ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

辻村深月「ツナグ 想い人の心得」(新潮社)

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映画化もされた『ツナグ』の続編。あちらでは高校生だった歩美くんは、前作から

七年経って、小さなおもちゃ会社で働く社会人になりました。もちろん、祖母から

受け継いだ使者(ツナグ)としての活動も続けています。

ただ、冒頭の一作目では、理由あって親戚の杏奈に使者の仕事を任せていますが。

知らない間に、杏奈に仕事を引き継いでいたのかと思っちゃいました。8歳の

杏奈に関しては、前作に出て来ていたのか全く覚えていないのだけれど(出て

たとしても赤ちゃんだったわけだけど)。歴史ある占い師の家系の後継者として

名指しされている杏奈は、8歳とは思えないほど老成していて、いろんなことを

達観しているようなところがあって、歩美の祖母が乗り移っているんじゃないかと

思ってしまうほどでした。でも、一話目の最後で、小学生らしい姿も見せて

くれたのでほっとしましたね。歩美とはいいコンビですよね。歩美も、杏奈の

ことを一人前の人間として扱っていて、自分の使者としての悩みを打ち明け

たりもしているし。というか、二人の会話は、どちらが年上かわからない

ところがあって、ちょっと面白いし微笑ましい。杏奈は小生意気な性格ではある

けど、中身は普通の子供らしいところもあるし、憎めないキャラですね。

私はすっかり気に入ってしまった。

今回の依頼人は、幼い頃に生き別れた父親に会いたいという男性、亡くなった娘に

会いたいという女性(☓二人)、16歳で亡くなってしまったお嬢様に会いたい

という老齢の料理人の男性など。どれも心に沁みる優しいお話ばかりでした。

歩美が尊敬するおもちゃ職人の突然の死を描いた『一人娘の心得』は、読むのが

辛かったです。もっと歩美におもちゃ創りのノウハウを教えてあげてほしかった。

残された一人娘の奈緒にとっても、あまりにも突然の死で辛かったと思う。

歩美は、彼女に使者のことを打ち明けて、亡くなった父親と会わせようかと考える。

でも、最終的に下した決断は、歩美にとっても奈緒にとっても良かったと思う。

奈緒の、仕事に対する前向きな真っ直ぐさがとても素敵だな、と思いました。

そんなところに歩美は惹かれたんだろうな。二人はとてもお似合いだと思います。

奈緒なら、使者としての歩美のことも受け入れてくれるんじゃないかなぁ。

歩美の告白がどうなったのか、とても気になる。これはシリーズ化されて行く

フラグが立っていると思って良いのかな。人気あるし、そうだといいな。

杏奈の使者としての活躍とかも、もっと読んでみたいしね。続きが出るのを

楽しみに待っていよう。