ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

藤崎翔「指名手配作家」(双葉社)

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元お笑い芸人で横溝正史ミステリ大賞受賞でデビューされた藤崎さんの
最新長編。
なかなか変わった設定で、この先どうなるんだ!?と終始ハラハラしながら
読みました。ツッコミ所は満載なんだけど、最後はしっかり伏線が回収されてミステリ的にも面白い作品になっていて感心しました。

前半はかなりエロ系やら下の話やらの下ネタが満載で、ちょっと食傷気味になり

ました。特に、賢がトラックの荷台に隠れて逃亡し、農家の小屋で寝泊まりして

いたくだりで、農作物を盗んで食べて飢えを凌ぐシーンがあるのですが、

農家さんが汗水たらして作った作物を盗んだツケが回ったシーンは世にも

おぞましい状態だった。読んでてこっちが気持ち悪くなりました・・・。
内容は、タイトル通りなんですが、冒頭で担当編集者を殺してしまい、指名手配
された作家が、さまざまなハプニングを乗り越えながら逃亡生活を続けて行くお話。
正直、最初はこんな逃亡生活、すぐに警察に見つかって終わりになるんだろう、と
思いながら読んでいたんですが、なぜかのらりくらりとピンチを躱しながら、
十数年も逃げ続けられちゃうんですね、これが。まぁ、見た目が変わったことと、
ある女性と出会ったことが大きかったと思うのですが。それにしても、こんな
派手な生活をしながら、あれほど長く逃げ続けられたっていうのは、幸運以外の
なにものでもないような。主人公の賢が直美のゴーストライターとなって、
小説がヒットし、直美のゴーストライターとなった賢の漫画もヒットして、
二人で大金を手に出来るようになってから、なぜか直美が社会福祉に目覚めて
しまう、というくだりには胡散臭さを感じて首をかしげていたのだけれど、
まさか、それが最後にああいう風に効いてくるとは思わなかったです。
細かい伏線もちゃんと終盤の物語に生かされて来るところは素直に感心しちゃい
ました。下ネタが多いところはちょっと引いてしまうところもあるんですけど
(^^;)、なかなかどうして、しっかり構成されたミステリーを書く方
ですね。
一体賢の正体はいつバレてしまうんだろう、と最後までハラハラしながら

読みました。
子供も出来て、二人目も出来て、二人が成長して・・・それでもバレない
から、もしかして、最後までこのまま幸せなままか?と一瞬思いましたが、
やっぱりさすがにそれはなく。まさか、ああいう形でバレてしまうとは。
そのバレ方も、きちんと順序立てて説明されているので、なるほど、

こういう経緯だったのね、と納得出来ました。発端があのラジオの投稿って

ところも上手いですね。
ひとつひとつの要素がうまく繋がって、最後にまさかの仕掛けも。この作品
自体が、ある人物によって書かれたものだと判明するんですが・・・こう
来たか!って思いました。確かに、伏線はちょこちょこ張ってありましたけど。
本人名義で書いた方が世間的にもインパクトあった気がしますけどね。
最後の最後までよく考えられた作品だと思いました。面白かったです。