ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

湊かなえ「ブロードキャスト」/若竹七海「錆びた滑車」

どうもどうも。毎日雨で嫌になっちゃいますねぇ。超巨大台風がまた日本縦断
らしいし。今度こそ関東も直撃しそうな気配・・・やだなー^^;;
もうすぐ秋バラの季節なのに、こんなに毎日天気悪かったら生育不良になりそうで
心配です。それでなくても姉から譲り受けたバラが今年夏バテしちゃって、
葉っぱがほとんど落ちちゃってる状態なのに(T_T)。秋晴れが恋しいよー。


読了本は今回も二冊です。


湊かなえ「ブロードキャスト」(角川書店
湊さん最新作。いやぁ、びっくりした。何にびっくりしたって、湊さんが、こんなに
ド直球の、清々しいまでに爽やかな青春小説を書いて来たことにですよ!!
これ、断言してもいいけど、作家名伏せて読んで、湊さんが書いたって当てられる人、
ほとんどいないと思う。それほど、普段の湊色が皆無。今までは、白系の湊作品でも、
必ずどっかに湊さんらしさが感じられたものですが、今回に限っては、そういう部分が
まったくなかった。こんな爽やかな作品も書けるんだなぁ(←失礼)。これ読んで、あの
『告白』を書いた作者と同一人物だとは誰も思わないと思うよ。同じ学校が舞台でも、
これほど違うとは。一体何があったんだ、湊さん・・・(変な勘ぐり^^;)。
主人公は、高校に入学したばかりの町田圭佑。彼は、中学では陸上部員で、三年の時の
駅伝の県大会で、惜しくも僅かの差で全国大会出場を逃してしまう。けれども、陸上部エースの
親友の勧めもあり、高校は陸上の強豪校を目指すことを決意、猛勉強の末、見事合格した。
これでまた親友と駅伝で再び全国大会を目指せる、と意気揚々としていた矢先、圭佑は高校の
合格発表の帰りに交通事故に遭い、大怪我を負ってしまう。陸上を続けられなくなり、
他にやりたいこともなく、失意のどん底で新学期を迎えた圭佑だったが、同じ中学出身の
宮本正也に声をかけられ、なんとなく、なし崩し的に放送部に入部することになってしまう。
圭佑は、陸上への未練を抱えながらも、放送部の部員たちと活動を続けるうちに、次第に
その面白さに目覚めて行くのだが――。
まず、いろんなタイプの青春小説がある中、放送部に焦点を当てたってところがなかなかに
斬新。そして、放送部にも、ちゃんと全国大会があるっていうのが驚きでした。
全国の高校放送部が大会目指して活動してる訳じゃないだろうけど、そういうのを目的にして、
志高く放送部に入る人もいるんですね。大会も、いろんな部門に分かれていて(朗読部門、
アナウンス部門、ラジオドラマ部門、ドキュメント部門・・・などなど)、観に行っても
面白そうだな、と思いましたね。湊さんは実際大会を観に行かれて、随分細かく取材された
ようですね。
高校の時、放送部の活動なんて全く気にしたことがなかったから、自分の学校の放送部に
どんな生徒がいたかとか全然知らなかった。でも、多分お昼休みとかに声はいつも聴いて
いたんだろうなぁ。
放送部の活動が、こんなに多岐に亘るものだとは知らなかったです。いろんな意味で、
目からウロコの思いがしましたね。
陸上がやれなくなって絶望していた圭佑が、放送部の先輩や同級生たちと大会を目指して
頑張るうちに、少しづつ自分のやりたいことを見つけて行く過程が、丁寧に描かれて
いて、爽やかでした。
ラジオドラマ部門で、各学校のドラマエピソードをあれだけたくさん考えられるのがすごい。
作家さんはやっぱりアイデアがすごいなぁと感心しました。
宮本くんのキャラ良かったですね。圭佑との関係も好きでした。クラスでいじめに遭って
いるオタクな久米さんと二人(圭佑と宮本くん)との関係も素敵だった。特に、圭佑が
久米さんの為にいじめっ子に言い返す場面は痛快だった。圭佑、よく頑張った!と拍手
したくなりました。
月村部長を始めとする三年の先輩たちには、ちょっと頼りなさを感じて、度々イライラ
させられましたけど^^;三年が引退して、白井先輩が部長になったら、大分部の雰囲気も
変わりそうですね。
終盤に出て来た、中学の時の親友、良太に関しての真実の部分だけは、ちょっぴりミステリ
的な仕掛けがありました。強いていえば、そこだけが湊さんっぽい部分だったのかも。
圭佑が最終的に放送部と陸上部どちらを取るのかは、そこまで読めば誰でも予想できる
でしょうね。圭佑が下した決断がとても嬉しかったです。
いつもの湊作品を期待して読むと、ちょっと食い足りなさを感じるかもしれませんが、
これはこれでありかな、と。
最後は晴れやかな気持ちで清々しく読み終えられました。


若竹七海「錆びた滑車」(文春文庫)
葉村シリーズ最新長編。最近コンスタントに続編が出て嬉しいなぁ。前作(『静かな炎天』)
カズレーザーのおかげで話題になったからかな(え、関係ない?^^;)。
今回も、読み応えたっぷりでした。途中、登場人物が多くて人間関係が複雑なので
頭がこんがらがって大変でしたけど、最後まで読むと、ちゃんと伏線が張ってあって
きれいに繋がることがわかり、溜飲が下がりました。
晶さんが前作で住んでいたシェアハウスがいろいろあって取り壊されることになり、
彼女は新しい住居を探さなければならない羽目になってしまう。そこで、紆余曲折
あって、青沼ミツエという老婆の所有する木造アパートに移り住むことに。そこには、
交通事故で怪我を負い、事故前後の記憶を失ったミツエの孫ヒロトも住んでいた。
ヒロトは、晶さんが探偵だと知り、なぜ事故の時自分がその場所にいたのか調べて欲しい
と頼む。ヒロトは、馴染みの薄いスカイランドという遊園地の前のバス停前で父親と一緒に
事故に巻き込まれ、父親を失っていた。父親とそんなに仲が良かった訳でもないのに。
なぜ、そんな場所に父親と一緒にいたのか。晶さんがその調査に乗り出そうとしていた
矢先、青沼家がとんでもない奇禍に遭うことになってしまい――。
目まぐるしくいろんなキャラや要素が出て来るので、ついていくのが大変でしたが、最後まで
読んで良かったと思えました。ヒロトと晶さんのやり取りが好きになりかけていた
ところに、あの出来事があったので、かなりショックを受けましたが。ヒロトに関しては、
かなり読み進めるまでどんでん返しを期待していたのだけれど・・・。
作中に度々登場するスカイランドは、京王よみうりランドがモデルですね。よみうりランド
は昔良く親に連れて行ってもらった場所なので、なんとなく親しみの湧くお話でした。
大人になってからは、併設されているスーパー銭湯に何度が行ってますし。
多摩方面で京王線沿線の街がちょこちょこ出て来るのも嬉しかったですね。
それにしても、毎度のことながら、晶さんは相変わらず満身創痍でした。前作では短編集だった
せいか、それほど酷い目に遭ってなかった覚えがあるけど、今回は長編だからか(?)、
その分、山程理不尽な目に遭ってる。それでも、その理不尽に淡々と向き合う晶さんは
やっぱり素敵だ。しかし、普通ここまでされたら死ぬと思うが・・・どんだけ不死身なの^^;
シェアハウスの同居人、瑠宇さんがシェアハウスに残っていた理由には脱力。そんな理由
だったんかい。晶さんに対するあまりにも無謀な要求にムカっとしたけど、ラストで
彼女にもまさかの結末が。終盤、<MURDER BEAR BOOKSHOP>であの人物と鉢合わせ
した時は、何のコントかと思いましたよ(笑)。あの人が、逃げ回ってた割に、すんなり
受け入れたところに拍子抜けしましたけど・・・(何で逃げてた?^^;)。
ラスト、晶さんを襲った人物には驚かされたなぁ。なんとも、呆れた身勝手な動機で唖然と
しちゃいました。こんなヤツにやられなくてよかったよ、晶さん・・・。
晶さん、しばらくは職場に住むことになりそうですね。お風呂までリフォームしてもらっちゃった
からには、そのまま長く住む羽目になりそうだなぁ(結局費用は自分持ちみたいだが←酷い)。
まぁ、事務所(職場)兼住居ってことで、通勤時間がなくなって身体は楽になるかも?年齢的に、
あちこちにガタが来てるみたいですしね・・・晶さんには、そろそろ、自分の身体を労ることを
覚えて欲しい今日このごろです(笑)。
巻末の<MURDER BEAR~>の特別イベントの料理教室、めっちゃ楽しそう。葬儀会館の
レンタルキッチンってところにずっこけたけど(笑)。参加してみたい~。
解説が戸川さんだったのが地味に嬉しかった。富山店長のモデルだし。
戸川さんが店員やってた<MURDER~>のモデルのミステリ専門書店、改めて、
行けなかったことが悔やまれる・・・くぅ。