ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

麻耶雄嵩「友達以上探偵未満」/加藤実秋「メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス」

こんばんはー。日本各地、続々と梅雨に入り始めましたね。関東も今週後半辺りには
入るのかな?
憂鬱な季節ですが、この季節ならではの楽しみは、あちらこちらで咲き誇っている
紫陽花。最近は種類もいろいろで、とんがりコーンみたいな形のとかもありますよねー。
色もオーソドックスな紫や青や赤だけじゃなくて、白っぽいのがあったり。
雨が似合う紫陽花を見ていると、雨の日もちょっぴり気分が晴れたりして。
目の保養になりますね。


今日も二冊ご紹介。


麻耶雄嵩「友達以上探偵未満」(角川書店
麻耶さん新刊。最近は新刊情報で新作を見かけるとつい予約するようになって
しまいました。苦手な作家だったはずなのに、いつの間にか虜に・・・!?(笑)。
今回は、アニメ風というか、ラノベっぽい設定だなーと思いました。探偵になりたい
女子高生二人が、様々な事件を解決する連作中編集。いつも読み終えて後味の悪さに
どよーんとして終わるパターンの多い麻耶作品ですが、今回は珍しくそういうのが
なく、最後まで爽やかな青春ミステリでしたね。
舞台となるのは、三重県伊賀市。忍者の末裔と言われる家系に育った生粋の伊賀っ子
で俳句を愛する伊賀ももと、二年前に東京の上野から伊賀に引っ越して来たクール
ビューティの上野あおは、どちらも探偵になりたい高校一年生。中学二年の時に出会った
ふたりは、お互いに探偵志望であることを知り、意気投合、親友同士になった。それ
以来、ふたりはいくつかの事件を解決し、お互いに探偵への道を突き進んでいるように
思えていた。しかし、実はあおの本心は別のところにあり――。
三つの中編が入っています。
一話目は、二人が所属する放送部(ミステリ研がない為、妥協で入った部)から取材に
行ってこいと言われて参加した「伊賀の里ミステリーツアー」で殺人事件に巻き込まれる
お話。この話は、もともとテレビの推理番組で放映された推理ドラマの為に書き下ろした
ものだそうです。なんか、設定が金田一少年みたいな感じ。高校生が探偵役だしね。
テレビの推理ドラマだった名残でか、問題編と解決編に分かれていて、犯人当て小説の
体裁になってます。ただ、私は推理することはさっさと放棄して、そそくさと次のページに
進みましたけどね(笑)。だって、なんだか複雑でわかりにくかったんだもの・・・。
結構登場人物も多かったしね^^;
ももとあお、一応二人が探偵役という設定なんですが、ももは直感には優れているけど
肝心の推理はイマイチ、あおは閃きはないけど、論理力と推理力は抜群と、役割が
分かれています。どちらかというとあおの方が探偵っぽいけれど(ラスト一作でその
印象がさらに強くなったし)、蓋を開けてみると、どちらが欠けても事件は解決しない
ような役割分担になっているのかな、と思いました。
二話目は、美術部の生徒がうたた寝状態で聞いた不穏な殺害計画が現実となってしまい、
ももとあおの桃青コンビが事件解決に乗り出すお話。うたた寝状態で聞いたお話の
からくりにはなるほど~!と思わされました。しかし、動機が高校生とは思えない
ものでしたねぇ。金田一少年ではありがちだけど(笑)。
三話目は、ももとあおが中学二年の時に文芸部の夏合宿で起きた殺人事件のお話。
ももとあおの出会いも描かれています。ももとあお、それぞれの視点でも語られて
いて、とくにあおの章ではももに対する心情に驚かされましたね。あおのこういう
感情をももが知ったら、結構ショックなんじゃないかなーとは思いましたけど。ももは
単純に心から探偵になりたいと願っているし、なれると思い込んでるところがあるから
ね・・・。客観的に物事を見る、という点においては、あおの方が一歩リードなのかなー
という感じはしますが。でも、ももはももで良いところがあるし。天真爛漫なところに、
あおも惹かれているのでしょうしね。
ちょっと引っかかったのは、被害者が髪を切られている、という部分。17本くらいの
髪の毛を切られたからって、普通気がつくかなぁ??そんなに不自然だとわかるもの?
一房とか、ごっそり切られていたのだったらわかるとは思うけど・・・。この髪の毛を
切ったハサミが推理のキモになる訳だけれど、その前提部分に首を傾げてしまったので、
ちょっと腑に落ちない気持ちになりましたね。
麻耶さんにしては、全体的に気軽に読めるライトなミステリって感じでした。麻耶さん色
を期待するとちょっとがっかりするかもしれませんが、私は楽しく読めました。
ももを溺愛する兄で刑事の空のキャラも良かったです。あおとは今後恋愛関係に発展
したりするのかな?ただ、ももの前では空のことを気にしている素振りをするあおですが、
実際にあおが執着しているのはももだけのような気もしますが・・・。その感情をももに
気づかせないために、わざと兄の方に感心があるような雰囲気を出しているのかなぁ、と。
真相はわからないですけどね。
正反対のももとあお、二人のキャラが良かったですね。二人の友情と探偵になるまでの
成長を見守って行きたいと思います(ネット上で本書に関する麻耶さんと高里椎奈さんの
対談を読んだところ、続編の想定があるとのことでしたので)。

 

加藤実秋「メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス」(角川文庫)
久々加藤さん。なんとなく、タイトル見て面白そうだったので借りてみました。
警察官の牧野ひよりは、ようやく念願だった刑事課に配属されたが、女だからか、
毎日雑用ばかり言い渡されていた。そんな中、不可解な焼死事件が起きる。事件はネットで
生中継されていた。ひよりは、事件の捜査の為、上司からある場所へ行き、夏目
惣一郎という人物から話を聞いてこいと住所が書かれたメモを渡された。その場所へ
行ってみると、そこは退職した刑事たちばかりが集まるシェアハウスだった――。
なんか、有川浩さんの『三匹のおっさん』とこの間やってたドラマ『バイ・プレーヤーズ』を
足して二で割ったようなお話だなーと思いました(大杉漣さんの遺作として話題に
なりました。私は結局1、2回くらいしか観れなかったのですが^^;)。おっさんが
活躍するお話で、一話ごとに一人のおっさんがフィーチャーされて、ひよりと事件を
解決して行く連作形式。それぞれに理由ありの内情があり、元警察官なだけに、特殊技能を
持っていたりして、かっこいいおじさんばかり。おじさん世代もまだまだ活躍できる!と
証明してくれるようなスカッとするお話で、楽しかったです。それぞれのおじさんとひより
との関係も良かったです。夏目は、最初は過去の事件のせいで頑なな性格だったけれど、
ひよりやおっさんたちと警察の捜査に関わって行くうちに、本来の優秀な刑事の
側面が見えて来て、好感持てました。もともと、生真面目な性格で、シェアハウス
での雑務もきっちりこなしますしね。退職するきっかけとなった事件の被害者の
お墓に毎月お参りする義理堅さもありますし。それが被害者遺族の神経を逆なでして
しまうことにもなるのですけれど・・・。被害者の妻に罵倒される夏目さんの姿が
胸に痛かったです。それだけに、最終話で彼の心残りの事件がきっちり解決された
のが嬉しかったです。最終話のタイトルから、シェアハウスから夏目さんがいなくなって
しまうのかな?と心配したのですが、ラストを読んでほっとしました。こういう
終わり方にしたってことは、続編を想定しているのかな?と思えました。ぜひとも、
またかっこいい退職刑事さんたちに再会したいです。退職刑事っていうと、都筑道夫
さんの退職刑事シリーズを思い出してしまうけれど(一作しか読んでないですが^^;)。
退職刑事ばかりを集めたシェアハウスって設定が、今どきって感じがしますよね。
おじさんがおじさんの世話をする為に家事をしている姿が、なんだか微笑ましかった
です。続き読みたいなー。