家の声が聞こえる青年遠野守人が、川越の古民家『月光荘』で住み込みの
管理人と一階の地図資料館の番人を務めるシリーズ第二弾。
前作では守人の、『家の声が聞こえる』という設定がいまいち作品に生かされて
いないように感じていたのがちょっと残念だったのですが、今回はそこが大分
巧く作品と絡み合っていてよかったように思いました。月光荘が、大分守人に
心を許して来た証拠でもあるということでしょう。月光荘が守人の言動に
いちいち子供のように反応するのが可愛らしかった。
あと、孤独だった守人が、少しづつ人間関係を広げて行って、お正月には月光荘で
みんなで持ち寄って新年会をするくらいまでになっているのがうれしかったです。
初詣もみんなで一緒にいけましたしね。
新たに登場した人物もみんな素敵な人物ばかりで、守人自身が良い性格だから、
優しい人が集まるのかな、と思いました。
同じ川越を舞台にした活版印刷三日月堂シリーズとのリンクも嬉しい。あちらにも
出て来た古書店『浮草』の店主のことはとても悲しかったけれど、あちらでも
気になっていた『雲日記』が無事刊行されたことが嬉しかったです。弓子さんも
すごく頑張ったのだろうな。そのうち、守人が三日月堂を訪れるシーンとかが
出て来るかもしれないな。
ラストの二軒家のお話は、いつも一緒だった二つの家の一つが無くなってしまって、
残された家の悲痛な叫びが切なかった。でも、二軒の家として再建されることに
なったみたいで、ほっとしました。悠くんも嬉しいだろうな。
それにしても、お正月に家の声が聞こえなかった理由にはびっくり。家同士にも
ちゃんと繋がりがあるんですね~。どこで会っているのかな、という疑問は覚え
ましたが。
三作収録されていますが、どれも心に沁みる素敵なお話ばかりでした。川越を
舞台にした本書や三日月堂シリーズを読んでいると、本当に川越という街に行って
みたくなりますね。古き良き時代の建物や物を大事に残している街。とても風情が
あって、歩き甲斐がありそう。機会があったら、のんびり街ブラしてみたいです。
優しく心に残るこのシリーズ、まだまだ続いてほしいですね。