあげたいし、誇りに思う。違う自分を選んだら、今の自分はいない。もっと
幸せだったかもしれないけど、多分、その逆の可能性のほうがずっと大きい。
あの時の自分に感謝しています。
緻密な人間ドラマと美しい情景描写が光る、道尾さんの力作だと思います。



「謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー
白バージョンを読んでから大分時間が空きましたが、ようやく回って来ました。
新本格30周年というだけあって、なかなか個性的な作品が揃ったのではないで
しょうか。高田さんは相変わらずだったけど(笑)。

 

一作づつ、軽く感想を。

 

はやみねかおる『思い出のショウシツ』
メタブックという設定は面白いですね。なんか、近い将来実現しそう。主人公の
友達の響子ちゃんが、あの響子ちゃんだと気づいたのは、最後の最後でした(なぜ
この名前でピンとこなかったのか、自分・・・)。でも、この作品でいっちばん
嬉しかったのは、ラストの一文に出て来る、響子ちゃんの名字。うわーん(涙)。

 

恩田陸『麦の海に浮かぶ檻』
ここに来て、理瀬シリーズが読めるとは・・・!!!(感涙)ただ、メインキャラは
全然出て来ませんけど^^;っていうか、理瀬以外のキャラなんかまったくもう覚えて
ないんですけどね(おい)。タマラの体質、高田崇史さんのQEDだか毒草師にこういう
設定出て来たよなーと思いました。
何でもいいけど、早く本編の続き書いてくださーい!!

 

高田崇史QED~ortus~―鬼神の社―』
奈々ちゃん大学生の時のお話。タタルさんともまだ全然親しくない時の出来事。
大学生の時からタタルさんは全然変わってませんね(苦笑)。神社にお参りに
行って、神様のことを思いやって願い事をしたことなんてなかったので、奈々ちゃん
同様、はっとさせられました。とはいえ、次にお参りするときにはすっかり忘れて
ると思いますけどね(苦笑)。

 

綾崎隼『時の館のエトワール』
森下が話したタイムリープに関しては、ほぼ予想通りの真相ではあったんですが、それが
明かされた後のラスト一行にはどーんとやられました。黒っ。まぁ、私がひかりの立場
でも同じこと思うと思うけど。こんな小細工しないでも・・・。まぁ、まともに
ぶつかって行ったら玉砕するだけだとわかってたからでしょうけども。草薙と
火宮はシリーズキャラみたいですね。本編を読んでみたくなりました。

 

白井智之『首無館の殺人』
これはもう、生理的にダメだった。平山(夢明)さん系だとは思うんだけど、
平山さんの生理的嫌悪感とは全然違う。○ロ描写がしつこくて。そこが推理の
キモなんだろうけど、映像的に美しくない。活字だから匂いがなくてよかった。
ミステリ的な展開としては悪くないけど、とにかく生理的に無理。

 

井上真偽『囚人館の惨劇』
今までの井上さん色が全く出て来ない、割合普通のミステリを書いて来たなー
って感じ。○○トリックも書くんですねぇ。悪くないんだけど、井上さんって
考えると、もっとキャラが強くて個性的な作品を期待していたので、ちょっと
物足りなかったような。あの現実に起きた大学生のバス事故を思い出してしまって、
ちょっと胸に迫るものがありました。サイコパスの話かと思いきや・・・最後はせつないです。