ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東川篤哉/「はやく名探偵になりたい」/光文社刊

イメージ 1

東川篤哉さんの「はやく名探偵になりたい」。

本屋大賞受賞・東川篤哉 烏賊川市シリーズ!名探偵の条件 ――気力・体力・変人あしらい 
そしていかがわしい依頼が舞い込む町在住であること。はた迷惑な奴らリターン!!(紹介文抜粋)


東川さん最新作は、烏賊川市シリーズ第6弾。まー、今回もゆるかったですわ。でも、この
ゆるさがたまらないんですよね~。今回は短編5作が収められた短編集。短編集って、シリーズ
初かな?一編が短いので長編ほどの読み応えはないですが、一作ごとにしっかり本格要素は
あるので、いつも通り、程良いギャグとミステリがうまい具合に混ざり合っていて、楽しく
読めました。最近、一作ごとに影が薄くなっている気がしていた戸村君も、今回かなり活躍
してまして(お笑い要素でも、鵜飼探偵には及ばないものの、そこそこ貢献)、そういえば、
一作目は彼がメインだったんだよな~ということを思い出せました(笑)。
明美さんが全く名前すら出て来なかったのはちょっと残念でしたが(良く考えると、戸村君
以上に彼女の方が存在感が薄れているような^^;)。鵜飼探偵も、そこそこ面目が潰れない
程度には探偵能力を発揮しているし、まぁ、良かったかな、という感じでした(笑)。
タイトルは、戸村君の心の叫びなんですかねぇ。それとも、鵜飼の方かな。鵜飼は自信家
だから、もともと自分を名探偵だと思い込んでそうな気がするので、やっぱり戸村君の方
が相応しい感じはしますけどね。


以下、各作品の感想。

『藤枝邸の完全なる密室』
史上最高に間抜けな犯人というか。このタイミングで犯行現場にやって来るところがこの
二人らしいです。犯人も、犯行のタイミングと出会った相手が悪かったとしか言い様が
ないですね^^;オチが鵜飼らしくて笑えました。探偵なのに、そこ適当でいいんだね^^;

『時速四十キロの密室』
時速四十キロのトラックの荷台で行われた殺人事件。不可能犯罪の真相はさすがにちょっと
無理があるような気がしましたが^^;実行犯のことを考えると、かなり後味の悪い事件
と言わざるを得ないですね。

『七つのビールケースの問題』
酒屋から七つのビールケースが無くなったのは何故なのか。ビールケースベッドは、昔知り合い
でやってる人がいましたっけ。ミステリとしては一番面白かったのですが、あり得ない度も
かなり高かったです^^;いくら暗い時間だからって、あるものとあるものを使ってあるものを
消すって、かなり無理があるような気がしました^^;

『雀の森の異常な夜』
犯人はわかりやすいですね。大胆な犯行方法には驚きましたけど。戸村と鵜飼が匍匐前進で
崖を這う場面が最高。ほんと、この二人っていいコンビですよねぇ・・・(笑)。

『宝石泥棒と母の悲しみ』
ちょっと毛色の変わった作品でいつもと趣向が変わってて面白かったです。東川さんらしからぬ
可愛らしい作品。ちょっぴり切ないところもあるけれど、ラストはほんわか出来ました。マー君
の正体にはすっかり騙されてしまいました。でも、こういうシチュエーションって、テレビの
情報番組とかで見ますよね。微笑ましい話題としてね。一番短い作品ですが、印象に残る作品
でした。




もうすぐ謎解きはディナーのあとでの2も発売するみたいだし、ドラマもスタートするし、
今一番乗ってる旬な作家なんでしょうね。巷では『謎解き~』が東川さんの代表作だと思われて
るんでしょうけど、私の中では、やっぱり東川さんの面白さの真骨頂は烏賊川市シリーズだと
思ってます。作者のライフワークシリーズとして、末長く続けて頂きたいですね。