幻冬舎のごたごたで話題になった津原さんの文庫新刊。幻冬舎から文庫で
発売予定だったものが(単行本は幻冬舎で発売されたもよう)、いろいろ
あって立ち消えになったことで、幻冬舎(+百田尚樹さん)と津原さんの
SNS上の争いに発展したという。幻冬舎の社長の言動には、私も多いに
問題ありだとは思いましたが、津原さんご自身のやり方もどうだったの
かなぁ。作家としては、百田さんよりも津原さんの方が個人的に好きなので、
津原さんの肩を持ちたいところではあったのだけれど。ただ、津原さんご自身も、
SNSでは結構問題ありな発言をされたりしているとの情報も入って来て
(私はSNS系は一切やっていないので、よくわからないのですが)。
どっちもどっちなのかなぁ。
まぁ、結果として、早川がこの作品を引き継いで、無事文庫刊行と相成った
ようです。早川書房の担当編集者の『この本が売れなかったら編集者を
辞めます』という文言が、いろいろなことを物語っているような。かなりの
決意を持って引き継がれたのだろうな。もちろん、作品に惚れ込んで、出したい
という思いが強かったからだとは思いますけれども。幻冬舎の社長が当該作家の
過去作品の実売数を暴露しちゃって問題になりましたけど、本書はあの部数よりは
大分売れているみたいなので、編集者を辞める羽目にはならなそうで良かった
です^^;
前置き長くなりました。すみません。
でもって、肝心の本書の中身なんですが。タイトルのヒッキーは、引きこもり
のこと。引きこもりを支援するヒキコモリ支援センターの代表カウンセラー、
竺原丈吉が、担当する引きこもりたちを集めて、あるプロジェクトを立ち上げて
行く話。四人の引きこもりが出て来ますが、それぞれに個性があって、年齢も
性別もバラバラ。そんな彼らがネット上で繋がって、一つのプロジェクトを
作り上げて行く。引きこもりならではの問題も勃発したり、竺原に対する
疑心暗鬼なども湧き上がって来たりと、いろんなハードルが待ち受けるものの、
引きこもりたちは、それぞれに自分が出来る範囲で、外界へと飛び出して行く――。
ストーリーはそんなに複雑じゃないんですが、引きこもりたちとの会話が
どうにも禅問答みたいに思えて来る時があって、なかなか話に入っていけなかった
です。そもそも、最初に竺原が引きこもりたちに説明した『人間創り』とか
『不気味の谷を超える』ってのも、ちょっと意味がよくわかりにくかったし。
もちろん、やりたいことはわかるんですけど。
竺原がなぜこんなことをやりだしたのかとか、彼の正体とか、その他もろもろ、
最後まで読むときちんと説明がされているので、ある程度溜飲は下がったのですが。
でも、どうも会話のテンポとか内容とかが頭に入って来なくって。途中何度も
挫折しかけてしまった。なんとか最後まで意地で読み通しましたけど・・・。
旅行で何日間か続き読むのが中断されてしまったのも良くなかったのかも。
世間的な評価はとても高いので、私個人がこの作品ときちんと向き合えなかったのが
問題なのではないかと。引きこもりたちが自分の出来ることを頑張って、少し
づつ外へと目を向けられるようになって行く様は痛快ですし、竺原が自分の地元
を都市伝説を創ることで盛り上げて行くところも感動的だったのは間違いないの
ですけどね。
その竺原の最後は切なかった。はっきりした場面は出てこないものの、住んで
いた部屋からいなくなったということは、そういうことですよね・・・。
せめて、竺原に招集された引きこもりたちが、どんどん外の世界で活躍して
くれるといいのだけれど。地元の活性化も実現化したし、彼が残した功績は
とても大きいのじゃないかな。
引きこもりが社会問題になっている今、引きこもりの能力を活用していく活路を
見出した本書は、多くの人が読むべき物語と云えるのかもしれません。