ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

歌野晶午「首切り島の一夜」(講談社)

歌野さん最新作。タイトルから本格ミステリ色がぷんぷん漂っていたので、非常に

期待して読みました。孤島の宿で四十年ぶりに行われる同窓会を巡る群像ミステリー。

一章ごとに、そこに集まった七人を一人づつ取り上げて、同じ一夜をどう過ごしたか

が綴られて行くのですが・・・。

 

 

※以下、作品内容に触れています。未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

えーと、えーと、読み終わった率直な感想は・・・

 

 

 

何コレ

 

 

 

 

 

 

です・・・。どうしました、歌野さん??ある意味、斬新すぎるミステリー

とも言えるかもしれないです。

だって、意味深に出て来るそれぞれの人物の行動とか思惑とか、ほぼ全部が一切、

伏線じゃないのですから・・・。えぇー・・・。云ってみれば、去年ミステリーの

話題をかっさらった相沢沙呼さんの『Medium』の煽り文句が『すべてが、伏線』

だったとしたら、この作品はその真逆『すべてが、伏線じゃない』とでもなりそう。

読んでる途中、これ、絶対伏線だよね?って思った部分が、ラストまで読んで

何の意味もなかったとわかった時の脱力ったら。同窓会に参加した人物を一人

づつ掘り下げて行ったのって、一体何だったの?って読み終えてしばし呆然。

読む側としては、ほぼ誰もが冒頭に出て来た久我陽一郎の死体の謎を解き明かす

為のそれぞれの人物の掘り下げだと思って慎重に読む訳じゃないですか。しかも、

途中ちょいちょいほんとに意味深な伏線らしき描写が出て来るんですもん。でも、

ラストで明かされる久我の殺人の真相を知って、そうした各々の推理はすべてが

無に帰する訳です。まぁ、ある意味、盛大に騙されたと云っても過言じゃないです

けども・・・。でも、こんな騙され方はミステリー好きとしては全然歓迎したくは

ないですよ。これは本格ミステリーではない、というのが歌野さんが仕掛けた最大

のトリックだった、という解釈をすれば良いのでしょうか。当然、賛否両論(多分

否の方が圧倒的に多いのではとも推察しますけれど)あることを承知の上で書かれた

のだろうなぁ。ミステリに伏線ありき、って風潮に風穴でも空けたかったのかしらん。

でも、読者としては、伏線が綺麗に回収されるカタストロフが一番ミステリの醍醐味

だと思っている訳でして。なんか、ものすごい肩透かしを食らわされた気分でした。

それぞれの人物の内面描写もイライラさせられるものが多かったしねぇ。まぁ、

読み物としては面白く読んだのだけど・・・肝心の殺人事件の本当の伏線らしき

ものはほとんど書かれていないような?読み落としもあると思うけどさ。最後に

いきなり犯人が判明して、犯行理由も明かされて、目が点だった。一人一人の

長い前フリを読まされて、ようやく最後の章まで来て、ようやっとすべての伏線が

回収される!と意気揚々と読んだのに・・・はぁ?って感じでした・・・。

野尻の部分が一番消化不良だったなぁ。息子の事件って一体何だったんだ。

野尻のバッグに血のついたタオルが入ってたのも、犯人の仕業だったってこと

なんでしょうけど。そこに至る描写も一切なし。最低限の伏線回収くらいして

欲しかったよ。

ミステリ的な仕掛けで唯一騙された、と思えたのは大島の章くらいだったかな。

とはいえ、それも殺人とは全く関係なかったですけどね・・・(しーん)。

まぁ、最初に述べた通り、ある意味斬新なミステリだったと云えなくもない。

ただ、人に薦められるかと言われると・・・ううむ。

読まれるかどうかは自己判断で願いします^^;