ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

若竹七海/「サンタクロースのせいにしよう」/集英社刊

若竹七海さんの日常系連作短編集「サンタクロースのせいにしよう」。

三年半の恋愛に終止符を打ち、住んでいたオンボロアパートにも嫌気がさしていた岡村柊子は、
心境を変えようと、友人の彦坂夏見に提案され夏見の友人・松江銀子と同居を始めることに。
しかし、この同居人がひとくせもふたくせもあるやっかいな人物だった。しかも、彼女が
住んでいる、築25年の一戸建てには、何故か玄関におばあさんの幽霊が・・・。柊子の身に
起こる、日常のトラブルを綴った連作短編集。

本書は若竹さんにしては毒が少なめですが、やはり一話一話の完成度は高いですね。
それぞれのキャラクターがとても良い。銀子さんのキャラははたから見たら、本当に
迷惑以外の何ものでもない訳ですが、そのキャラに振り回される柊子のどたばたが
読んでいて楽しい。楽しいというだけでは済まない話もありますが・・・。
それでも、ちょこちょこ出てくる若竹流の棘がちくちくと突き刺さる。特に「虚構通信」
は、ラスト救われないですね。好きなのは表題の「サンタクロースのせいにしよう」と
「犬の足跡」かな。おばあさんの正体にはびっくり。そして、ラストの一行にくすり。
う~ん、若竹さんらしい。
あちこちで顔を出す「スクランブル」の夏見の登場も嬉しかった。
相変わらず、言いたいことをびしっと言ってくれて、鋭い推理も披露してくれて、
かっこいい女性です。この時は「スクランブル」の十五年後よりも若いわけですよね。
こんな鋭い友達が欲しいです。私はどちらかというと柊子タイプで、ラストの「子どもの
ケンカ」のように、ケンカしてる人がいたら、同じようにおろおろして何も言えないでしょう
から。この作品のラストは意味深ですね。柊子はこの後無事に橋を渡ることが出来たので
しょうか。二人の今後が気になります。まぁ、きっといろんな遠回りをしつつ、夏見の
ちゃちゃが入りつつ、上手くいくのではないかなぁなんて勝手に想像したりしますけど。

若竹さんは大好きな作家さんなのですが、何故か読み逃している作品が多く、今回のこれも
そうでした。雰囲気も装丁もとても私好みなのに、何故手に取らなかったのか、自分でも
不思議で仕方ないのですが。というより、読んだ気になって読み逃した、というのが正直な
所。でも多分初読なんですよね・・・。
そんな作品がまだまだ山積みの若竹作品。今後も楽しませてくれそうです。
(ある意味、読んでない作品があることが嬉しい今日この頃^^)