ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

本多孝好「dele3」(角川文庫)

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シリーズ第三弾。続きが読みたいと切望していたので、さほど待たずに続きが

出たのは嬉しいです。前作の終わりであんな風に別れてしまった二人の関係が

どうなるのか、とても気になっていたので。

遺品整理を兼ねたリサイクルショップに再就職していた祐太郎の元に、圭司の

姉・舞から連絡が来る。圭司は、ロックがかかったパソコンを残して姿を消して

いるという。祐太郎の元に連絡がないかと聞かれるが、あの別れ以来会って

いなかった。舞は、残されたパソコンのパスワードを二回試したが解除出来ず、

チャンスはあと1度きりしかないという。その一回を、祐太郎に試してもらいたい

と言うのだ。圭司の行方を探す為、祐太郎は真剣に考え始めるが、どうにも自信が

もてない。そこで、パソコンに詳しい人物に思い当たり、コンタクトを取ることに。

圭司は一体どこに行ってしまたのか――(「リターン・ジャーニー」)。

二作収録されているうち、一作目は祐太郎と圭司の再会を、二作目は再会した二人が

またdeleの仕事を再開する様子が描かれています。

圭司が姿を消した理由は、前作のラストと繋がっています。しかし、夏目の正体が

あそこまで得体の知れないものだとは。そんな大物って感じは全然してなかったので、

びっくりしました。そんな人物と一緒に仕事をしていた圭司も十分すごいと思いますが

・・・。圭司自身は、夏目と対等に渡り合ってる感じですし。あんな状態にされても、

冷静でいるところはやっぱりかっこいいなぁと思います。最後は車椅子なのに派手な

アクションシーンが出て来るし。車椅子なのに、なんであんなに強いんですか、圭司。

謎だ。最後の、祐太郎とのやり取りが良かったなぁ。祐太郎とまた仕事が出来ることが

きっと嬉しくて仕方がなかったのだろうな。なんだかんだいっても、やっぱりこの二人は最高のコンビですね。今回、再登場のナナミの存在も良かったです。ナナミと祐太郎のやり取りも好きでした。それだけに、deleにナナミが加わるとわかった時は嬉しかったです。

二話目は、そのナナミが活躍するお話。モグラ(仕事の依頼を扱うパソコン)に依頼の

通知が来た。しかし、依頼人を調べてみると、父親のクレジットカードを使った女子中学生だった。未成年の依頼は受けないと決めている圭司は、父親に事情を話して、返金し、依頼を断るという。しかし、祐太郎とナナミは、父親のカードを使ってまで依頼を

してくる彼女の事情を知った方がいいと主張し、二人で彼女のことを調べ始める。誰からも好かれていた彼女の心の闇とは――(「スタンド・アローン」)。

依頼人の女子中学生が自殺した理由には、やるせない気持ちになりました。表面上は

明るくて悩みもなさそうに振る舞いながら、陰では一人で悩みを抱え、闇を増幅して行ったのだと思うと・・・切ないです。ただ、だからといって、それをああいう形で発散させていたというのは許しがたいことだけれど。両親だけは、もっと早くそのことに気づいて彼女を止めるべきだったと思う。救いのない結末になってしまって残念です。

ひとつだけ良かったことは、この依頼を通して、ナナミが一歩踏み出せたことですね。

彼女がdele.LIFEから去ってしまうことは残念だったけれど、彼女のためにはその方が

良いのだと思う。普通に中学に行って、友達が作れるといいな、と思う。また圭司たちのところへも遊びに来ると言っていたし、再登場させて欲しいキャラですね。

余談ですが、当然ながら二人のビジュアルは菅田将暉山田孝之で読みましたw

またドラマも続編やってくれないかなぁ。