ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

水生大海「最後のページをめくるまで」(双葉社)

f:id:belarbre820:20191021192833j:plain

水木さん新刊。図書館の新着案内でタイトル見て、これは面白そうだぞ、と思って

予約してみました。水生さんの作品は食指が動くのとそうでないのとあるから、

読んだり読まなかったりなんですけども。

これは当たりでしたねー。タイトルでかなりハードル上げてる感はありますが、

しっかりラスト1ページで落として来る手腕はなかなかのもの。しかも、

どれもが気が滅入るようなイヤミス仕様。読んでる最中、イライラムカムカ

しっぱなしでした(苦笑)。でも、先が気になってぐいぐい読まされ、ほぼ

一日で読み切ってしまいました。これの前に読んでた法医学ミステリーが

あまりにも読みにくかったせいか、余計にすいすい進んだ気が(笑)。この

読みやすさ、たまらん!と思いながら読んでました(笑)。

 

では、一作づつ感想を(前作は、一作づつ感想を考える気力も湧かなかった^^;)。

『使い勝手のいい女』

これは、アンソロジーで既読でした。あれ、これ、絶対どっかで読んだこと

あるよなーと思いながらページを進めてました。オチもだいたい覚えてたんで、

ああ、やっぱりそうだったって感じだったのはちょっと残念だったけど。初読

の時はまんまと騙されましたね。

主人公の部屋に無理矢理押しかけて来る、元カレや元カレを奪った元友人の

図々しさには辟易しました。なんで断らないのー!って主人公にもイラっと

しましたし(苦笑)。

主人公がお風呂場に隠していたモノに関しては、完全に初読の時はミスリード

されてましたね~。そういうことか!と膝をたたきたくなりました。

 

『骨になったら』

妻が自殺をした時、私は愛人の部屋にいた――葬式の席で、親族たちは私を

白い目で見ていた。妻が焼かれるまであと数時間。それですべてが終わる――。

棺に横たわる主人公の妻の真実には驚かされました。これも、絶妙なイヤミス

具合に、何度もイラっとさせられました。最後、主人公が待ち望んだ瞬間が

訪れたのもつかの間、案の定な落とし穴が待っていて、まんまと突き落とされ

ました。ま、主人公に関しては、自業自得としか思わなかったですけどね。

計算高い女って怖いわー・・・。

 

『わずかばかりの犠牲』

先輩の原田に唆されて、学費を稼ぐ為に詐欺集団の受け子をしている大学生の諒。

詐欺行為の代償として、公園で鳩に餌をやるのが習慣になっていた。ある日、

諒はその公園で顔見知りになった老人が、詐欺の手口に引っかかりそうになって

いるところに行き合い、助けてしまう。しかし、その行為が自分の首を締める

結果になってしまい――。

これは最後のオチのあまりの黒さにどんより。学費の為と大義名分を振りかざして

詐欺に手を染めた主人公に同情の余地はないけれども。先輩の原田の甘言に

乗せられていなければ、普通の大学生でいられたわけで。人間、悪いことを

しちゃダメっていういい例かもしれません(←!?)。

公園で出会った老人の正体にもびっくりでした。そして、ラスト一行で判明する

タイトルの意味。老人にとっては『わずか』なんですね・・・黒っ。

 

『監督不行き届き』

夫の愛人が突然やって来て、別れろと言う。しかも、信じがたいことに、その女の

名前は亡くなった娘と同じ――。寝耳に水だった愛人騒動だが、両者話し合いの

場で、夫は離婚するつもりはないと愛人に断言した。しかし、その後突然夫が

失踪してしまう――。

夫失踪の真相は予想通りでしたし、その犯人もそうじゃないかなと思った通り

でした。犯人が犯行を思い立ったきっかけの場面も想定内でした。ただ、最後の

展開までは予想出来なかったなぁ。結局、主人公は夫と同じ運命になってしまう

のかな。

 

『復讐は神に任せよ』

たった一人の息子を殺した女に復讐するため、事故物件のマンションに引っ越して

来た。女を見張り、息子を殺した証拠を見つけ出すのだ。しかし、隣に住む老女

によって度々邪魔をされてしまう――。

老女の正体は、てっきり主人公が昔に関わった医療ミス事件の被害者の遺族なのだと

思ってました。すっかり騙されてたなぁ。せっかく老女が主人公を救ってくれたと

思えたのに、あのラスト。自分を棚にあげて、自分の復讐にばかり目が行った

ばかりに、足元を救われる結果になってしまった。やった方は忘れても、

やられた方は、いつまでもやられた恨みを忘れないという典型例ですかね。