ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小松亜由美「誰そ彼の殺人」(幻冬舎)

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有栖川有栖氏、久坂部羊氏、千街晶之氏等、錚々たる方々が絶賛したということで、

読むのを楽しみにしていた作品。現役の解剖技官による法医学ミステリとして

話題性も十分。予約数も多く、結構待たされました。

・・・なのだけれど。ん?んんん?正直に言いましょう、私には、なぜこの作品が

それほど世間で評価が高いのか、全く理解出来なかったです。

まず、現役法医学者が書いているだけあって、専門用語がやたらと出て来て、

読みにくい。漢字が多いし、改行少ないし、説明自体も回りくどい。読むのは

法医学を知らない読者がほとんどだろうから、細かく説明した方がいいと

思ったのかもしれませんが、やりすぎは小説としての面白さを損なうだけ

だと思うんですが。しかもその内容も、遺体の解剖な訳だから、詳細な描写が

生理的にキツいところもありましたし。

まぁ、それは法医学ミステリーだし、百歩譲って目をつぶるとしても、

肝心のミステリー部分があまりにもお粗末。一応ラストの短い短編も入れると

四作入っているのですが、謎解きの醍醐味をほぼ無視した推理展開というか、

犯人すぐわかっちゃうし、その推理も想像を超える驚きってものがほとんど

ない。読者をミスリードさせるとか、そういう書き方をまったく意識して

いないので、謎解きの面白さが全然感じられないんですよ。真相を小出しに

していくって書き方が出来ていないというか。犯人も謎解きの始めに

明らかにされちゃったり。それも、予想通りの犯人だし(苦笑)。

単に、作者の法医学の知識をひけらかしただけの作品にしか思えなかったです。

確かに、変死体の解剖シーンとかはリアルで、知らないこともたくさんあった

ので勉強にはなりましたけど・・・。

あと、探偵役の今宮のキャラも、語り手役の楓のキャラも、いまいち作り

込みが足りないような・・・。会話文も何か不自然な感じがするし。

楓はミステリー小説が大好きでいろんなミステリを読み漁っているって設定

なんですが、一作目の事件で推理作家が四人くらい出て来るのに、誰の作品も

読んでないとか言うのでズッコケました。まぁ、好みの作風から外れた四人

なのかもしれないですけど・・・それにしても、そういう設定にしたんだったら、

一人の作品くらい読んでるって形にしても良かったと思う。それとも、容疑者

だから、敢えてファンじゃない設定にしたのかなぁ。なんか、キャラ設定が

ブレブレって感じがして、それも引っかかったんですよね。

文章やストーリー展開など、もう少し読者を引き込む書き方じゃないと

読者はついて来ないんじゃないかしら・・・。これを、なぜ有栖川さんが

絶賛したのか、本当に理解に苦しむ。

頭でっかちな医者が片手間に小説書いたって印象しか受けなかったなぁ。

とにかく、文章が読みにくいせいか、数ページ読むと眠気が襲って来て

しまい、読むのに異様に時間がかかりました。全部で240ページも

ない本なのに!!これは、私が疲れているせいでこんなに眠くなっちゃう

のかなぁと思っていたのだけど、その次に読んだ水生大海さんの作品は

全く眠くならずにあっという間に読めてしまったので、やっぱり文章や

内容の差だということがわかりました。リーダビリティってやっぱり大事だな。

法医学ものだったら、講談社ノベルス椹野道流さんの法医学教室

シリーズの方がよっぽど読みやすくて面白かったな。あれはミステリー

とは言えないけどさ^^;

記事を書いてみたら、思った以上に黒べるこになってしまった。読み返して

みても、辛辣過ぎて自分でも若干引いてしまった・・・(オイ!)なんか、

すみません・・・^^;;;

期待していただけに、ちょっと残念だったな。二作目以降はもういいかな・・・。